呪術師を続ける理由(1)最終版-コピー
「なんで呪術師やっとるか?」
「基本はコレやね、あとは逃げたら後輩に示しが付かへんやん?」
「……真面目に答えた方がエエやつ…?」
「………ちょびっと考えさせてもらうわ」
「…墓まで持ってくつもり…っちゅうには擦った話ではあるんやけど、とりあえず誰にも言わんといてな」
「ウチなぁ、人殺しとんねん」
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ウチは元々非術師の家のコ。
でも霊感とかそういう意識自体はあってな、野良のチンケな奴を祓うのが趣味のクソガキやった。
周りに呪術師なんて一人もおらんし、たまーに悪さしよる変な奴らが呪霊っちゅうもんな事も知らへん。
自慢やけどガキの頃から結構強かったし、大阪言うてもそないな人の多いとこに住んどらんかったから、出てくる呪霊もまぁ木っ端も木っ端。
人助けの為にアリンコ潰す感覚で呪術師やっとった。
今考えると肝が冷えるわ、ふっつうにこれで変な呪霊に引っかかって死んでるガキおるやろ。この頃が人生最大のピンチちゃうん?
で、中学ん時に都会の方からそれなりにゴッツいのが移り住んできてな。
まぁこれがお山の大将のウチにとってはまあまあ強かった。
今までレベル10代のとこで戦ってたら38とかが出てくんねん。流石に物怖じするわ。
中学生になるといくらクソガキでも命を惜しむ。目ぇつけられんように手は出さんといたらこれがアカンかった。
知っての通り強い呪霊っちゅうんは基本的に滅茶苦茶悪い。
普通に人殺すし、ちびっと知恵も回る。
時間が経って力をつけたそいつは、まぁまぁ強いから革命的に強いになった。
んで、世間一般でもそれなりに危険視されたそいつに高専から呪術師が送られんねん。
ウチと呪術界とのファーストコンタクトや。
1年のニイさんやったわ。術師の家系のくせにツラも性格も悪くないんやけど、んまードアホでな。未来の仲間と〜とか言うて未登録の呪術師(中3)(一般出)のガキを普通に作戦に組み込みおるんよ。
ウチの生徒やったらド突き回して半殺しやでそんなん。
そんなこんなで、ウチはそのニイさんと一緒にそいつを祓いに行くんやけどな。
正直アガったわ。産まれて初めて同類に会って、ソイツの背後にデカい組織がある。完璧に主人公のポジションやろ?
ほいで、その呪霊がニイさんの想定よりも強くてダウン。今考えてもコイツ何なんって感じやけど悪く言わんといてぇな。
この後めっちゃ世間様の役に立つんやで。
で、ニイさんは勝手にも俺のことはいいから逃げろ言う。絶対にコイツの真似したらアカンで?
置いてく方は一生引きずるからな。
さて、ここで問題
どないする?ちなみにニイさん見捨てたら逃げ切れる事にします。
せやろなぁ。うん、ウチもそうすべきやと思う。
んで、当時のウチの決断はな、置いてかん訳よ。
ウチ主人公やし、仲間を置いていけへんやろ。隠し玉もあったしな。
ウチ普段全力で術式使わんねん。非術師にも炎は見えるからボヤ騒ぎになるんよ。色は普通らしいけどな。
術式の完全開放、それが隠し玉な。
ちゅうわけでウチは始めての仲間を守る為に術式を完全開放します。
そんでまぁ勝ったんやけどな。
呪霊相手だとありえん強いし、圧勝やね。
戦いは大事じゃないんよ。大事なのは祓った後な。
混ざり合う呪力とか知らんねん。なんやそれ。
振り向いたらニイさんもメラメラ言うとる訳。エースかよ。
ここでまた問題。
ウチはその時どう思ったでしょう?
そう思う?よかったわ、ありがとな。
答えはなぁ「弱かったコイツが悪い」なんよ。意外やろ。
後悔とかより先に来たっちゅうことは、まあウチの本性なんやろな。
いや〜怖いな人間、呪霊よりずっと怖いわ。
さっきまで主人公名乗ってた奴がこれ言うねんで?怖すぎやろ、羅生門か。
ウチは二級呪霊を三級のニイさんが道連れにしたっちゅう事で押し通して、なんでかバレへんかった。残穢の消し方とかまだ知らへんのにな。
たぶん上の人が手ぇ回したんとちゃうかな。子供にやられたとか書きにくいやろ。
んでニイさんの同期と顔合わせとうないから東京校まで逃げて、交流会で「アイツはどんな最期だった?」なんて聞かれんの。
卒業してからニイさんの実家に行っても同じ。だぁれも責めへん、優しいよなぁ。呪術界ってもっと汚いもんやと思っとったわ。
ホンマ、涙ちょちょぎれるで。
そんなんウチが人でなしの化け物みたいやん。
術師の家系やったらまだ分かるわ。そういう風に育てられたみたいなもんやし。化け物にぶつける為の養殖の化け物やろ。
ならウチはなんなん?天然の化け物ってこと?
そないな訳でウチは人間になりたかった。
一人呪術師殺してもうたしな、ウチが並の呪術師の2倍頑張らんと釣り合い取れんやろ?
仲間と弱者を思いやる、優しい呪術師として真面目に頑張った。
おかげで昇級は遅れたけど、まあそれ込みで強くなれんウチが悪いし。
気付いた?
今ウチ、強さのせいにしとんねんで?
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「──────なーんてな!こんなんやったらおもろない?って話や」
「実際問題おるわけないやんこないな天文学的なバカと野生の人でなし!信じられんわ!」