告白

告白


2年間の修行を経て各々が力を身につけた麦わらの一味 その船長であるモンキー・D・ルフィは共に船出をした幼馴染であるウタに呼ばれ一人サウザンドサニー号の展望室へと向かっていた。


「おーいウター!来たぞー」

「ちょっ、ルフィ!今夜中だから静かにしなよ」

「別に平気だろ、あいつらもう寝てるかもしれないしさ。それより話したい事って何だ?」

「はぁ...ま、誰にも聞かれてないから良いけどね。・・・ルフィあんたにはどうしても話さなきゃいけない事があるの。・・・私とシャンクスの事」

「...!シャンクスの!」


"赤髪のシャンクス"

ルフィにとって命の恩人であり海賊になるきっかけを与えた大海賊、そして今目の前にいるウタの父親でもある人物だ。

彼の話を聞かないわけがないと思ったルフィだが一つ気にかかる事があった。

"ウタの目だ"幼い頃から共に過ごし様々な仲間が加わりながら多くの冒険と死線を渡り歩いていたルフィだからこそ分かった、彼女の目には強い覚悟を決めている事、きっとこれから話すことはとても重要な話である事を。


「・・・分かった、お前とシャンクスになんかあったんだな。」

「うん...2年前のあの日、私はくまの能力でエレジアに飛ばされたんだ。」

「えれじあ?・・・あぁ!ウタに歌を教えてたゴードンのおっさんがいるとこか!」

「そう、けど12年前に凶悪な海賊団が襲ってきて赤髪海賊団が応戦したけど結局エレジアは滅んじゃったの」

「思い出した!その事でじいちゃんがシャンクスを悪く言ってたからウタが食ってかかってたな、おれあん時すっげえヒヤヒヤしたんだぞ」

「ごめんごめん...それでね私が数日エレジアに留まっていたある日ある"映像伝電虫"を見つけたの」


そう言うとウタの特徴的な紅白髪は見てわかるレベルで落ち込み彼女の表情にも暗い影を落としていた。


「?その伝電虫がどうしたんだ?」

「・・・伝電虫にはあの日...エレジアが滅んだ夜本当は一体何があったのかを記録されてたの...結果だけ言うとシャンクスは悪くない、赤髪海賊団はエレジアを守る為に戦ってたの」

「!そうか、良かったなウタ!そりゃそうだよな!シャンクスがそんなことするわけ「私なの」・・・は?」

「エレジアを滅ぼした凶悪な海賊団なんて...最初からいなかった」

「私が...エレジアを滅ぼした元凶だったの」


・・・こいつは何を言ってるんだ?ウタが国を滅ぼした?他者を虐げる暴力を嫌うあの心優しいウタがどうして?

しかしウタの表情に嘘を言ってるつもりはない、それは嫌でも分かってしまった。

困惑を隠せないルフィは衝撃的な告白をしたウタに素朴な疑問を投げた


「ウタが...エレジアを滅ぼしたって...冗談だろ?第一その頃のお前ってまだガキじゃねえか!歌を聴いてるやつを寝かせる事しか出来ないお前がどうやって国一つ滅ぼせんだよ!」

「・・・そのウタウタの実の能力が引き金だったの」


そう言うとウタはエレジアの悲劇の真実を語った

エレジアにはウタウタの実の能力者が歌う事で封印が解かれる恐るべき魔王が眠っていた事

そうとは知らずにウタはその魔王"トットムジカ"の楽譜を歌い魔王を解放してしまいエレジアを滅ぼしてしまった事

シャンクスはゴードンと口裏を合わせウタに真実を知られないようにフーシャ村に置いて行った事を


「・・・そうだったのか。けどウタは悪気があってそれを歌ったわけじゃないだろ?それにゴードンのおっさんだってウタのこと全然恨んでなんていないんだろ?」

「それでも!・・・私がエレジアを滅ぼした事に変わりはない、そんな時にあんたと...エースの記事を見て、何もかもから逃げたくて...もうこの世からいなくなろうと考えた」

「な!?」


だがそれは出来なかった、これまでの旅の思い出がウタの自害する決意を鈍らせその結果シャンクスにナイフを止められルフィが生きてる事を知れた。


「その後私は赤髪海賊団を辞めてルフィの傍にいる為にトットムジカの制御と覇気の習得に取り組んだの」

「・・・」

「覇気の方はシャンクス達のお陰で会得出来たけどトットムジカの方は...まだ完全には使いこなせられてないからいつかのスリラーバークの時みたいに暴走しちゃうかもしれない」

「・・・」

「だからねルフィ、アンタが良いって言うんなら私は他の島に降ろして「ウタ」・・・?」


それまで俯せていたウタが初めてルフィの顔を見た、すると彼は胡座をかきながら深く頭を下げながら言った


「ごめんなウタ」

「な、何言ってるのルフィ?何で謝ってるの、頭上げなよ」

「・・・上げねぇ、お前がそんなに思い詰めてたってのに・・・傍にいてあげられなくて悪かった」

「ルフィ・・・」

「おれも...大事な奴らを守ろうとしたのに結局守れなかった」


2年前シャボンディ諸島で黄猿とパシフィスタの襲撃によって離ればなれになってしまった仲間たち

頂上戦争でインペルダウンで得た味方達や白ひげ海賊団と共に助けだそうとしたが手が届かず目の前でその命を失った尊敬する義兄のエース

自らの力不足を憂い自暴自棄に陥っていたルフィにエース救出に尽力した元七武海のジンベエはルフィを抑え力強く叫んだ。


「失ったものばかり数えるな!!!無いものは無い!!!確認せい!!お前にまだ残っておるものは何じゃ!!!」


ルフィは呆然と、しかし必死に思い出そうとしていた自分には何が残っているのか。

ふと頭によぎった顔が浮かんだ、海賊王になるという自分の夢を叶える為に必死に支えルフィ自身も彼らを守ると決意を帯びた仲間達が・・・そうだ自分には。


「仲間がいる゛よ!!!!」


自分には仲間がいる、たとえ離ればなれになってもみんなの無事を信じられずに何が海賊王だ。ルフィの慟哭が自分自身の運命を変えたのだった


「おれももう大切なものを失わないように強くなった、お前と一緒だウタ」

「ルフィ・・・」

「だからよ・・・」


そう言うとルフィの眼に大粒の涙が流れウタに言いたかったことをぶちまけた。


「がってに!いばぐならないでぐれよー!ぼれ!おれはみんなじかだよりがいねぇがらよぉ!!」

「!!!」


ウタはここでもう一つの過ちに気づいた、ルフィは幼い頃から孤独を嫌う少年だったという事を思い出した。・・・何が体より心が大事だ、自分が自害することはルフィの心を殺す事だという事実を今になって気づいてしまった。

そうしてウタは無意識にルフィを抱きしめ後悔の涙を流してルフィに許しを乞うていた。


「ッッ!ルフィ!ごめん!ごめんね!もうこんな馬鹿なことはしないから!ルフィの前からいなくなったりしないよ!もう、絶対に!」

「ウダァァァァ!!」

「う゛わああぁぁぁん!!ルフィィィ!!」


〜〜


共に抱き合いながらひとしきり泣いた後改めてルフィは誓った


「おれはウタを信じる、もしウタが魔王に負けそうになったら・・・そん時はお前を殴ってでも止める。ウタがこれ以上悲しませないようにする為にな」

「プッ何それ?アンタが私を殴れんの?」

「当たり前だ!おれのパンチはピストルより強えからな!」

「子供の頃はやってたじゃん、ヘナチョコぐるぐるパンチ」

「あれは本気じゃねえ、本気で殴ったらおれがシャンクスにぶん殴られるからな」

「出た!負け惜しみ〜」

「あぁ!?何だとウター!」


お互いに軽口が言える程に気が楽になった時にウタはルフィに誓った。


「ねぇルフィ、私は向き合うよ。私の犯した罪と魔王の力に、だから...ルフィと一緒に前に進んで良いかな?」

「・・・そんな当たり前の事言わなくても分かんだろ?」

「・・・ありがとう、ルフィ」


新世界の航海に向けて新たな誓いを立てた2人は以前よりも精悍な顔つきになっていた。

いつか辿り着ける海賊王への頂に"新時代"の扉が開かれる事を信じて。

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