君よ 気高くあれ


「それで?コイツがここのプロドロスを返す代わりに一緒に追っ手を一掃したいって?」
「おかしいだろナジ?スペーシアンの言いなりだって言うのか?」

「僕からの要求は、僕の逃亡の支援、グエル・ジェタークの解放、それだけです」

「信じられるのか?」

「決定はお前らに任せるさ
だが、追っ手と真っ向勝負するならば協力者になってもらう他ない、信じる価値はあると思うがね」

「俺が見張っておく、妙な真似をしたら殺す、それでいいか?」
「俺はそれで構わない、事がすこしでも有利となるならな

どの道状況は詰んでんだ。
家族さえ守れればそれでいい…」

「キャリィによるテイルアームの一部をプロドロスに接続させれば、無人でプロドロスを操縦することは可能です

人が戦場に行く必要はない、と言いたいところですけど…」

「モビルスーツを持っていって俺達を殺ることも可能だそこまで信じられんな
だが協力はしてもらう、威勢のいいやつは嫌いじゃないからな」
―――

「あれは?」

「ソフィの墓なんだとさ、あいつはガキどものヒーローだったからな」

「ヒーロー…?」

「任務先でガラクタみたいな玩具を集めてはよく持って帰って気まぐれにあげてたんだと」
「撤退するってのに余計なものを…」
「忘れたくないのさ
忘れたらいつ死んじまうのかって恐怖に耐えられなくなる

あいつの存命は話さないつもりだ、ガキどもの覚悟を揺さぶる真似になるからな」


「あまりコイツの前で情報を出すな」

「安心してください、僕はこの子達にまで嫌がらせするほど暇ではないから…」
「はっ…そうだな、せいぜい暴れてくれよ今は仲間なんだからな」

「はい、グエル先輩をよろしくお願いします。」
――――

(この車…このままアジトへ突っ込む気か?
モビルスーツのある場所へ…?

まさか…)
ザッザッザッ
「リーダー、ターゲットの居場所が確認できました。」

「まだグループはたどり着かないな?
撃て、あくまで小規模のいざこざで納められる範囲でな」

「コピー…―」
バァン……
「ぐわあっ!?」

ゴドイは雨のような銃弾を木々の中で防ぐ(勝手に動くのはお前(自分)も同じだな…)

――――
「!?」
銃声の音にオルコットはアイリスを床に伏せさせる。
「伏せろ!…まだ組織が来るには早すぎる…!
一体どこの銃声だ!?」
バァン…バァン…
ババババッ…

銃声はまだ鳴り止まない。
今後の想定しているものよりも小規模のものだが、確実に誰かが殺しあっている音。

「もう、どこかの組織が…!?」

「いや…」
(ここまで来ると言うことは確実な1人の暗殺を狙った特効…
だがこれは…)
その時、懐からコメットのハロが落ちてしまい床に転がった。

「あっ…!」

カッ
その時、流れ込んだ

物体のある場所、向き、大きさ、形、人の位置が情報として頭をよぎる。

そして、ある人物の血まみれの姿。
「……!」
アイリスはその情報を受け取るとすぐにオルコットが落としたであろう銃を拾いあげて走っていた。

「おい!どこへ行くつもりだ!!」

「まさか!…違うと言ってよ…なんだよそれ…なんだよそれ!!」

――――


(ここで死ぬのか…)
ゴドイは自身から感覚や意識が失われていくのを体感していた。
周囲には何人もの特攻隊の軍人達が倒れ伏していた。

(俺は…クワイエット・ゼロを遂行し…復讐をなしたかっただけだが、最早それも叶いそうもないか…)

(あの子を殺した世界がずっと憎かった、憎しみだけを持って機械なようになれたらと思っていた…だが…)

(奴に…アイリスに会ってしまった。
義父となってしまった。
憎しみ以外の感情などほしくはなかった。)

「……さん!……お父さん!!」

(いたのか…無事か……)
言葉にしようとしたら口から血が出る。
それをアイリスは「なんで?どうして?どうしてこんな…?」と言って混乱していた。

(お前は賢い子だろう、少し考えればすぐにわかるはずだ)
「どうして庇ったりなんか…!」
(ああ、そうだな……
やはりアイリス、お前を引き取るべきではなかったかもしれないな。
ぎこちない親子としての生活は俺を変えたかもしれない…
だが、お前を“取り残される側”にしてしまった…)

「お父さん…?お父さ、お父さん?
嫌だよ、まってよ、だって…何も…言いたいこと言ってない…」

「まだ言いたいこと話したいことたくさんあるんだ……
たくさんたくさんたくさんたくさん
何も言えてないじゃないか!」
続く