【君の鼓動】

【君の鼓動】


 

どんどッとッとんどん


どんどんどっとと


どんっとっとっど


「うーん、まだちょっとズレるなぁ……」


とある昼時、場所はサニー号の船首、我らが麦わら一味の歌姫であるウタは船長である麦わらのルフィの腕の中で彼の鼓動を聞きながらペンを走らせ、手に持つ紙に楽譜を書き込んでいる。

初めは熱心に作曲しているウタの様子を物珍しげに見ていたルフィだったが、元々じっとしているのが苦手な彼は段々、それに飽きてしまい仕舞いには項垂れて彼女の肩に頭を乗せる。


「なぁ~、ウタ~、まだかぁ?」


「まだ!あともうちょっとで神曲が出来るんだから我慢して!」


「その台詞、もう何回も聞いたぞ」


げんなりした様子で呟くルフィに構わず、ウタは「あーでもない」「コレもなんか違う」と楽譜を書き殴っては、書いた音符を塗り潰すのを繰り返しながら頭を悩ませる。

曲の全体図のイメージは出来ている、歌詞も朧気ながら浮かんできている、あとは最後のピースさえ嵌れば完成するのだが、その最後のピースが掴めそうで掴めない。

そのヒントを得たくて、最期のピースに最も近いモノであるルフィの鼓動を聞けば掴めるかもと思ったが、どうも自分が思い描くリズムと微妙にズレてしまい、何だかしっくりこない。

あともう一歩で新曲が完成するという段階でドン詰まりになり唸り声を上げるウタに、とうとう痺れを切らしたルフィが彼女を横抱きに抱え上げ、勢いよく立ち上がる。


「わっ!?ちょっ、ルフィ!なにするの!?」


「しっかりつかまってろよ!!」


驚くウタに構わず、先程の退屈そうな顔とは打って変わって楽しそうに笑いながらマストの上に向かって命一杯腕を伸ばして、天辺を掴む。

そして、ウタを抱えたままマストへと伸ばした腕を縮めて勢いよく飛んだ。


「わあああああああああああ!!!?」


いきなりの事で反射的にルフィの首に両手をまわし、振り落とされないようにぎゅうっと抱き着くと、先程よりよくルフィの鼓動が聞こえる様になる。


ドンドットット♫


(アレ……?この音……)


聞こえて来たその鼓動を聞いた瞬間、ウタの頭の中に音の奔流が生まれる。

それは、最後のピースが嵌った事により、ウタが思い描いて来た神曲が完成し、その音楽が鮮やかにウタの頭の中で鳴り響く。

そして、その音楽を聞き入っている内に、ルフィとの空中浮遊は終わり、気が付けばサニー号の看板の上に立っていた。

 

「しししっ!どうだウタ!楽しかっただろ?」

 

屈託なく笑うルフィの鼓動をもう一度、耳を澄ませて聞く。

 

ドンドットット♫


このリズム、ルフィが本当に楽しいと思った時に高鳴るこの鼓動がウタの曲に欠けていた最後の一欠けらであった。


「ウタ……?怒ってんのか?」


「……きた」


「?」


「出来た……っ!神曲!!」


するりとルフィの腕の中から抜け出し、ウタはたった今、完成した音楽を口ずさむ。


~~~♪♪


新時代はこの未来だ 世界中全部 変えてしまえば

変えてしまえば……

 

ジャマモノやなもの なんてぶっ飛ばして

この世をメタモルフォーゼしようぜmusic

キミが起こすmagic

 

目を開ければ未来が見えて ここから始めるよって

この歌を歌おう

Do you wanna play?

デット オア アライブ ギリギリ 綱渡りみたいな旋律

譲れない叶えたい掴みたい

夢のままで終われないよI wanna be free

見えるよ新時代が 世界の向こうへ

さぁ行くぜ NewWorld

新時代はこの未来だ 世界中全部変えてしまえば

変えてしまえば

果てしない音楽がもっと届くように

未来みえるよ 君が話した

「ボクを信じて」

 

~~~♪♪♪

 

歌い終えた後、ウタはゆっくりと深呼吸をして呼吸を整える。

あとはこのリズムを元に煮詰めて、歌詞を書き上げ、仕上げれば、この曲の完成だ。

そうと決まれば早速、この神曲を書き上げなければとペンを持つ手に力を込めるが、その行動は楽しそうな船長の声に泊められる。

 

「すっげーな!さっきの!!なぁ、ウタ!もう一回歌ってくれよ!!」

 

どうやら我らが船長はこの曲をいたく気に入ったらしい、その事に誇らしく思うと同時にそうと分かれば何が何でもこの曲を完成させないとっと、ウタに気合が入る。

 

「ダ~メ!まだ未完成なの!完成したらいの一番で聞かせてあげるから待ってて!」

 

「え~、また待つのかよぉ」

 

「今度はそんなに待たせないから!取りあえずまずはペン!!」

 

胸から湧き上がり、頭の中で響き渡る音楽を形にする為、ウタは駆け出す。

初めはその後ろ姿を不満そうに眺めていたルフィだったが、暫くしてから「まっ、いっか!」っとカラリと機嫌を直す。

 

「ウタの新しい歌、楽しみだなぁ~♪」

 

やがて完成されるであろう神曲に胸を躍らせ、ルフィはそのまま芝生の上にゴロリと寝ころんだのであった。

 

 

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ホビウタ時空のウタちゃんの新時代にルフィの覚醒の鼓動がドラムで入ってたらエモいなぁっと思ってただけのネタです。

この後、ルフィはウタちゃんにした無茶でナミを筆頭とした保護者組に怒られて,ウタちゃんはそんな事は知らずにブルックと曲の完成を目指して没頭するイメージです。

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