君の世界、君の未来
昔はそうだった。
祖父の言う神様を信じてなかった。
大きな巨人。それが私は見た時の第一印象だった。
「あれはなあに?」そう聞いたら。
「神様だよ。
…いや、これから神様にすると言えばいいのかな。」
祖父はそう、笑っていた。
「シェバト社を担う神として、アーシアンの価値を認めさせられる。
これから生け贄となる動物たちが新しい世界を作られる!
素晴らしいことなんだよライラ!」
「じゃあそれで、あの飼育小屋にいた子泣いてたんだ。」
(なんか、かわいそう)
よくわからなかった、両親でさえ嫌気をさしていた。
その日、両親は私を連れて祖父との関係を絶とうとしていた。
母はずっと自分の父である祖父を忌み嫌っていた、だからその日は自由となろうと…
「お父さん、もう私たちは貴方との縁を切らせていただきま――」パァン
母の頭が撃ち抜かれた。
「な、なんだ一体!?ライラッ――」パァン
父の顔も吹き飛んだ。
(え?)
シェバト社の研究施設を銃を持った人たちが訪れた。
覆い被さった父のしたいの中、聞こえてきたのは銃の音。音。音。
「リーダー、ここは制圧しました。」
『こっちはアイリスお嬢様を保護した、お前たちは非難しろ。』
その時、地響きのような音が聞こえたと思ったら、ガラス戸から見えた炎の中「神様」が動いた。
「見ろ…ライラ…神が…産まれる瞬間を…」
虫の息だった祖父はそれだけ言って、ただの死体となった。
それからずっと頭の中で渦巻く言葉、それは
『神 様 ガ 奪 ウ ナ ラ 光 栄 ダ!!』
――――
現代。
ルブリスの点検をする少女の後ろ姿に責任者のオルコットは声をかける。
「もうそれぐらいでいいだろう。
いくら点検したところで実戦では結果だけだ。」
「オルコットさん、私ねェ神様見つけたの。」
「神様…?」
「そう、おじいちゃんたちが作り上げた存在。
アスティカシアにいるみたーい。」
「いくらガンダムとは言え、単体でアスティカシアで暴走すればどうなるかわかるな?」
「大丈夫、私はずっと会えると信じて進むから。」
(まだ神というものにすがりたいのか、いやこんな世の中だ。
すがれたら何でもいいだろう。
だが神はいない。)
「……死ななかったら会う機会が増えるのは確かだ。気張れ。」
(そしたらコイツは、神を見たと狂喜するだろう…
それが本当に死ぬ時だとしてもな。)
「ライラ、輸送船をジャックする。
だから、予備船は破壊しておいてくれ。」
「はーい」
――――
「追わなくていいのですか?」
「あの子? そうねぇ…でもクワイエット・ゼロの全てを知ってる訳でもないし…。 いいんじゃないかしら?」
ゴドイの返答にプロスペラは少しズレた返答を返す。
「キャリバン・エイクはもう既に機動できるところまで仕上げてあります。
そのデータを公私で持ち去ったことをご存知でしょうか?」
「ええ…でも、大丈夫よ。私たちにはエアリアルがいる。
元々、アイリスが手放さなかったから置いていたにすぎないガンダムでしょ?」
「…。
調べたところ、所在地がわかりました。
ある運送会社に勤めているようです。
あのグエル・ジェタークと共に。」
「それって本当なの…?
いえ、貴方の情報が間違ってるはずないものね。
ふふ…じゃあ、行きましょうプラント・クエタに。
時間がないわ。
スレッタたちも待っている。」
――――
「おい、ボブ!仕事はどうだ?」
「あっ はい!もうすぐ終わります!」
「なあ、ボブ…ずっとここにいてもいいんだぞ?」
「…!
ありがたいですけど、すいません。
もう決めたことなので。」
「そうか…寂しくなるな、あと1ヶ月なんて。」
――――
「最近、新しく入ったあの子、素直でいいわね~。」
「挨拶もしっかりしてくれるし、息子もああなってほしいわね。」
(ふふん…そうでしょう、そうでしょう。
グエル先輩、頑張ってるな…。)
2人はカシタンカという輸送船で働いていた。
グエルは力仕事の多い部門につき、アイリスは軽作業の部門に割り振られている。
「コメットさんの彼氏さんなんでしょ?」
「!? ンブホッ ゲホッゲホッ… 違いますよ!
ボブ先輩は『従兄』(という設定)です。」
「あら、残念。応援してたのに。でも最近ではイトコ同士でも…」
「ごめんなさい!僕トイレ!!」
「大丈夫かしら、顔が赤かったわよね…?」
「コラ、あんまいじらないの!」
――――
(「僕の姉の婚約者の元婚約者で、姉に爆速プロポーズをしてフラれたんですよ。
でもすごく素敵でいいですよね!」
なんて言えるはずない、拗らせてると思われる。
「僕、20歳以上年上の男性にしか興味ないんですよね。」
よしよし、言い訳考えたぞ。
落ち着け…フゥー。
こんな時こそ、キャリィを撫でて落ち着くんだ…。)
「キャリィ、聞いてよ、恋バナって緊張するんだよね。
地球寮でもそういうことあったっけ、スレッタも案外そういうの好きだったよな…。
…聞いてる?
……。
お前はまだ眠っているの?
聞いているんでしょ…?」
(ここ結構好きだなあ、でも…)
――「少ししたら俺はジェタークに戻る、他の奴らが心配してるだろうからな。」――
(あの人はそう言った、戻って退学になるかもしれないとわかっていても。
一度は寮の人たちに顔を合わせておきたいんだ…。
すごいな、あんなに強い人なら何処へでもやっていけそうだよ。)
アイリスは知らなかった、グエルがジェタークへの帰還に踏ん切りがついたのは「家出仲間」がいたからのことだと言うことを。
彼女から毎日のスレッタとの幼少期の話を聞かされた彼は自身の弟を思い出し、あと一か月で帰還することとなった。
(正直…シン・セーには戻りたくない。
それでも…スレッタがいるなら、そこが僕の帰る場所だから。)
「そろそろ戻ろう、少しの間だったけど、戻れる場所があるだけ幸せだよね。
だから、その時には起きてほしい…。」
そうハロを抱いていると誰かからの声がした。
「すみませーん。
この荷物持っていってくれますか?
頼んだ人が予備船に置いといてほしいって言ってましたけど。
お願いしてもいいでしょうか?」
「え?あ、はい!
うわっ重いですね、ここまでご苦労様です。
一体何が入って……」
その時、荷物運びの彼女の懐に忍ばせている赤いランプが服越しに光るのを見た瞬間、押さえつけていた。
ガンッ 「ッ痛…」
「ごめんなさい、少しそのランプ見せてくださ――」
自分の思い違いか、確かめるために確かに光った場所にてを伸ばすと、別の光りが目の端にうつった。
寸前で手を離し距離を取るアイリスは「やっぱり爆弾だね?」と聞く。
「あっちゃ~…勘のイイ人いたなんてなァ…。さっそく、やらかしたわ…今ので殺れたと思ったのに…。」