名もなき群衆の声

名もなき群衆の声




感情が聞こえる。

嘆きが、怒りが、恐怖が……二十年にわたって積み重なってきた、この国に住む人々の残留思念が。

家族を、友を、仲間を。踏み躙られたその悔しさを、全て受け止めようと決めた。

トットムジカは負の感情の集合体。十二年間のウタの負の感情に寄り添い続けた分身体にしてもう一人の相棒。

ルフィが希望を背負って夜明けを掴むなら、私は絶望を糧として理不尽を蹴り飛ばそう!


「いくよ、ムジカくん!」

「ムー!」


すうっと息を吸い込んだ。二十年越しの討ち入りにこの国の全てがかかっている。一筋縄ではいかないこの戦い、出し惜しみなんてしていられない。

言葉を力に、旋律を刃に。私たちの力は、この国の弱き者の絶望全てだ。百獣海賊団、そしてカイドウ、覚悟しろ!




「【── ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᚲ ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᛏ ᛏᚨᛏ ᛒᚱᚨᚲ】!」




ぶわり、と吹き荒れる風と、背筋が凍るような恐怖が辺りを包み込んだ。背筋が凍るような恐怖が辺りを包み込む。

この国の絶望を糧にして、トットムジカが顕現したからだ。この恐怖は、この国に生きる弱い人たちが感じてきた感情そのものだ。

WCIで初めて使ったときよりもずっと強い。感情が荒れ狂って、叫び出したくなるほどの強い衝動が私の内側を旋風となって荒れ狂う。

──でも、大丈夫。

これ以上の希望を、知っているから。


「さあ、二十年間で力及ばなかったみんな!暴虐に抗うことなく耐え続けたみんな!

───叛逆の時だ、力を貸して!」

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