同病相憐れまず

同病相憐れまず


ifローのみサラダSS

ifローがifドに連れ戻された後の話

性的虐待は無かった世界線

性描写は無いけど半裸にはなる



 倒れ伏す男の「ロー」を見て、ローは悲鳴をあげた。

「ロー!!」

 すぐにでも駆け寄ろうとしたこの世界のローを――首に回ったたくましい腕が阻んだ。

「まァ待て」

 ドフラミンゴだ。ローは背後の男をキッと睨んだ。

 鳥籠に連れ戻されてから数週間。ドフラミンゴは今朝からいやに上機嫌だった。だが、それに何も感じないほどローの思考は鈍らされていた。

 凄惨な拷問によって。

 だが、連れて来られただだっ広い広間の真ん中。うつ伏せに倒れている異世界の自分を見た瞬間、頭のもやも苦痛も吹き飛んだ。

 首に回された腕を叩き、ひっかき、純白の涼やかなワンピースをめちゃくちゃに翻してローは暴れた。

「なんで、あの人達には手を出さないって……!!」

「ネズミ駆除は家主の仕事だろ」

 嘲弄と、隠されもしない殺意。

 ローの体はたちまち硬直してしまった。

「追いはしねェが、わざわざ飛び込んできてくれたんなら歓待しねェとなぁ」

 ドフラミンゴは舌なめずりをする。ローは何度もこの顔を見た。この表情は、必ずローに最悪を運んでくる。

「どうしてくれようか」

 至極愉快そうな囁きが落ちる。ローはかたかた震えて向こうに転がる彼を見た。

 服は血まみれ。顔は見えないがきっと虫の息。後ろ手に全てを戒める海楼石の手錠。

 たとえばローが彼の首を欲しがるなら首を、彼の陵辱を望むなら陵辱を、ドフラミンゴは与えるだろう。

 ――キャプテン!

 ――ローさん!

 走馬灯のようによぎった「ハートの海賊団」との記憶にぶたれ、ローはとっさに背後のドフラミンゴに取りすがった。

「っドフィ、兄様、私のこと抱いて、殴って、何でもする、何でもしていいからこの人達には手を出さないで!!!」

 とにかくドフラミンゴの気を引かねばならない。その一心で、ローは浮かんだ考えを浮かぶ端からそのまま垂れ流した。

 ドフラミンゴは刹那笑みを消し、そしてまたすぐ口角を上げた。

「……わっ」

 ローはドフラミンゴに抱き上げられた。そのまま彼は傍らの椅子に腰掛け、ローも横抱きの形で膝に座らされる。

「ロー」

 この距離でも色ガラスの向こうの瞳は見えない。甘い声と共に伸ばされる手は恐怖でしかない。だけど、ローは唇を引き結んだだけで目を逸らさなかった。

「ローォ」

 毒の滴る声音と共に、後頭部に大きな手が回された。笑みの形に歪んだままの、女一人なんか頭から食べてしまえそうな大きな口が迫る。

「……」

 ローは一度息を飲んだものの、すぐに諦めて瞼を下ろし。

 そして、ドフラミンゴの唇に触れられた。

「レディーがそんなはしたない真似をするもんじゃあないぜ」

 ローの目も口もぽかんと開いてしまった。

 ドフラミンゴは、口ではなく、額に口付けを落としたのだ。

「え…………?」

「おれは家族は抱かねェよ。そこまで落ちぶれるつもりはこれからも無ェ」

 昨日ローの目玉をえぐりかけた手が優しくぬめついて頬を滑る。不快なそれにも何も反応できないほど、ローは呆気に取られていた。

 ドフラミンゴはローを犯したことがない。

 拷問の一環、尊厳の嬲り殺しとして極めて有効なはずのそれを受けないことは、ずっとローの中にあった疑問だった。

 いかにもおぞましい狂人の理屈が理由だと、たった今まで分からなかった。

 ……そういえば。膝に抱かれているのに、ローの腿が触れているはずのそこは、ずっと、露ほども兆していなかった。

「まあ、あいつについてなら何だってしてやるがな」

 顎先をくすぐった指がローの眼前できしりと動く。

「…………っぐ!」

 ローははっと振り返った。彼は姿勢こそうつ伏せのままだが、右肩から血がしぶいたところだった。

 ちょうど見えないノコギリで裂かれたように。

 ローの全身からざっと血の気が引いた。異世界の彼なんて知らないと言わんばかりに背を向け、半狂乱で再びドフラミンゴの胸元にかじりつく。

「やだ、ねえ、ドフィ、抱いて、私のこと犯してよ!!」

 抱かないと言ってはいるが、ドフラミンゴがそれなりに好色だったことは知っている。

 もうローにはこれしかなかった。今のドフラミンゴの意識を逸らすには、「今まで受けたことのない拷問」を虜囚自ら提案してみせるしか。

 ドフラミンゴはくつくつ笑いながらそっとローを引き離し、いつの間にか伝っていた涙を優しくぬぐった。


「ロー、喜べよ。家族が増えるぞ」


 子どもをあやす調子で言われて、世界の全てが停止した。

「………………え?」

 ドフラミンゴは、ずっと、唇を吊り上げるようにして、笑っていて。

「かわいいややが生まれるだろうなァ。おれの見込んだ男だ、間違いはない」

 膝上に乗ってもさらに見上げるほどの体躯の差。ローは呆然と、ドフラミンゴを見上げている。

「子ができるなら、親無し子にするなんて外道はしねェさ」

 ドフラミンゴの両手がローの首を抱く。恐怖する隙間さえ存在しなかった。首裏に回った指、千々の人々を擦り切れてなお踊らせ続けた指が、ペンダントを優しく外した。

「賢いお前は分かるよな?」

 ちゃらり、催眠術のように目の前でローを縛る海の石が揺れ。

 能力なんて使ってくれるなよ――という言外が聞こえるほど、共に過ごした。

 もはや操り人形のように、ローは背後を振り返る。

 ローの視線を受けた彼が顔を上げた。いや、上げさせられた。

 帽子の無いせいで歪む顔がよく見える。うつ伏せから上半身だけを上向かされて苦しいはずなのに、全く褪せない、あらゆる激情の煮えたぎった双眸が、ドフラミンゴともどもローを貫いた。

「……」

 思わず身震いし、ドフラミンゴのコートを握る指先が白む。しかしすぐに目を伏せ、ローは手を離した。

 今すべきなのは恐怖ではない。

 ローはそっとドフラミンゴの膝から下りた。なのにドフラミンゴは機嫌を損ねない。床の冷たさに震えるローを見て、ひきつれた傷痕みたいににやにや笑うだけ。

 笑い声を意図的に無視して、ローは彼の元へ一歩踏み出した。

「…………ク、ぅ……」

 歩き出せば石の床はことさら堪える。すがる壁も無くふらつきながら、しかしローは気丈に歩みを進めた。

 白いワンピースの裾をはためかせ、歩いた後には血の足跡が付く。釘の打たれた甲も爪の無い指も、伝わる冷気と相まって痺れるように痛む。しかし、倒れる訳にはいかなかった。

 今ローが倒れたら、きっとドフラミンゴは、糸で全てを為すだろう。

 籠の外からぶら下げられた選択肢であっても、ローはどちらかを選ぶしかなかった。

 焼けた鉄の靴を履かされたようにぎこちなく、危なげにローは歩き、進み、そして。

「…………」

 ローは彼の傍らに立った。無様に横たわる彼を見下ろした。

 彼はずっとローを見ていたので、当然目線がかち合った。無理に上体を起こされた苦しい体勢だが、息は荒いながらもそのまなざしから光が消えることはない。

 ローは歯噛みし、ワンピースの裾を握り締めた。

 ちゃんと置いてきたのに。

 今度こそ守りたくて、これ以上喪いたくなくて、みんな正しい世界に置いてきたのに。

「何しに来たの」

 いかにも恨めしげな声になる。彼の眼光が鋭さを増した。当然不快感が理由だと思った、が。

「お前を助けに。まァ多少ドジったが」

 ローは唇を噛み締めた。

「何で来たの」

 彼の眉がちょっと寄る。

「同じ問答は好かねェ」

 ふつ、と糸が切れたようにローの上体が床に落ちた。慌ててしゃがみ込み、片腕で難儀しながら彼をあお向けにする。

「ロー」

「平気だ」

 いろんなところから血が流れているのに、見上げてくる瞳はやっぱりどこまでも強靭で、ローは無性に泣きたくなった。

 くしゃくしゃに顔を歪めるローを見て、彼が大仰にため息をつく。

「おれもお前も、最悪な奴に目ェ付けちまったな」


「ロー」


 背筋が反射的に震えて丸まった。

 背後から、悪魔の声。彼があいつを睨みつけたのを、ローは目線で制する。

 なるべく優しく彼の体を横たえて、痛んで震える両足を叱咤して立ち上がった。

 余興は終わりということだろう。

 目を閉じ、なるべくゆっくり呼吸を整えて、覚悟を決めて目を開き――そこではたと気が付いた。

 背中のファスナーが下ろせない。

 そういえばドフラミンゴが用意する服は、ローが一人では着脱できないものばかりだった。

 ドフラミンゴの喜悦が手に取るように伝わってくる。

 横たわる彼から目を逸らして固い床を見すえ、ローは奴の望み通りに声を張る。

「ドフィ、脱がせて」

 拳に力がこもった。返答は無く、代わりに包丁が肉を削ぐようにずるりとファスナーが下り、背中の布が開き切った。

 もう隻腕でも問題無かった。左腕で右肩の布を掴んでむしり取るように引きずり下ろせば、流れるような肌触りのワンピースが肌を滑り落ちた。

 下着姿になってわずかに頬に血が上る。羞恥する権利などローには無いというのに。

 足元の彼は変わらず、ドフラミンゴを睨み続けている。

「ドフィ」

 まだ足りない。ドフラミンゴの望みには。

 だからローはまたねだった。

 「おねだり」通り、あっという間に下着のホックが外される。それ以上はやってくれなかったので、ローは自ら下着を落とすしか無くなった。

 他人を知らない真っ白な乳房が晒された。外気でぷつりと膨れた先端が震えている。

「やめろ」

 足元から苦悶に満ちた声が聞こえて、ローは非常な努力でもって彼を見た。

 彼は痛ましげに顔を歪ませていた。それが女のローにとっては、ことさら情けない。

「止まれ、ッグア!!」

 糸が彼の鎖骨辺りをまっすぐ貫いた。鮮血が吹き出し、ローはすんでのところで悲鳴を飲み込んだ。

「だ、いじょうぶ。大丈夫だよ」

 自分に言い聞かせるようにローは彼に言った。苦痛に震える彼に、きっと声の揺れは悟られない。

 ローは息を吸う。

「私は、お姉ちゃんだから。父様と母様の血を引く医者なんだから。今度こそ、あなた達だけは守ってみせる」

 守る手段が強姦とは、笑い話にもならないけれど。

 ローには性行為の経験が無かった。恋人さえいたことがない。

 十三年。脇目も振らずにコラソンの影を追いかけた。

 二年。ドフラミンゴに嬲られた。

 二ヶ月。もう二度と会えないはずのクルー達が優しくしてくれた。

 だから、もうローには十分だった。

 もはや自分でも労れなくなっていた自分の体を、この男とクルーは優しく包んで治療してくれた。愛してくれた。

 自分の操ひとつなんて、彼らの愛にはとても釣り合わない。その上これから、ローは彼を汚す。どうか野良犬に噛まれたようなものだと思って許してほしい。

「ごめんね。ラミの代わりに私に救われて」

 彼が両目を見開いたので、ローは唇を曲げて微笑んだ。なるべく淫蕩に見えるよう。

 せめて怒りをはなむけに。

 優しい彼が微塵の罪悪感も持たぬよう。

 女の膂力をずっと恨んでいた。でも、女の体がこうして力になれるなら、捨てたもんじゃないと思うのだ。

 だから、ローは。

 麦わらが殺されて以降初めて、花が綻ぶように、心から笑った。



* * *



 彼女は泣いていた。

 泣きながら笑っていた。笑いながら泣いていた。

 ローは自力で体を横に向けて頭を精一杯上げ、彼女のはるか背後にいるドフラミンゴを睨みつけた。

 ドフラミンゴは、これ見よがしに彼女から外したペンダントを手のひらで転がして笑っている。

「外道が」

 ローの暴言は咎められない。代わりに、寄生糸も出ていない。

 つまり、ドフラミンゴはあくまで「彼女の自由意思によって」彼女とローをつがわせようとしているのだった。

 性別を違えた二人の「ロー」を。

 この世全ての罵詈雑言を集めても、この所業には及ぶまい。

 畜生にも劣る外道。

 ――夜叉。

 ローはこの時初めて、真の意味で、ドフラミンゴという男の狂奔の一端に触れた。

 そして、非合意の性行為は男女の別無く犯罪だ。自分だって言うなれば、意に沿わない行為を強いられかけているところ。

 だが違う。

 あちらのローは女だ。 男の被害者を軽んじはしないが、今この場で望むはずもない妊娠をしたら、傷つくのは彼女だけなのだ。

 今の彼女はラミどころか母の影と重なるばかりで、ローは必死に吐き気を飲み下す。

 あのドフラミンゴがこの世界に来た自分を捕らえに来るのは計算の内だった。「適度」に痛めつけられることも予想の内。彼女には無かったという陵辱さえもローは覚悟していた。

 ――私は犯されなかった。それだけは、無かった。

 口ごもる様は言い訳にしか見えず、ローはそれを彼女の嘘として流し、それ以上は問いたださなかった。

 しかし、今なら分かる。きっと彼女自身が一番不思議に思っていたのだ。殴って蹴って焼いて裂いて、焼きごてをあてても内臓に刺繍をしても自分の名前を縫い付けても、あのドフラミンゴは彼女を犯していなかった。

 怖気。

 自分の世界のドフラミンゴとは一線を画している。

 ――狂気。

 その一点のみで、一度は同じ存在に膝をつかせ、ドレスローザを発って強くなっているはずのローの全てを上回った。

 全く舐めきられたことに、ローの手錠は海楼石製ではなかった。内側に大きな海楼石の付いた革ベルトを鎖で繋いだだけのもの。海楼石から解き放たれ、枷の一つも無くてなお失われない、彼女の従属を示すかのように。


 ここ数分の出来事が鮮やかに蘇る。

「ドフィ、脱がせて」

 臓腑をやすりがけにするような嫌な音を立て、ぱさりとワンピースが落とされた。

 くしゃくしゃの白い輪と化したそれを、細く、傷だらけででこぼこの女の爪先が、越える。

 ようやく標準体重に戻りつつあった体は再び痩せぎすになっている。華美な総レースの真っ赤な下着は、張り出た腰骨とあばらの浮いた肌にはどこまでも不似合いで、異常だった。

 その下着も片方はすぐに外されてしまい、秘されるべき肌が残酷に晒される。

「やめろ」

 彼女を傷つける訳にはいかない。その一心で、ローは彼女を止めようとした。そうせずにはいられなかった。

「止まれ、ッグア!!」

 灼熱が鎖骨を貫き、抑えきれなかった声が漏れる。ああ、彼女が怯えてしまった。激痛でぐらつく視界の向こう、ドフラミンゴは指先でペンダントを遊ばせながらにやりと笑った。

 しばしばペンダントトップから離れる指は気まぐれにローをいたぶるばかりで、寄生糸だけが一向に出て来ない。

「だ、いじょうぶ。大丈夫だよ」

 ローは必死に顔を上げて彼女を見た。

 そこには。

「私は、お姉ちゃんなんだから」

 ローは言葉を失った。

「父様と母様の血を引く医者なんだから。今度こそ、あなた達だけは守ってみせる」

 あの日のシスターがそこにいた。子供だけでもと大人の自分を度外視した、泣き濡れた殉教者の微笑みだった。

「ごめんね。ラミの代わりに私に救われて」

 あまりにも短絡的で浅慮な、意図の分かりきった見え透いた挑発。

 もうローは子供ではない。大人の嘘には騙されない。今ここで彼女にふざけるなと怒鳴ってやれれば、どれだけよかったか。

 その怒りが自己満足だと自覚できる己の理性のことを、ローは心底小賢しいと考えている。

 だから。

「おれはお前を抱かねェ」

 怒る代わりに予言をひとつ。目に見えて彼女がびくついた。

「お前はおれを犯さねェよ」

 言い聞かせる。お前は自由であるのだと。

「お前は、誰も、傷付けない」

「――――」

 彼女がはくはくと息を吸い、大気が揺れた。それは震える彼女の唇から出たものではなく。

 だからローは思いっきり足払いをかけた。

「痛ッ!?」

 ローは後ろ手に戒められながらも、したたかに背中を打った彼女に素早くのしかかった。

「ぁ」

 彼女の瞳が見開かれ、耐えきれずといった風にぼろっとこぼれた涙に内心で「心外だ」と悪態をついた、次の瞬間。

「わっ!?」

 すさまじい熱風がローの後頭部をかすめ、彼女が小さな悲鳴を上げた。

 きん、と痛いほど澄んだ静寂が一瞬。


 爆発。


 轟音が鳴り響き、空が落ちたみたいに固いものが次から次へと降ってくる。彼女が目を白黒させている間、ローは自由になった両手で彼女の頭を胸元に抱き込んでいた。

 白くて細くて、だけど確かに暖かい。

 この彼女が世界の誰にも晒されぬよう、ローは全身で彼女に覆いかぶさり、腕の中に閉じ込めていた。


 音が止み、ローは静かに顔を上げる。

 かちんと固まったままの彼女の瞳に、ぽかりと青空が映っていた。

 ローは背後を振り返り、彼女と同じく、たった今吹き抜けにされた空を見た。


 切れ切れの雲浮く青にひとつ立つ、極彩色の王の人影。


 叫んだのはどちらだったか。

「ドフラミンゴ……ッ!!」

 二人ともだったかもしれない。ローは続けざまに怒鳴った。

「おいどういうつもりだ!!! 麦わら屋達は」

「黙れ」

 ただ一言。それだけで大気がドス黒く圧縮される。

「ぐ……!!」

「ぅ……!!」

 覇王色。常のローなら何でもない。が、いかんせん体勢が悪い。横たわったままのローと彼女は、だから見えざる大きな手に押さえつけられたように動けなくなった。

 ばち、ばちんと大気が震え、極小の稲妻が無数に走る。

「…………」

 かつん、と革靴の音を響かせて、背を向けたドフラミンゴが二人のローの眼前に降り立った。この世界のドフラミンゴは笑みを刷きながらも、既に椅子から立ち上がっていた。

 よく見れば、二人のドフラミンゴの指先は淀みなく動き続けている。ずっと。対峙した瞬間から。

 ローの頬を斬った風はローの世界のドフラミンゴの余波、彼女の服の裾を斬り裂いたのは彼女の世界のドフラミンゴの余波。

 肘をつき、肩と地面の間に彼女のための空間を確保する。彼女がこれ以上傷付いたら本末転倒だ。

 覇王色の鍔迫り合いの隙間を縫うように、無数の糸が乱れ飛んでいる。

 ペンダントはとっくに放り捨てられていた。


 ――オォ…………ン………………。


 刃の噛み合うような重い残響を残し、肌を刺すようなつむじ風が止む。一旦小休止になったようだった。

 先に口を開いたのは、ここの主のドフラミンゴだった。

「負け犬の次はヒーロー気取りか。芸達者で何より、臭い飯でも食うには困るめェ」

 ドフラミンゴは満面の嘲笑を湛えていて、ローは思わず目の前のドフラミンゴの背中を見上げた。悪口(あっこう)と煽動はこの男の常套手段だったが、それが己から向けられた時のドフラミンゴの反応など想像の埒外だ。

 はたして、ローの世界のドフラミンゴは。

「……………」

 至極つまらなそうに鼻を鳴らし、ロー達には一瞥もくれず、ファーコートを脱ぎ捨てた。意外な反応ではあったが、ローは過たずそれを掴み取り、手早く彼女の体に巻いてやる。

「え、え」

 ぱちぱちとまたたく彼女に先程までの殉教者の顔は無い。どさくさ紛れで「ドフラミンゴの衣服に包まれていること」にまで頭が回らないようで何よりだ。

 ローが彼女を包み終えたのを見計らったかのようなタイミングで、ローの世界のドフラミンゴは、ただ一言。

「よく吠える」

 二人のローはぞっと背筋を震わせ、あちらのドフラミンゴの笑みは掻き消えた。次の返事はもう新たな攻撃だった。





スチル「二人の天夜叉」解放

正史ロー虜囚ルートをクリアしたため、???ルートが解放されました

次のチャプターへ進みますか?

→はい

 いいえ


正史ドフラミンゴ参戦条件

○日目の新聞を買わない

×日目の海軍本部訪問時、センゴクとの会話後の選択肢で「まっすぐ帰る」を選び、道中でつると会話する


書きたかったこと

ドフラミンゴによるロー♀のストリップ


初期案

正史ローは薬で発情させられた上で転がされていた

ボツ理由

勃起しっぱなしだとカッコつかないね。。。


ifロー♀が敗北した原因は、決して性差による体力の差ではありません。

ifドは悪魔の天啓を得て覇気回復前のルフィを見つけ出した。ただそれだけです。







2022/12/10追記

同じ小説を2022.11.8. 14:54:14付けで「ぷらいべったー」に投稿しています。非公開です。

スレッド動画化を受け、無断転載を防ぐための措置です。

上記以外のものは無断転載となります。

スレ内でこの追記についての話題を出すことはお控えいただきますようお願いいたします。


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