同じ王を戴くモノ

同じ王を戴くモノ


シーカー・ダルヴァ

「なぜ 突き放した僕を治療しようとしているんだ...ダルヴァ」

「なんでも何もないじゃろう 敵を倒したのはお主じゃし...何より

「同じ王...?」

涅マユリを退けた石田を治療し目的地へと進む 副隊長の方も一応の処置はして命に別状は無い上に恐らく十二番隊の隊士が来るため全く心配はいらない

だが石田は別だ いくら滅却師について調べてるとはいえ滅却師の力...『王』の力を失わんとしている同胞を何もせずに捨て置くなど流石のダルヴァでもその信心が許さなかった

「今後力を失うお主には関係の無い話じゃ...今の現世では知るという事自体が危険なんじゃろうしな」

下手な知識はその命を蝕む 石田にあの苦難の手袋(ライデンハイト)を渡した意図はなんなのか考えつつも肩を貸し進む

進む先は...懺罪宮 「階段長すぎて辛いんじゃが...」


ようやく階段を登りきる 先ほどから感じていた霊圧の主が見えた

「恨みは無い だが平和のためには滅すも已むなし」

死神が斬魄刀へと手を掛ける

「無い無い尽くしのところ悪いのじゃが 聞く耳は持ってほしいのじゃがどうじゃ?」

「...いいだろう 斬り合うばかりでは平和は訪れない」

肩を貸していた石田を下ろす 石田は時間が経ち完全に滅却師の力を失っていたためか力なく地面へと落ちた

「見ての通りの怪我人じゃ 『旅禍』ではあるがそれ以上に怪我をした子供じゃ...丁重に保護をしてほしい」

「"見ての通り"か だがそこにいる彼が無力であり怪我をしているのは分かる

そしていま喋っている君が厄介な『旅禍』であることも」

場所を移すか石田を離してから戦うことに腹積もりを決めたのだろう死神に水を差すようだが一言言わざるを得ない

「死神は儂が捕まっておった頃よりも随分と弱くなったのう 厄介だと分かるのは良いがお主の膂力に収まるかどうかをはき違えるでないぞ...儂はもう帰る 老い先短い老人の時間を浪費するでない」

戦えば現状であれば確実に逃げることは出来る だが周りの被害を考えればただ無駄にやり合いたくなど無いのだ

「追いかけるような真似はしない だがもし次見かける事があればその時は 平和のために滅す」

その死神 東仙要はそう言って石田を回収し下がった


「なぜ貴方はダルヴァに手を出さずに逃がしたんですか...」

四肢は動かないが口だけは動く石田は東仙に質問した

「彼には君を慮るような様子があった 実際には同情や憐憫より...信仰を元にした他者への慈悲のようにも感じたが

それらを見て今ここで戦うのは得策ではないと考えた これで良いだろうか」

敵である子供に優しく東仙要は教えた


その後懺罪宮から十二番隊の隊舎への道筋から食用可能な道草が消え去り 隊舎が襲撃され資料の強奪と機器の破損 

そして強奪された資料の中には被造死神計画「眠(ねむり)計画」も含まれていた

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