合縁奇縁もいいところ

合縁奇縁もいいところ


ここは英霊の座。数多の英雄やはたまた犯罪者(どちらも同じものかもしれないけど)を人理の影法師として集積する、人類史の見本市みたいな場所。そんな場所にいる私は女教皇ヨハンナ…とされるよく分からない存在。いないと立証されたものを英霊にするってどういうこと?いないのに存在してるの?そこを考えるとよくない沼にはまりそうなのでスルーする。

大事なのは…そう、誰かの声が聞こえたこと。凪いだ海のように静かでなんの変化も訪れない私の座に、小さな漣が立ったこと。誰かが私を呼んでいる。いや呼んでるのは私じゃないのかもしれないけど、でも。

ほかの英霊の座ではかき消されていそうなくらい小さなその声が───誰からの声もかからない私の耳には届いたのです。


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「サーヴァント、ルーラー…女教皇ヨハンナ、呼び声に応じて参りました」

さて、呼び声に応じたはいいものの。私を呼び出したらしい青年は驚いたような顔で固まっている。呼んでおいて驚くって何事?いないはずの教皇がサーヴァントとしてやってきたから驚いてる?そりゃそうだ!私なんて絶対サーヴァントとしても弱いのだろうし、私が出てきたらがっかりするのは…うん。そうだと思います。とはいえお互い何も言わないでいては進むコトも進まないでしょう、ということで口を開こうとした時、青年のほうから話しかけてきた。

「…まさか女教皇ヨハンナが、いや、サーヴァントが呼べるとは思わなかった。貴女が力になってくれるなら心強い。よろしく頼む」

「よ、よろしくお願いします…?」

サーヴァントが呼べるとは思っていなかったというのはどういうことだろう?現に呼べているのだから呼べることはおかしくないのでは…とか何とか思考は巡るけれど、ひとまず差し出された手を握り返す。私のものとは違って、ごつごつした力強い手に浮かんだ赤い翼。それが私と彼を巡る奇想天外な7日間の始まりだった。




「他マスターやサーヴァントとの交戦は俺が担うから、ルーラーは後方支援を頼む」

「なんのために私を呼んだんですかマスター!?」


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