各務チヒロの終着
他の三大校や連邦生徒会等が次々とサラダちゃんによって陥落する中で抵抗を続けて来たミレニアム・サイエンス・スクール。
しかしAMASの数さえも凌駕するサラダちゃんの物量に知恵の学舎は遂に落日を迎えようとしていた。
非公認部活ヴェリタスの副部長各務チヒロは部員たちを逃す為に奮闘するも迫りくる暗緑の怒濤に呑み込まれてしまうのであった。
~~~~~~~チーちゃん仕込み中~~~~~~~~
「……ロさーん」
ドロドロに溶けた頭にくぐもった声が響く。
「…ヒロさーん?」
快楽に焼き切られた神経がもたらす幻聴かと思ったそれは、なおも聞こえて。
「チヒロさーん、もしもーし?聞こえてるー?」
やがて久しぶりに見る光と共にはっきりと聞こえた。けど、それはここで聞きたくなかった部員たちの声で……。
心臓のように脈打つ暗緑色の肉繭がぐばりと縦に裂ける。
皮を剥かれた果肉のように中から現れたのは一糸纏わぬ姿の一人の少女。
肉繭の中で散々弄ばれた胸は乳を滴らせながらぼってりと火照り、摂生に気を遣って引き締まっていた腹はピンと張りつめた見事な孕み腹と化している。
トレードマークであったヘアピンも眼鏡も失い、濡れぼそった髪は頬へと張り付き、少女と女性の過渡期にあった肢体は内も外も隅々まで犯されて“女”として仕上げられていた。
かつてミレニアムに名を馳せたヴェリタスが副部長の、無惨な姿が其処にあった。
「ん゛ぁっ!?」
「おー、起きたね」
ぽんぽんと叩かれた肩から走った快楽に胸から乳を噴き出す無様さにチヒロは自身既に手遅れになっている事を自覚する。
ぼやけて見える目で見渡せば目に映るのは、あの時逃がしたはずのヴェリタスの部員たち。
これが救助に来てくれたのならきっと喜ばしい事だけど目の前にいる彼女たちは何も纏わず同じ粘液に塗れていて自分の行いが無為に終わった事を見せつけられるチヒロの心が軋み、
「ひぃっ♡」
それさえも快楽に無理矢理解きほぐされる。
後輩の銀髪の少女が彼女の左胸に吸い付いていた。
お気に入りのカフェイン飲料でも飲むかのように喉を鳴らしながら母乳を飲み干し、けぷっと喉を鳴らす。
丸みを帯びた腹には同輩の金髪の少女が耳を当て、真剣な表情で中の鼓動へ聞き入っている。
赤毛の少女に至ってはチヒロの秘所をくぱぁと割り開き、すっかり耕され尽くした中をしげしげと覗き込んでいた。
「やめてよっ、三人とも、どうして」
ただでさえ女としての尊厳を踏み躙られた中で追い討ちのように行われる凌辱と、それが守ろうとしていた部員たちに行われる裏切りに悲鳴が漏れる。
だがそれに対して三人は一瞬きょとんとした顔をして顔を見合わせ、そして得心がいったかのように手を打ち、笑顔で絶望を告げた。
「私たち、ママじゃないよ?」
「ママじゃ、ない?」
チヒロが目を見張った瞬間、彼女たちの三つ編みが、ポニーテールが、シニヨンが、一人でに動いて解けて蠢きだす。
ぼやけていた眼が彼女たちの眼の、髪の、肌に混じる緑の色彩を見い出し、ようやくチヒロは彼女たちが自身の知る仲間たちとは別物である事を認識したのである。
生徒と触手生物たちが(厳密には異なるが)交配可能である事はミレニアム失陥時には既に既知の事実となっていた。
ゲヘナの風紀委員長を皮切りにSRT、ゲヘナ、トリニティ等の名と顔の知られた生徒にそっくりな混血児たちが時間経過と共に現れ、戦況は刻一刻とミレニアムの不利へと傾いていったためである。
そして自身の仲間たちにそっくりな彼女たちがここにいるという事は……
「コタマたちは!コタマたちはどこにいるの……お゛っ!?♡」
思わず眼前の少女に掴みかかろうとするも尻穴から腸内に入り込んでいる触手に中を圧迫されて悶絶する。
「ママたちならあそこだよ、ちょうど私達を産んでお腹が空っぽになったから休憩中」
赤毛の少女に顔を無理やり持ち上げられて見れば、裸眼で霞む視界の向こうにアッシュブロンドの、銀の、赤の色彩の少女たちの姿が見える。
周囲の喘ぎ声に混じって聞こえてくる彼女たちの声はしっかりと記憶にあるもので、しかし快楽に溺れて挿入と種付けを懇願する雌のそれだ。
「そんな……」
自身の行いが結局無意味だった事実を突きつけられた絶望がチヒロの心に罅を入れる。
そしてそれに合わせるようにさらなる絶望が彼女を襲った。
バシャリという水音が股の間から漏れ、腹の中から響く鈍痛が気が遠くなりかけていた彼女を正気へと叩き返す。
「何…これ…」
「あ、始まったね」
何が、と言う言葉は口に出す前に銀髪の少女とアッシュブロンドの少女にぐいりと両腿を持ち上げられる。
排泄する時のような体勢に羞恥に顔を赤らめるが実際、チヒロの股の間からは液体が吹き出ていた。
尿ではない、しかし濁った液体。
まさか、と思う。
だが身体の内に感じる胎動、そして腹の上に浮かび上がったヘイローが示すものはそれを否定する。
自分も産もうとしているのだ、眼の前の彼女たちと同じようなモノを。
「や、やだ……」
涙と共に悲痛な声が漏れる。
問題児揃いのヴェリタスの部員たちの面倒を見ている姿を母親みたいと言われた事もあるし、自分でもそんな風に感じた事もある。
けれど、チヒロとてまだ多感な17歳の少女なのだ。
出産は普通に恋して、結婚したその先、まだまだ縁遠いはずのものだったのに。
「ママになんてなりたくないよ……」
けれど彼女の心とは裏腹に、身体は完全に母親の自分に屈服して産み落とそうとしている。
「やだぁ……誰か助けてぇ……」
「ダメだよチヒロさん、ほーら、ひっひっふーひっひっふー♡」
三人の混血児たちがチヒロの胸を揉み、陰核をつねり、出産の痛みを和らげようとする。
それに合わせるように膣内を擦りながらヘイローが下腹部へ、出口へと徐々に近づいていく。
必死に止めようとしても与えられる快楽の前に意味を成さず、そして……
「いやぁぁぁぁぁぁっ!?」
チヒロの悲鳴に合わせるように産声が響き渡った。
呆然とするチヒロの視線の先に彼女の股と太い臍帯で繋がった赤子の姿が見える。
人の赤子のように見えるが産毛等に彼女には無かった緑の色彩が見える辺り、やはり混血なのだろう。
「おぉ~、元気だねぇ。はい、チヒロさん」
赤毛の少女に抱えられたその赤子の口がそのままチヒロの胸に添えられる。
泣いていた赤子がちうちうと既に漏れ出ていた母乳を吸い始め、甘い快感がチヒロの虚ろになった胸の内へと染み渡っていく。
銀髪とアッシュブロンドの少女に赤子を抱きかかえさせられるも、身体はもうなすがままだ。
「良い飲みっぷりですね」
「そうだね。さてこの子どう呼ぼうか、いつまでもこの子だと変だし」
「そうだなぁ……あ、そうだ!」
母親を置いてけぼりにして三人の少女たちが喋っている。
「チーちゃん!この子のあだ名はチーちゃんだ!」
その言葉に停止していた思考が動き出す。
チーちゃん、それは彼女が親友に呼ばれていた……
「じゃあ、チーちゃんですね」
「君の名前はチーちゃんだ!」
チヒロの心中を顧みる事なく、赤子にそう語りかける少女たちを見てチヒロは乾いた笑いを上げる事しか出来なかった。
学び舎を、仲間を、純潔を、血筋を、そしてあだ名も、何もかも奪われた。
彼女の心は遂に限界を迎え、いつしか乳を飲み終えた彼女の娘の鳴き声と乾いた彼女の笑いがそこを満たしていった。
嬰児よ 嬰児よ なぜ泣く 母親の心がわかって恐ろしいのか