可愛くてハードだよ
2006年の護衛任務にて、補助監督の運転するワゴン車の中で藦人と実琴が話していた。
憧れの対象だった彼女と話せて上機嫌な藦人。
「なぁ、そのぬいぐるみは?なんか凄いテカテカしてるけど」
無為転変は実琴が手に持っているぬいぐるみに興味を示す。
![](/file/04bb479db1d5a7da1105a.jpg)
「これね、近接特化型エイリアン剣士の鋭利やんっていうキャラクターのぬいぐるみで〜…」
人間嫌いな普段の彼女ならば、のらりくらりと躱していたところ、彼を例外として扱っていたため快く教えてくれた。
「これ可愛いな。どこで手に入るんだ?」
「プライズ景品だよ」
二人の何気ない時間は日が落つる頃には二度と来なくなっているだろう。だが、そんなことは本人達どころかハンドルを握る補助監督ですら予想できなかった。あの男が来るとは…
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「あー…あの社長、非術師の女一人に一千万ってよ、相当ライバル事務所潰したいらしいな。あいつはあそこのトップアイドルなんだぜ?」
受話器から聞こえる声に男は顔をしかめる。
「わかってる、わかってる。顧客の詮索はするなってんだろ?安心しろよ、俺も野郎の事情には興味ねーからさ」
男は特徴的な刃をした短刀を握りしめる。
「そういや、今年の一年には魂を捉えないとダメージも与えられねぇって奴がいたよな?でもそれは術式によるもの、こいつなら魂と関係なしに殺せるんじゃねぇか?」