可愛いは正義

可愛いは正義


カルデアにやってきたドゥフシャラー(プリテンダー)は倍以上に増えた息子、娘達とその友に歓迎された。小さい息子も、大きい息子も、魔性となってしまった娘も、息子に眠る機構も、息子に愛され愛してくれた義娘も、自らにとって愛でる存在であった。

子どもたちを愛でること、それはガーンダーリーにとって何よりも優先されることであった。ドゥフシャラーと定義された体である上、カルデアのドリタラーシュトラ王は盲目ではない。ゆえに視界が閉ざされていないため我が子の可愛さを生前以上に知っている。本来のガーンダーリーとしての記録もシャクニの影響で有している彼女は、子供達を飾り立てても想像の内でしか楽しむことができなかった。ましてや女の子は一人だけで、嫁に行ってからはそんな楽しみもなかったのだ。ここでは自由に子ども達を飾り立てることができる。愛でることができる。

そして彼女は様々な文化が混じり合うカルデアで、知ってしまうのであるーーー男の娘の存在を。

衝撃であった。文化圏が違うだけでここまでの差が生まれることをガーンダーリーは思い知ったのである。そしてカルデアでは存在が許されている。そうであれば、楽しまなくてはいけないと、そしてこうも思ったのである。カッコいい服だけではなく可愛い服を、息子に着せたいとーーー。

そう、今はハロウィン、トンチキが許される季節である。そうして彼女はサークル「ハタオリヤ」の扉を叩いたのである。

 

 

「どうしてこうなった?」

スヨーダナ・キャスターは困惑した。紫の髪は編み込まれ、ハーフアップにされて青い色のリボンで飾り立てられている。白を基調としたワンピースは襟と袖はたっぷりとした布地の上にフリルとリボンで装飾されているが、上品に仕上がっている。スカートはパニエを二重に仕込んでおり腰からふんわりとしたボリュームが美しい。膝上丈のスカートの裾からは白いタイツとローヒールの白いパンプス、手には白い日傘を震える手で握っていた。

「スヨーダナ!さすが私の息子!!」

「テーマは春のお散歩、甘ロリに大人っぽさを詰め込むように仕立て上げました。」

「やはり私の目に間違いはなかったわ!」

「母上・・・」

「大丈夫!!みんな可愛いわ!!」

ここにいるのはスヨーダナ・キャスターだけではない。バーサーカーのスヨーダナ、マジカル⭐︎ヨダナ、ヴァスシェーナ、AIヨダナもいた。スヨーダナは異形の手足の邪魔にならないように青と黒を基調にしたポンチョを、尻尾にはアルジュナオルタの角と同じリボンが飾られている。マジカル⭐︎ヨダナとAIヨダナはお揃いのAラインのそれぞれ少し濃度の違う紫色のシンプルなロングワンピースと同系色の花の髪飾りでいつもよりも清楚になっている。ヴァスシェーナはスヨーダナキャスターと同じ系統の黒色、違うところはリボンは薔薇変わっているところ、スカートが足首あたりまである点である。

「チトラーンガダー、貴女のもスヨーダナとお揃いにしたわ。どうかしら?」

スヨーダナと揃いのアルジュナオルタの色彩のポンチョを戸惑いながら握りしめている。フードにはアルジュナオルタの角を模した飾りもついていた。

「わ、私まで、い、いいのだろうか?」

「もちろん!!別の私が奪われた我が子。ともにいることができなかったとしても私が母であることは間違いがないわ。でもカルデアで、ようやく芽生えたあの子が選んだ母は貴女だわ。母親が二人もいるなんてお得でしょう。私とも仲良くして欲しいわ。」

「・・・ありがたく頂戴する。」

「さぁ、シュミレーターで撮影会をしましょう!!」

 

このあと写真会をしました。

 

大人組は素ヨダナたちは礼装にもなったスーツ、ドゥリーヨダナ・オルタは和物の着流しをどうにか着れるようにカスタムしたもの、偽王はファー付きの外装とスーツ、スヨーダナ・オルタは神父、ループヨダナは本人と黒猫ちゃんと相談した結果黒い猫耳パーカー(大きめ)をすでに与えられています。百王子、ドゥフシャラー、ユッダについても色々と用意したようです。

 

 

余談 ハタヨーダナとラフティーヨダナとハロウィン

 

「スヨーダナ・キャスターだ。入っても良いだろうか?」

ヴィサーヤの部屋の扉が開く。中にいるのはプリヨダナとラフティーヨダナ、そして部屋の主人のヴィサーヤであった。

「どうしたんだい?スヨーダナ。ラフティーに用かい?」

「ああ、最近厄介な奴がまた増えただろう。」

「貴方のせいではないわ。勝手に暴走する方が悪いのよ。」

「ああ、わしさまもそうおもう。」

「あれ以外にも厄介な奴はいるからな。もしよければこれをもらってくれ。」

スヨーダナ・キャスターの掌の上には薄い紫に光る蓮の花があった。

「俺の魔力の結晶になる。宝具の余剰魔力だから気にしないでくれ。いざという時の魔力リソースになる。」

「それは私にね。」

「ああ、ラフティーにはこれをどうかと思ってな。」

次に現れたのは蓮の花だが、テクスチャーが前のものよりも簡素で厚みのないものであった。

「用途が違うんだ。こう、相手に意思を持って押し付けることで花びらがしまって相手が閉じ込められる。長くは持たんが逃げる時間は稼げるだろう。」

「わしさまが、もらっても、よいものか?」

「嫌でなければ、無理にとは言わん。不安ならプリヨダナに持ってもらっておけ。」

「いや、うれしい、とおもう。」

 

コツコツ

 

ヴィサーヤの扉を突く音がする。プリヨダナとラフティーが頷く。

「入っておいで。」

「失礼する。ん、取り込み中か。」

「俺は構わない。むしろ俺がいて良いか?」

「当機構は問題ない。」

その手には肩に乗るガルダと同じ色の羽で飾り付けられた一対の翼があった。

「ラフティー、これを。」

「?」

「ガルダの抜けた羽で作った、背負えるようになっている。」

「?」

「ハロウィンだね。欧州のイベントのはずだが、カルデアでは何やら面白おかしいイベントになっているようだね。」

ヴィサーヤがハタヨーダナの行動について説明する。

「はろうぃん?」

「魔除けのお祭りだけど、今は子供達が仮装してお菓子をもらうイベントだねぇ。」

「おまつり。」

「マスターから、ハロウィンは魔境だと聞いた。ネジが飛ぶ輩も多いと聞く。ヴィサーヤの部屋から出ぬことが良いだろうが、当機構にもできることがないか考えたのだが・・・」

その結果が仮装である。制作にはガーンダーリーも関わっている。ヴラド卿にもアドバイスをもらっていた。

「ガルダのはね、だいじょうぶ?」

「・・・当機構がどうかとガルダに尋ねたところいつの間にか大量の羽に埋もれる結果となった。ガルダのものであることは間違いないとガルダにも確認している。」

ガルダはその翼を大きく広げて無傷を主張している。

「ガルダとおそろい。」

「ど、どうであろうか?」

「うれしい、とおもう。」

両手で優しく羽に触れるラフティーヨダナは初期に比べれば柔らかな表情をしていた。

「ハタヨーダナ、羽が余っているならお揃いにしたらどうだ?」

「当機構はイベント該当年齢から逸脱しており不要である。」

「・・・」

「どうしたい?」

ゆっくりと言葉の先をヴィサーヤは促す。そうして出てきた言葉はささやかな我儘であった。

「おそろい、いや?」

「当機構も同じものを作ろう。」

「そうか、ではお揃いということで。ハロウィンではユッダとともにスヨーダナたちの保護者をしてくれ。よろしく頼む。」

「ま、任された。」

 

というわけでハタヨはガルダの仮装になりました。

 


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