反逆の戦士“邪智暴虐の王”の素顔
※注意※
・ラクレスを気に懸けるヤンマ(リタとジェラミーもラクレスを気遣っている)
・ヤンマとラクレスは左右が確定していない(というか恋愛未満)
・Hなし色気なし
「知らなかったとは謂え悪かった」
ヤンマはラクレスに詫びた。
17年間、ラクレスが隠していた真実。それがコーカサスカブト城にて本人の口から改めて明かされた。
ラクレスの真意を知った上でこれまでの彼の遣り口を思い起こせば…合点がいく。
「! 否、私の方こそ…申し訳な … 「謝んな」
頭を垂れ掛けるラクレスを制す。
「こんな、重大な策…ぺらぺら話せる訳がない。
どっから洩れてダグデドに知られるかわかんねェし…聞いてみたところだいぶ綱渡りな作戦だ、一つでもミスったら全て終わる。
独りでやり切るのは無謀だとしても協力を頼むなら信用できる――この計画を成功させる為の信用ができる奴に限る。とすりゃ…立ち回りが色々巧いカグラギしかいねぇ。例えば俺には意地があるからな、たぶん途中でブッチしちまう」
で、返り討ちに遭うか…よくて相討ちだな…と最悪なシナリオが頭を過りつつ、ヤンマは続ける。
「お前が共謀者にカグラギを選ぶのは当然だ」
「…!!」
ラクレスが瞳を大きくする。
こいつ、こんな面もすンだな。――ヤンマは心の中で呟いた。
「だから、今まで黙ってたことは謝るんじゃねーよ」
「お前さん、こんな重いもの…17年間もずっと背負ってきたんだな」
ジェラミーがそっと言葉を掛ける。…2000年間、人とバグナラクとの仲を取り持とうと奔走した彼には思うところがあるんだろう。
「ラクレス・ハスティー…いかなる事情があろうと、おまえの罪は消えない。情状酌量の余地はあるが、おまえが多くの民を傷つけ、世界に混乱を招いたのは事実。私は法に則り、おまえを裁く。
だが、いまはこの星に危機が迫っている――正に、異様事案だ。民の命を優先する。
おまえの審判は…ダグデドを倒し世界の平和を取り戻した後に下す」
リタが淡々と告げる。
「よし!そんじゃ俺、ダグデド達をブチのめす作戦 考えるわ」
奥の部屋 借りるな?と言い置いて、ヤンマはその場を去る。
しばらくして、トントントンと扉を叩く音がした。
「あ?」
入ってきたのは――ラクレス。
「何の用だ?」
「作戦はどうなっている」
「大方は固まった」
「そうか。それで…」
どういうものだ?と更に問うラクレス。その表情は真剣だ。
そんな彼を一瞥して、ヤンマは概要の説明を始めた。
ラクレスは熱心に耳を傾けている。
「…と、大体の流れはこんな感じだ」
「そうか…」
ヤンマは一通り話し終えるとラクレスをまじまじと見つめた。
「?なんだ」
ふっと口許を緩めてヤンマは言う。
「やっぱ、兄弟だな。お前、ギラと似てるよ。…否、あいつがお前に似たのか」
―――ギラ(あいつ)がなりたい王の姿はラクレス(こいつ)なんだろうな。
だから、
「死ぬなよ」
「っ、」
「リタが言ってたろ、全部 片が付いたらお前を裁判に掛ける。つまり…――生きろってことだ」
「!」
「公正中立な裁判長がきっちり審判してくれると思うぜ。…情状酌量の余地ありの、な」
ヤンマはニィと口角を上げる。
すると…
ラクレスが一瞬ふわっと顔をほころばせた。
―――こいつ…こんなふうに笑うんだ…
すぐに、そうか…と返していつものお堅いラクレス王に戻ってしまったことを残念に思いながら、ヤンマは
「邪智暴虐をして“シュゴッダム史上最悪の王”の汚名を被って死ぬなんてのはナシだからな!」
ラクレスの胸に拳を突き出した。
「そんなの、カッコよすぎんだろーが…」
相手の顔を覗き込むように鋭い眼差しで窺う。
ラクレスはヤンマが叩きつけた拳を掴み、
「わかった」
一言、たった一言、応えた。
そして、
ふたりは互いに不敵な笑みを浮かべるのだった―――。