双翼は色香に耽る
???──居住スペース 春の部屋
「あの、春…?」
部屋に入るなり、自分を抱えてベッドに乗っかった春を見つつ、多少困惑した顔をする。
「…沙紀ちゃん」
「?…はい」
「……まだ互いに相手すらいないのに、こんな事言うのはアレなんだけど…その」
「…同衾、して…欲しい…なって」
「っ!?」
友人の口から出た意外な言葉に思わず拍子抜けする。
「ど、どうしたんですか。急に」
「…あの記憶を思い出した時から、ずっと変な調子でさ。勿論、その場凌ぎにしかならない事だって分かってる。…けど」
「……同じ痛みを知ってるのは、沙紀ちゃんしかいないから」
「っ…!」
「瀬那ちゃんとか美世ちゃんとかもいるけど、あの子達はどっちかっていうと完全にオリュンポスの被害者側だからね。…だから、どうすればいいのかな〜ってずっと悩んでて」
「春…」
「…お願い、沙紀ちゃん」
「──“共犯者”って、事でここは一つちょっと頼まれてくれない?」
その笑顔は普段は考えられないくらいに、悲しそうで、辛そうで、痛々しげで。
そんな顔は、見たくないから。
だから。
「…分かり、ました」
「ありがと、ね。…それと、ごめん」
「いえ、気にしなくていいんです。…ほら」
春が部屋の鍵を閉めたのを確認してから、そっと両腕を広げると十年来の友人はそのまま抱きついて、ベッドに半ば自分を押し倒した。
そこから互いに慣れないながらにキスをして、服に手をかけて、その後は──