参考までに
してほしい「……ロシナンテか。あぁ、殺したよ」
七武海として集会に応じた男は信じがたい言葉を吐く。
「なにを馬鹿な……!」
「もう三年前になる」
「っ……‼︎」
確かにロシナンテからの連絡は途絶えたのは三年前。二年前には実質No.2の地位である“コラソン ”を名乗る男がロシナンテから変わったという報告も受けている。
しかし三年前から一年。ドンキホーテ海賊団は奇妙な沈黙を保っていた。
一年の奇妙で不可解な沈黙を破って現れたのは、かつてとまるで違う戦い方を身につけたドンキホーテ・ドフラミンゴだった。
曰く、何も無いところで転ぶようになったという。
タバコと共に自分に火をつけるようになったという。
不気味な程に上がっていた口角は滅多なことでは上がらなくなったという。
挙句、目の前の“ドンキホーテ・ドフラミンゴ”は、己の聞き知った声をしていた。
自分にわからないわけがない。
この男はドンキホーテ・ドフラミンゴではない。
けれど、彼のサングラスの奥の瞳は異常なまでに暗く澱んでいる。まるで嘗てのドフラミンゴそのもののようだった。
「馬鹿を言うな、ロシナンテは……」
「その男は、おれが殺したよ」
男は自分の言葉を遮るようにきっぱりと言い切る。
その声も口調もなにも変わっていないというのに。
一体何があったというのだろう。
理解しがたい現実を突きつけられ、ただ愕然と彼を見上げることしかできなかった。
何故お前が、その名を名乗る。
──ロシナンテ。
きっと自分の絶望に似た驚愕は目の前の男に確かに伝わったのだろう。サングラス越しの視線が一瞬逸れる。
「M・C 01746」
小さく呟かれるマリンコードは彼のものだ。だが、その口で彼は決定的に決別を告げる。
「海軍本部中佐ロシナンテは処分した。もういない。──残念だったな、センゴク元帥」
暗い目をして海兵を睨みつけ、忌々しげに吐き捨てる。
そこに居るのは「海賊」だった。
「“若様”、早く戻ろう」
コラソンが“ドフラミンゴ”を呼ぶ。
踵を返し、自分からさっていくその背中を引き止めることはできなかった。