厳冬の夜を照らす光…それは正に、

厳冬の夜を照らす光…それは正に、

ここだけゾロがルナーリア族Part2の145

※閲覧注意

※【ここだけゾロがルナーリア族】のスレより

※ゾローリアの更にIFネタ

※ファンタジスタした幼少ゾロがキングに拾われ百獣海賊団所属√

※幼少ゾロはくいなと約束する前

※くいな生存&麦わらの一味√

※CPはゾロ×日和

※IFネタの派生⇒百獣√

※キャラエミュが微妙

※文才なしの駄文

※捏造設定あり

※それでも良い方のみ、お読み下さい



































兎丼の採掘場からおれも含めた数十人の囚人達が移送される事になった。

移送される中には鎖で動きを封じられた、河松のやつも居て。

いよいよ処刑でもする為に移送されるのだろう…そう諦めの境地であった。


しかし…。


「…此処、は…」

移送先で息を呑む。

オロチの膝元である花の都では無く、雪の降るこの場所は…鈴後の郷で。

それも、囚われる前に見た花の都よりも華やかで賑やかな郷の姿。

「此処は、鈴後の郷でござる」

そう言って囚人達の手錠や鎖を恭しく外していく者達は、かつての侍と変わらず腰に刀を差し実戦の為に鍛え上げた肉体を持つ…屈強と名高き鈴後の侍達であって。

 「さぁ、こちらに湯を用意しております」

 「湯浴みが終わりましたら、着替えの為の着物のご用意も」

 「着替え終わりには、昼餉のご用意も御座います」

そんな事を口々に言い、侍達に混ざっていた女衆が案内をする。

何が起こっているのか理解が追いつかず、いや…夢でも見ているんじゃねぇかと思いつつ、流される様に湯で身を清め、真新しい着物に身を包み、用意されていたまだ温かい昼餉で腹を満たした。

ようやく落ち着いたのか、よくよく周りを確認すれば、連れてこられた囚人は一様にオロチに対して反抗して囚われた者達だったのだ。

「何が起こってやがる…」

ぽつりとそう呟けば、周りも困惑したままざわついた。

「此処を鈴後だと言っていたが…」

「…しかし、あまりにも…」

「…もしや、我等は死しているのでは」

「不吉な事を!…いや、そう申すのは理解できるでござるが…」

不安と困惑が入り混じった言葉は、不安を大きくするのを助長する。

 「コン!!」

不安を払拭する様な、鳴き声が聞えた。

鳴き声の方を見やれば、いつから居たのか、真白い狛狐の姿があって。

それに目を見張ったのは、おれも河松も同じで。

「おぬし、オニ丸か!?」

そう、その狛狐は、鈴後の大名たる霜月牛マルの相棒だった。

狛狐は…オニ丸は1つ頷き。

 どろん

僧兵の姿へと姿を変える。

そして、我等にこの鈴後で…ワノ国で起こっている事を説明したのだ。





「なんと…鈴後の大名・霜月牛マルに又甥が…それも、霜月の大姫フリコの孫かぁ」

己より強い男でないと嫁ぎたくないと豪語し、どんな男衆よりも剛胆で大人にも勝るとも劣らない一刀の使い手…大名の姫ともなれば淑やかさと優美さを求められるワノ国は狭過ぎたのか、コウ三郎と共に国を出奔した霜月の大姫フリコ。

その姿を思い出し、孫がいるという事は…外海にて強い者と出会えたのか…。

「しかし、まさか…カイドウの配下、それも大看板など…」

河松が顔を顰めながら言う。

確かに、そこだけは解せない。

「ふふっ…オニ丸の予想通りな反応だな」

不意にそんな声が聞こえて、慌てて声の方を向く。

そこには、1人の若者が気配もさせずに立っていて。

黒衣を纏い紗の布で口元を隠す、その若者は…髪色こそ違えど、霜月牛マルに瓜二つで。

この若者こそが、大姫フリコの孫であり、カイドウ配下の大看板なのだと理解した。

「…1人で危ないとは思わなんだか?」

周りに百獣海賊団の部下らしき存在も無く1人でこの場に来ている様子に、思わず問うていた。

「…?…鈴後の土地で、危ない…おれが?」

きょとんと不思議そうに首を傾げる姿は、随分と幼く見えて…危機感の無さに頭を抱える元囚人達が続出した。

おれや河松ですら頭を抱えたのだから、相当だろう。

「ワイルド様…言葉の途中を抜かさぬ方が宜しいかと」

おれ達の様子を見たオニ丸が、首を傾げている若者に言う。

「?…鈴後の土地で、おれに仕えてくれる侍達が居るのに、危ない…弱肉強食を謳う百獣海賊団の中ですら武闘派だと呼ばれている、おれが?」

それを聞いて、更に頭を抱えたくなったのはおれだけじゃなかった様だが…あの百獣海賊団の中でも強いのだという自負が、1人での行動に現れているのだろうと思う事にした。

「…それで何故、此処におれらを集めた?カイドウの大看板であるお前さんが」

改めて、おれらを集めた理由を問う。

「確かに…おれはカイドウさんの大看板だ。だが…民を虐げるオロチはワノ国に必要ない」

答えを聞いて、思わず耳を疑う。

オロチとカイドウは協力し合っているのでは無かったのかと。

「なっ?!」

「カイドウ配下が何を言うか!!!」

激昂した様に吐き捨てる者を止める前に、若者は口を開いた。

「…オロチを廃した後は、ワノ国にて百獣海賊団の無法を許さないと、カイドウさんに確約を貰っている…と言ったら?」

「「「「ッ!?!?」」」」

言葉もなく絶句するとは、こういう事か。

大看板という地位にいる者の言葉でなければ、戯言だと、巫山戯るなと言えただろうに。

だが…目の前にいる若者は、紛う事無く大看板の1人で。

「鈴後の土地と同等の扱いをしても良い、との確約もだ」

「…それは…」

「百獣海賊団に…カイドウさんに仇なさなければ、光月の者であろうと受け入れる」

淡々と話される内容に、嘘偽りは読み取る事は出来なかった。

「………」

沈黙するしかない我等に、若者は優しい口調で続けた。

「…ゆっくり考えてくれて構わねぇよ。鈴後の郷なら、自由にしろ…流石に他の郷は、オロチの支配下だから止めた方が良いがな」



それから十日程、我等は鈴後の郷を自由に見て回った。

郷は、何処を見ても夢の様な暮らし振りで。

飢える事も凍える事も無く、病で苦しみ抜いて死ぬ事も無い…家族が理不尽に奪われる恐怖も味わう事も無い。

そんな普通だが、オロチ支配下では望む事が出来なかった…そんな光景があった。

あの若者は、元々の鈴後の民だけでは無く他の郷の民達をも受け入れており…彼等からしても、この暮らしは天国の様だと言う。

若者の事を聞けば、皆が口を揃えて善き若い領主であると…脅されているのかと疑う者があれば、笑ってそんな事は無いと優しい方だと逆に説得される始末。


更に、十日程経った。

霜月の若様は、随分と民との距離感が近しい方の様で…御八つを子供らと一緒に食べたり、生まれたばかりの赤子を抱いてくれと頼まれて快諾したりしていた。

それに、風邪をひいた老人に薬や滋養のある食べ物を自ら届けたり、剣術の指南を男衆に頼まれて指導している事もあった。

その姿は、理想ともいうべき民を慈しむ大名の姿で。

悩む我等に、オニ丸が若様の事を話してくれた…オニ丸も鈴後の領主となってからしか直に知らないとの事だったが、本人の口から聞いたのだと。

幼い頃に外海で“人攫い”からキングに保護された時の事や、“世界政府の手の者”から守る為に生まれた村に帰れなくなった経緯を…そして、キングが家族を全て亡くしていた若様の養父になり、カイドウに身内として受け入れられた事を。

我等が知らない、百獣海賊団の姿が語られた。

若様が民を助けたいと望まれたから、鈴後の土地と民をオロチから救ったのだと。

何故…と思った。

何故、おでんの時にその優しさを出してはくれなかった…と。

しかし、身内だからなのだとも…理解していた。


また、十日程経った…あれから、一月だ。

オロチに見つかる可能性があったが、若様の百獣海賊団の仕事に連れて行って欲しいと頼み込み、おれと河松と数名のみが許可された。

若様は、ワノ国の民に見せる顔とは違う顔を見せてくれた。

鈴後の土地では被っていなかったフードを被り、穏やかな笑みは消えていた。

敵を容赦無く斬殺す、冷徹なまでの対応を。

しかし、部下達が死なぬ様に立ち回っているのが理解出来て…根本的な部分は変わらないのだと。

戦う時の所作が、霜月牛マルと瓜二つであったのも、我等が確信し、覚悟を決める要因であったが…。




「「「我等一同、ワノ国と若様の為に」」」

我等が揃って、霜月の若様に伝えれば。

「あぁ、よろしく頼む…ワノ国の、民の為に」

闇に射す月明かりの様な柔かい笑みを浮かべて下さったのだ。




黒炭オロチの支配という厳冬の夜を照らす、ワノ国を救う希望の光…。


それは正に、〝霜月(そうげつ)〟の如き“霜月(しもつき)”の侍である。


そう、我等は確信したのだから。



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