(単発SS)(我も酔った無邪気系女王様兄ちゃに脳を破壊されし者)

(単発SS)(我も酔った無邪気系女王様兄ちゃに脳を破壊されし者)


「なぁ、犬が俺の前でいつまで二足歩行でいるつもりだ? さっさと跪いて四つん這いになれよ♡」


いつも宝石のように温度の無い冴の瞳がとろりと熱に潤み、頬と唇は薔薇色を帯びる。

 摂取したアルコール量が一定値を超えた合図だ────マゾ犬どもは期待していた無邪気な女王様のご降臨にごくりと生唾を飲み込み、中には早くも下半身をビンビンにさせている者もいた。

勝利の打ち上げに使われているこのバルは貸切。一般の客に迷惑をかけることはない。そして店主も冴の魅力にやられたマゾ犬の1匹だ。

「っていうかぁ、俺ペットに服着せるタイプじゃないんだけど。何でお前らそんな格好なの? さっさと脱げよ、女王様の命令だぞ♡」

 そこが玉座であるかのようにカウンターテーブルに座って脚を組み、グラスに入ったワインを煽りながら、冴は上気した美貌で艶っぽい声を吐き出す。

 糖衣でくるんだ甘言に尻を打たれ、マゾ犬どもは性的な興奮でキャンキャンワンワン鳴いて地面に手足をついたり服を脱いだりし始めた。

それら下々の畜生どもの動きを見下ろして、付け合わせのラズベリーを舌で転がしけらけら笑う冴の姿には下品と色香の紙一重の壮絶な蠱惑がある。

「そこの犬が1番に俺の言うこと聞けたな♡ ご褒美だ、這いつくばって口を開けろ♡」

 数いる雄犬どもの中で真っ先に全裸になりみっともなく獣じみた体勢で犬の吠え真似をしていた男に、冴は満足そうににんまりと目を細めて彼の喜ぶ物をくれてやる。

つまり、今まで冴が口を付けて飲んでいたワイングラスの中身だ。サービスとして口の中に残っていたラズベリーの果汁も唾液と一緒に入れてやると、それを見ていたマゾ犬どもの視界が欲情で桃色に煮えた。同時に、あの素晴らしいご褒美を与えられる栄光が自分には無いことを歯噛みして悔しがる。

 受け取ることを許されしマゾ犬は、もはや脳内麻薬で夢を見ているような蕩けきった眼差しで口を開けてハッハッとその瞬間を待ち侘びていた。

「ほーら♡ 女王様の特製カクテルだぞ♡ たっぷり味わえ♡」

 わざわざ歩み寄って下さった女王様がマゾ犬の眼前で妖しく囁き、指先で回していたワイングラスの中身を男の顔の上でひっくり返す。

 それを飲み込むたびに蕩けていく。理性が、品性が、知性が。ついには人生さえも。


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