(単発SS)(これやるから股開けよグヘヘ系の金持ちをマゾ犬にする15歳くらいの兄ちゃ)
冴の桜色の爪が、男の汗が浮いた頭髪を撫でる。
「それで? これっぽっちのガラクタと引き換えに、俺に花を散らせって?」
もちろん足の爪である。
男はホテルの床に額を擦り付けていた。冴は足を上げることでそれに応えている。黒いドレスのようなロングニットカーディガンから露わになった白いスキニージーンズの脚線美が、鏡餅みたいに丸まった背中に移動して踏みつける。
腹のたるんだ男の喉から発せられるのは苦悶か、快感か。冴にはどちらでもいい。マゾ犬どもには等しいことだ。
「随分とまあ安く見られたもんだな。ひい、ふう、みい、よお……5000万円分くらいの宝石のアソートか。色が緑と青ばっかなのは俺の目に合わせてんのか? だったらブルーダイヤモンドかグリーンダイヤモンドくらい用意して見せろよ、貧乏人」
男の背骨が瑞々しい脚の下で軋む。
ぎちぎちと音を立てるそれの傍ら、キングサイズのベッドの上に散りばめられた宝石たちを見下すように眺めて、冴は声色に侮蔑を乗せた。
この男は。是非パトロンになりたいと試合終わりに冴へ声をかけ、このスイートルームの鍵を渡して来たどこぞの社長は。あろうことかたかだか1億円の半分の価値しか無い宝石などで、糸師冴の処女を買えるつもりだったのだ。
己の悪評は承知の上。向こうは処女どころか、百戦錬磨の高級男娼の一夜を買い求めたくらいのつもりだったのかもしれない。だとしても5000万円で股を開くと思われていた事実は変わらない。これを許せるほど糸師冴のプライドは低くなかった。
「あっ、申し訳ありませ、んっ」
「喘ぐな。豚の鳴き声なんて不快なだけだ」
上擦った嬌声を漏らす男を言葉で鞭打つ。
女王様。女王様。と男は歌うように絶叫した。さっきまで冴くんなんて呼び方で肩に手を置いてきた癖に、ちょっと相手してやればすぐにコレだ。
シャンデリアの光を若い肌が弾いて、冴の白い素足がぬらりと艶めいて映る。背中の重みと痛みが抜けて眼前に差し出されたソレに、男は唾液を顎まで垂らした。
「豚の舌は何のために付いてる? 犬より馬鹿でも流石にわかるだろ?」
「はい、もちろんです女王様!!」
「喋るな豚野郎。先に仕置きだ」
調教開幕のチャイムのように、蹴られた豚が悲鳴を上げた。