千刃、襲来

千刃、襲来


 

 

 

 

「マーロウ船長、こちらに近づいてくる船があるポス」

 

「ン?」

 

 

 火輪・ヴァルツ・マーロウ率いる赤翼海賊団がのんびり次の島へ向かっているときだった。見張り番のラポスが所属不明の船の接近を知らせに来たのでそちらの方向へ望遠鏡を向けのぞき込む。見えてきたのは確かに船だ、そしてマストの上の旗を見ると

 

 

 

「ドクロの旗……海賊だな。しかしあんな旗見たことないぞ?」

 

「船長、どうするポス?」

 

「一応戦闘準備だ、船をあの船に対してナナメになるように向けろ。反撃と逃走どちらでも出来るようにしておけ」

 

「アイアイ船長ポス」

 

 

 

 マーロウは横に置いていた武器を装備しいつでも飛び立てるように準備しておく。と、望遠鏡は海賊船の背後に迫る船を捉えた。それを見た瞬間マーロウは汚い言葉を吐き捨てる

 

 

 

「やられた!! トレインだ!! 全員戦闘準備、あのクソ船が海軍の軍艦をトレインしてきやがった!!」

 

 

 

謎の海賊船の後ろには海軍の軍艦が迫っていたのだ。自分たちも賞金首だ、海軍に見つかったら迎撃するほかない。程なくして三つ巴の戦いが始まるかと思われた。が、様子がおかしい。どうやら海軍の方が一方的にボコされているようだ。

 

 

 

 

「キャハハハ!! 情けねぇ声上げてないでもっと愉しませてよ!!」

 

 

 青空に華麗に舞う金髪の美少女が海軍を次々と倒している。腕と足の一部が人の物でないナニカに変化している。腕が変化した翼は鋭い刃のような鱗が連なって形作られており、その翼で海軍の振りかざす剣を真正面から受け止め、真っ二つにしている。膝から下も同じような鋭い鱗と刃物のように薄い鈍色に輝くツメが生えており、空中を凄まじい軌道を描きながら縦横無尽に舞うように海兵を次々海へ蹴り落している。

 

 それだけでなく、自分ともなにかシンパシーのようなものを感じとった。間違いない、彼女も動物系怪物種の能力者だ。この勢いなら何もせずに決着が尽きそうと思って静観していると、軍艦の砲塔が一つ彼女の方へ徐々に砲口を向けているのが目に入った。マーロウは個人的に海軍が勝つのが死ぬほど気に入らないため、砲塔へ向けて強めの火炎弾を放つ

 

 

「陽炎弾(バレット・プロミナス)!!」

 

 

 放たれた火炎弾は見事砲台を吹き飛ばし、さらに火薬に引火し大爆発を起こした。それに気付いた金髪の少女は火炎弾の発射された咆哮を見てニヤリと笑う。そして海兵たちが怯んだスキに大きく飛び上がり、腕を天へ向けて真っすぐに掲げる。すると刃のような翼が赤黒く染まり(おそらく武装色の覇気だろうか)、チカラを増す。

 

 

「アタシらは死んでもお前らになんか屈しない、これがアタシの答えだ!!!

 

 

DIE・SET・DOWN!!!!!」

 

 

 腕が振り下ろされた瞬間、海軍の軍艦は振り下ろされたところから真っ二つに綺麗に切断され沈んでいく。海兵がてんやわんやで海へ飛び込んでいくのを見届け、二隻の海賊船はその場を離れた。

 

 十分距離をとったところで少女が大きく跳躍し赤翼海賊団の船へ飛び移ってきた。敵か味方かもわからない船に乗り込んで縁に仁王立ちする威風堂々たるその姿は己の強さの自信の表れだろう。

 

 

「こちら千刃海賊団船長、エジェス・セピア!!! 先ほどの援護ありがとう!! 話がしたい、船長を出せ!!」

 

 

 腕は刃翼のままで露出の多い服装、とくにホットパンツから覗く健康的で程よい質量の太腿はそこそこたわわな胸部よりも目を引く。少々乱れてはいるが美しい金髪に傲岸不遜な笑みを浮かべた口元から覗く犬歯が彼女の何とも言えない魅力を漂わせていた。

 

 

 

「僕が船長だ。赤翼海賊団の船長ヴァルツ・マーロウ」

 

「お、アンタがさっきアタシを助けてくれたんだな! ありがと!! アタシはセピアだ!」

 

「どうもセピア。僕は海軍が勝つことだけは許せなくてね。僕の八つ当たりも兼ねてるからいいよ。むしろおせっかいだったかな? って思ってた」

 

「いや、アタシたちもワザじゃねぇとはいえトレインしちゃったし、ワビを入れたいんだケド……それはそれとして、アンタなかなかいい男じゃん! アタシの好みだ!!」

 

「……は?」

 

 

 余りの速度で話題の方向性が斜め上にスッ飛んで行った為マーロウは一瞬ポカンと口を開けて呆ける。その間にセピアは縁から飛び降り、不敵な笑顔を浮かべながらズンズンとマーロウへ迫る。その勢いに何となく押され後ろへと下がるマーロウだが、セピアは知ったことかと言わんばかりに距離を詰める。

 

そして遂に壁際へ追い詰められたマーロウ。何が起こっているか未だ処理が終わっていないマーロウをよそにセピアは壁に手をつき、股の間にその魅力的な太腿を挟み込ませ完全に逃がさない形へと持っていく。そして

 

 

 

 

 

 

「……っはぁ……悪いけどサ、今アタシ達ビンボーでなんも上げられるもの持ってないんだよね。だからアタシの初めてをあげる。ホントなら全部上げてもいいけど、やっぱ初対面って考えると、サ?」

 

 

 どこか鋭いナイフのような印象だった彼女が花も恥じらう乙女のように薄く頬を染める姿はその場にいた船員全員を気ぶらせた。

 

 

「「「「FOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!」」」」

 

「アタシ、ホンキだから。今はちょっと急いでるからダメだけど、次会ったらもっとお話しよ? じゃあねマーロウ!!」

 

 

 殺伐としたこの世界の海、たまにはこういう恥ずかしくなるような話が一つくらい転がっていてもいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「船長、船長(ペチペチ)。駄目ポスね。しばらく再起動はしそうにないポス。流石サクランボ型の悪魔の実、名実ともにチェr ボフゥ?!」

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