十二番隊襲撃事件:滅却師サイド
稲生・紅衣・メメ・虎屋のスレ主その日は俺にとってある種スッキリした気持ちでいられた日だった。
まぁその後が大変だったのだが...
俺は見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)の十二番隊監視係として任務を全うしている、まぁこの部署はやりたい奴なんて破綻者以外居ない...理由はお察しである
俺はもちろん破綻者ではないので毎日憂鬱な気分で混血だの純血だのを含んだ滅却師達が拷問死をしていく様を眺めて記録していた
だがその日はいつもとは違った、運び込まれたのは現世から"生きたまま"連れてこられた混血滅却師であり志島と名乗っていた点だった
頭の片隅であの殿下がよぎったが口調からして、いわゆる一般的な人間に近い様子から仮に分家筋でもあの殿下たちの志島家とはもはや別種と言えるほどの遠縁であろう
「あぁこの子も無残に死ぬのだろうな」
まぁ結果は違ったのだが
「そうか...君がその日十二番隊の監視を担当していたんだね 詳細を聞かせてもらえるかな?」
「わ...わかりました 殿下」
事が起これば報告が待っている
今回は事が大きかったので末端の俺すら呼び出される始末である...最悪だ
足が竦むがこの場には陛下、殿下、ヨルダ様、リリー様、ハッシュヴァルト様...なんだが目で追っていると殺されそうなのでさっさと報告を終わらせてしまおう
「私がその日見聞きしたことをまとめますと──死神はただの人間に敗北しました」
その日起きたことをまとめよう
少女の身を案じて打ちひしがれていると一部計器が反応した、それと同時に十二番隊の連中が藻掻き苦しみだしたのを見た
一人は「火が!」と言いながら転げまわり挙句の果てには水槽に飛び込み窒息寸前になりながら潜っては一瞬息継ぎをするのを続けている
一人は何やら喚き散らしながら殺虫剤を自身にふりかけ挙句には体中を搔きむしる
一人は...もう書きたくもないような地獄絵図を自ら作り出す様子があちこちでみられた
ここら辺まで来てようやく正気に戻った俺は上司に報告して現状を話した...どうやら先ほど計器が示したのは侵入者の一人が何らかの能力を使用した際にその霊圧を感知した結果であろうと上司が推測していた、それを聞いて再度計器を入念に見ている内に随分と虚弱な反応が多数あると気づきそちらにカメラを移す
映ったのはもうなんというか普通のおっさんおばさん年寄り子供である、ついでに言えば生きている者や魂魄だけの者が混在している始末であった
「いや...なんで現世の人間がここにいんだよ」
状況に振り回され続けて独り言を言うぐらいしか出来ないままであったがそいつらの一部が妙にでかい荷物を持っておりそれを無造作に置いていって変えていくのが見えた
場所によっては十二番隊に平隊士と交戦し見事な格闘技で平隊士たちを気絶させている所までありもう何が何やら分からなかった
そして最後には先ほど置いていった荷物が爆発し十二番隊隊舎が爆発した...爆発の際に大部分の計器や記録端末が破損したが残っていた画面に志島家の女の子がなんだかラブコメな雰囲気を醸し出しながら青年の駆るバイクに二ケツしてどこかに行くのが見えた なんだか妬けたが二人とも幸せそうだったのでOKです───以上ですね
実際にはもっと畏まった感じで話したが計器や記録端末の故障により顛末が不確かだった部分は話せたはずだ...早く帰りたい
そう思っているとハッシュヴァルト様が陛下に質問した
「陛下...先ほどの志島家とカワキとは...」
「先ほどの混血の志島家は私にとって裏切り者である およそ900年ほど前の大戦にて己の命可愛さに現世へと死神と戦うことなく逃れた者の子孫であろう カワキとは無関係だ」
当の殿下はその質疑応答には特に興味を示さずこちらに問いを投げかけてきた
「君はその現世の人間をみて妙だと感じたところは何かないだろうか?」
俺かよ...まぁ実際その辺俺しか見てないから仕方ないけど
「あ...えぇと...なんというか迷いがない?いや迷ってはいるんだけどォ...」
「もう少し明瞭に頼むよ」
わぁ~...血の気が引いてきた...殿下って聖文字Fだっけ?
「現世の人間側は敵地というか敵の施設の内部で道に迷いながら進んでたんですよ...?なのに接敵する前にはちゃんと警戒してて接敵しない所では気が抜けていたんです 更に言えば随分と適切で見つかりにくい所に爆弾を設置していたんです」
常に先が見えている様にとは口に出さないままに出来た自分をほめてあげたい...
「なるほど それはつまり"進む先で起きる未来を知っている"様にという事かな」
「いやぁ.........なんというかですね...本当に全部知っていたら迷子にはならないんでしょうし違うと思います ハイ」
そう答えると殿下は質問をそれ以上はせず隣で聞いていたヨルダ様やリリー様もすこし首を傾げた後私に対して目線を向けることは無かった
そうして何年月日が経っただろうか、もうすぐ陛下が復活をするために聖別をする運びとなった
あの日の後に陛下があの現世の人間たちに興味を持たれたらしく調査が実施されたところ『虎屋』という一族であり、混血の滅却師達と共生関係にあるだけでなく死神を押しのけて死神から不可侵の条約を取り付けてのんびり生きているらしい
あの妙な未来予測染みた力は"第六感"というらしく殿下はどうにかして得られないかと更に調査をしておりヨルダ様やリリー様はどの程度まで未来視と近いものなのか調査しているらしい
陛下はこの一族を
・同胞(陛下にとっては裏切り者だが)を友として結託している
・死神に対して何かされたらやり返す実力がある
・現世の人間である
上記の理由からか随分と気に入られたようでちょくちょく実際に目にした俺に調査の依頼が飛んでくることがあった
そうしたある日陛下から通達があった 要約すればこうである
「混血の志島家の命の助命を条件にし 我が妹であるマグダレーナの救出の任を虎屋一族に託したい」
ちなみに理由はこちらの素性は完全に伏せた状態で行うので「失敗しても損失無し」「死神の情報を更に得る事もできる」「成功したら万々歳」という感じである
ちなみに俺も現世へ向かって交渉する団へと入れられている...噓でしょ...?