北のノーランド、東のウソップ

北のノーランド、東のウソップ

:)

モブ、捏造、不慣れ、中途半端、注意。

ワイが見たいだけ。





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ここは、東の海の小さな村。

町から少し離れた小さなお家に、男の子と女の子の兄妹がやって来ました。


コン、コン。

女の子が小さな手で精一杯の力を込めて、ノックします。


…………ガチャ。


「ふうー、なァんだ

おまえら兄妹だったか」


少し慌てた様子でで出てきたのは、この村で『嘘つき』として有名な、長い鼻のおじちゃんです。

2人はおじちゃんが語ってくれる冒険譚が大好きでした。

ですが大人たちは、子供に嘘つきがうつってしまうと、おじちゃんの悪い噂ばかりを口にします。

たくさんの嘘をついてきたせいで鼻が伸びたのだ、と大人たちは噂をしていますが、まだ子供の兄妹には本当かどうかはわかりません。


「こんにちは、おじちゃん

ねえ、また小人の話をきかせて! 」

「小人は昨日もきいたじゃんか」

「だって小人すきなんだもん」

「小人じゃなくて巨人! 巨人の話をしてよ! 」


女の子は小人の話を、男の子は巨人の話を聞きたくて、それぞれ譲ろうとしません。


「おいおいおいおい、家の前で喧嘩すんなって! 

せめて中でやってくれ……! 」


言い合いを始めた2人におじちゃんが声をかけます。

ですが、わーわーと言い合う2人に声は届いておらず、「小人! 」「巨人! 」と言い合いを続けていました。


「言うことを聞かねェ悪ガキたちには……お仕置きだッ! 

とっておきの怖〜い話をしてやるッ!! 」


おじちゃんが、そう言いながら2人を捕まえると、窓辺の海が見える特等席へと引っ張っていきました。

2人は怖がって手を繋ぎ合っていましたが、心の中ではどんなお話なのかとワクワクが止まりませんでした。


お行儀よく椅子に座った2人に、おじちゃんが大きな声で喋ります。


「さて、諸君! 冒険譚を聞く前に!! 

今からおれ様の勇姿を見せてしんぜよう! 」

「「…………え? 」」

「このウソップ様の勇姿を見れば、

今から語る冒険譚が嘘じゃないって信じられるだろう! 」


突然のことにポカンとしている2人は置いてけぼりに、おじちゃんは外へと飛び出したのでした。


我に返った2人が窓から外を見ると、海を見つめるおじちゃんの姿がありました。

手には大きなパチンコを持ち、海を見つめる目は真剣そのもので、いつも笑っているおじちゃんからは想像できない姿でした。

いつもおじちゃんが言っている、『おれは海賊王の船員だった』という言葉が頭を過ります。


 まさか本当に……? 


2人がそんなことを思っていると、おじちゃんがパチンコで緑色の何かを飛ばしました。

緑色の何かは、海へ飛んでいったっきり見えなくなりました。

しーん……と静かな空気の中、おじちゃんが高らかに笑い出します。


「アーッハッハッハッハ!! 

今、この村に悪さをしようと海賊船を沈めた……」

「フッ……!

これでまた、おれさまの活躍が世界に響いてしまう……!! 」


おじちゃんがそう言いますが、おじちゃんがパチンコを飛ばす前も後も、海賊船の影なんかありません。


 やっぱりおじちゃんは嘘つきなんだ。

 だから、鼻があんなに長いんだ。


そう考える2人ですが、自慢げに語るおじちゃんの鼻の長さは変わっていないので、嘘か本当かは2人にはわからないのでした。


「ん? さては諸君、信じていないな? 

よろしい! なら、この冒険譚を聞いていきたまえ! 」


そんな2人を見て、口をへの字に曲げながら、おじちゃんが語ってくれます。


「これは、おれが海賊王の船員だった頃の話だ……! 

海の底にある魚人島へ向かっていたおれたちは──」


おじちゃんはニコニコと楽しそうにお話を始めますが、2人はコソコソと内緒話をします。


「魚人島ってリュウグウ王国のことだよな」

「そうなの? 」

「ああ、カヤ先生に教えてもらったんだ! 

でも、へんなの」

「なんで? 」

「リュウグウ王国は、海の底になんかないのに」


そこで2人は考えて考えて、やがて、


 おじちゃんは嘘つきだけれど、

 『嘘をつくと鼻が伸びる』って言ったおかーさんたちも嘘つきなんだ! 


と、考えるのでした。


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