勝者蘇生夢想世界日本 第1節 禱り、滔々と

勝者蘇生夢想世界日本 第1節 禱り、滔々と

ワンタくん特異点の人

 

「痛っ!?ここは…」

「ミライ!大丈夫かしら?」


身体が突然空中に投げ出され、慌てて受け身を取る。人間の姿になったロータスランドに受け止められ、身体は無事のようだ。


「わ、大丈夫?ここは多分……小倉、かな?」


カズオがそう言葉を濁すのも無理はなかった。観客席、そして今立っているコースはほとんど小倉そのものだったが、そこに取ってつけたように更にコースが繋がっている。それはまさしく京都レース場のものだった。観客がおらず静まり返ったそこは、どこか不気味だ。


「小倉と京都が混ざっとる…?」

「混ざってるとはいえ、ベースは小倉みたいだけどね。小倉ベースなのは、ファンタジストの得意コースだからなのかな」

「んー?じゃあ、京都はなんで入ってるんだァ?」


さくさくと芝を踏みしめて遊びながら言ったのはレッドモンレーヴ。今日のカズオの相棒だ。今はやんちゃそうな青年の姿になっている。


「それは…何でなんだろう。きっと理由は有るはずなんだけど」

「それにここ、小倉の芝はしっかりしてんだけど、京都の芝はなんか…ふわふわしてンだよな。あ、ふわふわってのは柔らかいって事じゃなくて……ンー…なんて言えば良いんだろうなァ…」

「あら、それは私も思ったわ。芝が不安定というか、立っていると不安になる様な…そんな感じがするのよね。」


2頭、いや二人は、不安げな顔をしてしきりに芝を気にしている。


「どうやら移動したほうがよさそうですね。とりあえず、建物の中に入ってみましょうか。」


不気味な芝から離れる為に、パドックに進む。そして控え室についた途端、強烈な違和感に鳥肌が立った。ここは見慣れたいつも通りの控え室のはずだ。でも何かが違っていて、その違いに気付けない居心地の悪さを感じる。


「カズオさん、これって」

「うん。レッドモンレーヴたちがさっき言っていた感覚はこんな感じみたいだ。」

「私達は普段こちらに来たことがないから分からなかったけれど、こちらにも何か違いがあるみたいね…」


首を傾げるロータスランドの言葉に、カズオは目を見開いた。


「あっ!そっか、そういうことか!」

「カズオ!?どうしたんだァ!?」

「わかったかもしれない…ここがどういう特異点なのか!」


その瞳に、知的な光を宿らせて。


•••••••••


お前に。君に。あなたに。会いたい。

もう一度。

もう一度。

もう一度。


いっぱいの願いが、僕の中に流れ込んでくる。もう一度って、僕を呼びながら。大丈夫、叶うよ、あと少し。

あと少しで、みんなを幸せにできる。僕の魔力を全部注げばきっと、ビクター先輩と、お兄ちゃんが完全に蘇る。そうなれば、やっと。


もう一度。

もう一度。

もう一度。

  ︙

勝って欲しい。


…え?


勝ってほしい。勝ってほしい。勝ってほしい。

お前に!君に!あなたに!

もう一度!

もう一度!

もう一度!


新しいお願いが、濁流みたいに流れ込んできた。そのいきおいに、ぼくのいしきはおしながされていく。そっか、このねがいもかなえなきゃ。



…だってぼくには、願望機でなきゃいけない理由があるから。





Report Page