「勘違い?」

「勘違い?」


※ぬいクルーシリーズ3作目「入院」の次の話です。

キャラ崩壊注意!

ifロー=ロー 正史ロー=“ロー” ぬいクルー=“キャラ名”で表記してます。

(ロー視点)

「お前はこのクルーの中なら誰が気に入ってんだ?」

“クリオネ”のお腹をつつきながら“ロー”が俺に尋ねた

“ロー”とこんな会話をするようになった切っ掛けはほんとに些細な事であれは“ベポ”の耳を治してもらった時の事だった

・~~~~~~~~~~~~~~~・(回想)

「ほらよ。無事退院だ。」

“ロー”が耳に包帯を巻いたシロクマのぬいぐるみを俺に手渡す。無事に治ったことが嬉しくて俺はぬいぐるみに顔を埋める。ふと消毒液の香りが強く香ったことに気がついた

「?」

確かめるように息を吸い込む。消毒液と石鹸それに懐かしい洗剤の匂い。囚われる前はずっと嗅いでいたはずの俺本来の匂いだった

「“ベポ”のこと抱き締めたか?」

俺は素直に質問を口にしていた。途端に“ロー”はバツが悪そうな顔をする。恥ずかしがっているのがひしひしとこちらに伝わってきた

あぁそうだった俺はどちらかと言うとカッコつけたがる方だった。と自分の事ながら今更思い出す

「他に壊れたとこがないか触っただけで……」

「“ロー”俺もお前だ」

その言葉で言い訳は不可能だと理解したのか観念したように息を吐く

「触り心地が良かったからついな……」

「そうだろうな。俺やここのクルーが探した選りすぐりのぬいぐるみ達だ。みんなふわふわだぞ」

「“シャチ”とか枕にしたら気持ち良さそうだ」

「そんな事したら綿が萎む。触ってもいいが枕にはするなよ」

少し前は言えなかったであろう軽口を叩く

「分かったよ」

“ロー”も苦笑交じりだが文句を言わず頷いた。それからというもの診察のついでにぬいぐるみを触りながらこうして話すことが増えたのである ・~~~~~~~~~~~~~~~・

「誰が気に入ってるかか……」

“ロー”の質問に答えるためぬいぐるみ達を見回す

「そうだなぁ俺は……」

(ペンギン視点)

昼飯の準備が出来たとローさんを呼びに来る。部屋の中にはキャプテンもいるようだ。診察中だろうか。ノックをしようとドアに近づく。すると中からこんな会話が聞こえてきた。

「お前はこのクルーの中なら誰が気に入ってんだ?」

キャプテンの声だった。俺は咄嗟に身を隠す

(クルーって事は俺達の話……だよな)

(ローさんはなんと答えるのだろう)

耳を澄ます。しばらく考えるような間が空き

「俺は“ペンギン”だな」

そう聞こえた途端思わずガッツポーズしそうになる

「“ペンギン”か……意外だな。てっきり“ベポ”だと思ったが」

キャプテンの言葉に隠れながらも頷く

(俺もあんたらはベポが大好きだと思ってたよ)

「“ベポ”も勿論好きなんだけどな。こうドシッとしてるだろ?“ペンギン”の方が抱きついた時に気持ちいいんだ」

(抱きつく……ローさんがずっと探していたイッカククジラのぬいぐるみを見つけてきた時のことだろうか?喜びようが可愛くてシャチと二人で抱きしめたな)

「まぁ“ベポ”の毛は少し固めだしな」

キャプテンも抱き心地がいいに同意する

(そうだったのか)

「抱き心地なら“シャチ”もいいんじゃねぇのか?」

キャプテンが新たに質問をする

(確かにシャチはしょっちゅう抱きついてるしな)

「あー“シャチ”は……暑い」

「あぁ」

(キャプテンそこ納得しちゃうの!?まぁ確かに多少暑苦しいやつではあるけど……)

「毛が長いからかずっと抱きついてるとな……寒い場所だと気持ちいいんだが……」

(あぁ物理だった。この会話をシャチが聞いたら泣きながら髪を切りそうだな)

俺が衝撃を受けていると続けてローさんが

「それに“ペンギン”はとっても可愛いし」

と爆弾発言をした

(はっえっ?俺が可愛い?ベポとかじゃなく?)

「(毛で)隠れちゃってるけど目がつぶらで可愛い顔してるんだぞ?」

「確かに目はでけぇな。実際は(動物のペンギン)気はつえぇし喧嘩っ早くてキツめの顔だがな」

「まぁ確かに気性の荒いところはあるけれどそれもいいと思う。仲間思いな証だろ?」

仲間思いという発言についつい照れる。シャチやベポは幼なじみだし他のクルーも気のいい奴らだ。大切にしている自覚はあるがそれを他の人に認めてもらうというのはどうにもこそばゆい

「表情とかもおいでって何時でも受け止めてくれそうな安心感があって俺は好きなんだ」

と嬉しそうな声が聞こえる。その言葉に我慢出来なくなりローさんを抱きしめようと部屋に飛び込むとそこには、ぬいぐるみの“ペンギン”を抱っこしてキョトンと固まるローさんと笑いを堪えているキャプテンが居た

(“ロー”視点)

会話の途中でペンギンが俺達を呼びに来たことには気づいていたが、あまりに挙動不審な動きをするものだからそのまま会話を続けていた。しかし勢いよく飛び込んできて固まる姿についつい笑いが零れそうになる

「キャプテン!俺がいるの気づいてましたね!」

ペンギンがぎゃあぎゃあと騒ぐが

「勘違いしたのはお前だ」

と言うと押し黙った。もう1人の俺は何が起きたのか理解出来ていなさそうに目を白黒させている

「だってあれだけペンギンペンギン言われたら嬉しくなるじゃないですか。第一あんたらはぬいぐるみばかり可愛がりすぎなんですよ。俺達には素っ気ない顔する癖にぬいぐるみには愚痴言ってたり、しょっちゅう抱っこしてるし……」

「おいいつ聞いてやがった」

ぬいぐるみに愚痴っていた事がバレていて内心驚く。ローはようやく落ち着いたようでペンギンの話を聞いていた。するとふと何を思ったのかローが手を広げる

「え?」

「えっと……抱きつきたかったんじゃないのか?ぬいぐるみばかり抱っこしてるって言ってたからペンギンもくっつきたいのかと……」

「あーもう!そうですよ!」

おずおず尋ねてくるローに我慢の限界を迎えたようでペンギンがぎゅっと抱きつく何してるんだかと思い顔を逸らすとシャチがいい笑顔で手を広げていた。

「おいシャチ何やってんだ」

「えーキャプテンも来ましょうよ。ほら」

「笑うな。構えるな。誰が行くか」

にやにやとした笑いを浮かべるシャチにチョップを喰らわせる

「あいたっ。もー、いいですよローさんにくっつきますから」

そういうとシャチはペンギンとは反対側に抱きつきに行く。騒ぎを聞きつけて他のクルーも様子を見にやってきてはずるいだのなんだのと加わりに行き部屋の中はおしくらまんじゅうのようになっていた。その中心にいるローは驚いては居るものの満更でもなさそうに笑っている。

こうして外から見ると、こいつらのバカ騒ぎにどれだけ助けられていたかが分かる

「お前ら……患者の部屋で騒いでんじゃねぇ!(本当にありがとな)」

改めて理解した感謝の気持ちを口に出すのは照れ臭くて……そっと心の中だけで呟いた。

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