勇気を出して
「ルーシー……私の身体、ちゃんと見て……?」
「いや、待ってくれレベッカ!!……ゆっくり近づいて来んな!!」
私を見ないように真っ赤な顔を背け、手を前に突き出して拒否する様にするルーシーは、とても可愛らしい。
ここに呼び出す前、ロビンさんが言ってた意味が分かったかも。
ドフラミンゴを地に堕とし、その10年にも渡る支配からドレスローザを解放した英雄、ルーシー。
その正体は、海賊"麦わら"のルフィ、その人であった。
私も出場していたコロシアムの優勝商品で、大々的に宣伝されていた『メラメラの実』。
2年前の頂上戦争で失った兄─"火拳"のエース─が持っていた力を手に入れるため、偽名─ルーシー─で出場していた彼に、私は出会った。
最初に出会った時、ルーシーは私を見るや今の様に顔を真っ赤にして、そこら辺にあった大きめのマントを私の身体にかけてからでないと、顔を合わせて話してくれなかった。
いきなり何をしているのかと思ったが、今ならその意図が理解できる。
コロシアムに出場していた私の鎧、というにはあまりに心許なかったが、を視界に入れないようにしていたのだ。
そうした後は、真剣に私の話を聞いてくれて、激流のように激しくドフラミンゴと闘い、そして勝利した。
ホビホビによってオモチャに変えられ、私の記憶から消え去っていたお父さんを取り戻すことが出来たのも、ルーシーの仲間のお陰だった。
全員に感謝してもしきれなかった。
闘いの後、ルーシーは気絶したように眠り続けていたため、1人だけ直接伝えられていなかったのだ。
言葉だけでは足りないと、何か贈れるモノは無いか、と考えていたところをロビンさんに見つかった。
ルーシーの仲間に聞くのもどうかとは思ったのだが、正直に話したところ、アドバイスを貰ったのだ。
「ルフィへの贈り物……そうね、こういう時直接聞いたら、肉って言われるんでしょうけど。」
そう言葉を切って、私の身体を上から下まで眺めたロビンさんは、とてもいい笑顔でこう言った。
「レベッカ、貴女にしか出来ないいい手があるわ……とびっきりのね。」
その後、ロビンさんから出た言葉は、かなり、刺激的だった。
『貴女にはちょっと嫌な記憶かもしれないのだけど、貴女が戦闘中に身に付けていたあの鎧、ルフィは気に入ってたらしいわ。
だから、あの鎧を着て、お礼って事で抱きしめてあげて?』
起きたら2人きりになるように手を回す、と言われ、実際に場所の連絡が来て、今に至るというわけだ。
コロシアムの時はともかく、流石にちょっと恥ずかしかったので、外套を着て待っていたら、ルーシーがやってきた。
「レベッカ、ロビンがここに来いって言ってたんだけど、なにか知らねぇか?」
「うん、だってロビンさんに頼んで、私が呼んだの。」
「そ、そうなのか。」
「ねぇルーシー、私たちの事を救ってくれて、本当にありがとう。」
「な、なーんだそんなことか!!いいっていいって!!おれ達はドフラミンゴをぶっ飛ばすのが目的だったからな!!」
「で、でね……その、おっ!お礼がしたい!……なっ……て。」
「い、いやもう十分だって!!ほら……十分メシも貰ったし、トラ男と一緒に海軍に見つからないようにしてくれてるだろ!!だからもう……」
ルーシーが言い切る前にはらり、と外套を脱ぐ、ルーシーの目の前に、鎧を着た私の身体が曝け出される。
いきなり目の前で脱いだ事にも驚いたらしいが、私の格好にも驚いたらしい。
「レベッカ!?お前なんて格好してんだっ!!」
「ロビンさんに聞いたの、ルーシーに恩返しするにはどうしたらって……。そうしたら、この格好で抱き締めればいいって言われて、好きなんでしょ?こういう格好……。」
「ぐっ……それは〜……その、だな、嬉し……いや違くて!!」
「なにが違うの?ねぇルーシー……私の身体、ちゃんと見て……?」
「いや、待ってくれレベッカ!!……ゆっくり近づいて来んな!!」
じわじわと近付いていく、こっちを直視出来ないからか、突き出した腕をバタバタと動かして、拒否するように動かしている。
こういう時に関してもロビンさんに教わっていた。
『もし拒否されたらなのだけど……こうやって腕を掴んでね……。」
むにゅりと、私の胸にルーシーの指が食い込む、ルーシーの腕を掴んで、無理やり触らせたのだ。
正直に言って、とても恥ずかしいが、ルーシーが相手だと思ったら、それでもやってみようという気持ちになった。
ルーシーはいきなり触れた胸の感触に違和感を感じ、揉むように確認する。
こうして人に触られる、というのは初めてであったから、その手の動きに声が漏れてしまう。
「んっ……ルーシー……。」
その声を聞いたせいか、自分が何を触ったのか、確認するためにこちらに顔を向けた。
ルーシーの腕が私の胸に伸びていて、その手が掴んでいるのはそこに豊かに実った果実、胸に触れられているために少し赤らんでいるだろう私の顔。
そういった順に目線が動いて……。
「ごっごめんレベッカ!!おれもう戻る!!」
「あっ!待ってルーシー!恩返しなの!私を抱いて!」
「変な言い方すんなぁっ!!」
私が掴んでいた腕を勢いよく、でも傷付けないよう優しく振りほどき、ルーシーはさっきまで以上に顔を真っ赤にして、少し前屈みで去っていった。
まだ全然お礼が出来ていないのにと思い、それを追いかける。
そしてそれとは別に、ルーシーに触れられた部分の更に奥に、何か暖かいものが産まれるのを感じた。