創世神性輪廻 神様なんてぶっ飛ばせ!!スーパーインド大戦8

創世神性輪廻 神様なんてぶっ飛ばせ!!スーパーインド大戦8


扉の奥には回廊があった。床は不思議な素材で足音が一切せず現実感がなかった。

「なんだかふわふわする。」

「ユディシュティラが天に昇るための道だからな。生きているお前やマシュでは感覚が違うのだろう。」

気を確かに持て、というスヨーダナ・キャスターの声は近くなのに遠くに聞こえる。頭に映像が割り込んでくる。

 

燃える街、燃える星に消える少女、光の中に消えるビーストⅦ。

弱き者から殺される。そうすることでしか生きることの出来ない凍る世界。

間引き維持することを強要された薄氷の世界。

儒を赦さずただひとり在る人が真人に至る世界。

ユガを繰り返し不出来を消した世界。

人としての永遠を実現した世界。

人でなしの世界。

戦士たちの世界。

たくさんを犠牲にした。たくさんを踏み台にした。数少ないが味方ができた。その人たちも今はもういない人の方が多い。

例えば、此処にいるのが自分でなければ、もしAチームの誰かだったなら。揃ってマリスビリーに反旗を翻し立ち向かうことができる奇跡があったなら。

 

『奇跡があるとすれば?』

 

願うことは烏滸がましいーーー奇跡は何時だって起きていない。回りめぐった結果であるだけだ。だから、行かなくては、戻らなくては、止まることはもうできない。どれだけ辛くてどれだけ残酷でもそれしかもう選べない。その上で、取りこぼせないものを取りこぼさないと決めたのは自分なのだから。

 

「目が覚めたか?」

立香が気がつくと入った時と同じような扉の前にいた。浮遊感もすでに消えている。

「ユディシュティラも見た幻影の類いだろう。一応天に昇る試練の一つか。」

「・・・こんなのは2回目かな。」

「マスター・・・」

「大丈夫、マシュ、もういける。」

「!、はい、行きます!!」

「さて、だがな、お前がレムレムしている間に門を開けようとしたんだが、開かなかった。おそらく開ける資格というものが必要なのだろうな。」

「ここに及んで別の条件がいるの?」

「サーヴァントがダメだということだろう。」

死者に生者のための扉は開けない。道理である。

「立香。ここからは、お前(今を生きる者)の選択だ。俺はマスターの選択に従おう。」

他のサーヴァントも頷いた。すでに目的は完遂されている。ユダナは既に奪還されている。カルデアに戻れば元に戻るだろう。特異点もユディシュティラが消えたことで緩やかに消滅するだろう。それでも、立香には進まない選択肢は選べない。

「・・・行こう。」

厳かな扉の正面に立つ。扉を開くために足を踏み締めて手に力をかける。とても重い、開かない。

『引き返すがいい、旧人類よ。僅かながらの猶予を楽しむだけの時間は与えよう。』

頭に直接響くような声。何重にも重なって、わずかにずれて聞こえる、威圧に満ちた響きは全能神を前にしたプレッシャーに似ていた。

「それは、出来ない。」

七つの世界を正した。七つの世界を壊した。自分達の都合が悪いからという理由で、汎人類史の犠牲にした。同じ、人として生きた、生きていた、例え終わりを見据えた世界だったとしても、その世界に生きる人にとってはそこにしか未来はなかったのに壊したのだ。

「今であれば安楽な終わりとなるだろう。安心するといい。人類史は続く、我らが見守ろう。」

その世界はたった今壊れたのというのに。ユディシュティラは何一つ掴むこともできず消えたのに。全能神が収めた秩序に満ちた理想郷も消えたというのに、どうしてYHVHの未来だけが守られると思っているのだろうか。

「・・・約束を、した。」

体には治らない傷痕が増えた。華奢だった体は筋肉がついた。自分しか、いなかったから、やっただけのこと、その結果。死体の上を歩いている。善意と悪意を踏みにじり此処にいるのはそういう選択をしたからだ。

「YHVH、お前をこの宇宙から追い出す!」

偽善、まやかし、奇跡なんてない。自分しか、できる人間がいなかったから、やっただけのことでも全部自分の選択だった。意味がなくとも、この旅路を嘘にできない。扉が少しだけ軽くなる。

『愚かな、愚かな。引き下がるがいい。我が愛を否定することは赦さぬ。』

「愛、愛というか?俺も知っているぞ。童話作家に言わせれば醜悪、身内としてもネジが外れている。だとしても最後までその献身は本物だったとも。お前の愛はただの支配だ。」

「愛の押しつけは横暴だわ。無償の献身ですらないもの。」

「俺たちは兄上のためなら死ねる。兄上が悲しむからしないが。」

「一人で死んどけ愚兄。」

「死なねぇっていってんだろ。」

「お互いに慈しんでこそ、関係が生まれるのだ。」 

 また扉が少し軽くなる。

『浅はかなり、浅はかなり。秩序の中にこそ不和は起きぬ。ただ唯一の幸福がある。』

「秩序に拘った結果がどうだ。俺は理性を失い、ユディシュティラは民のいない王座に座り続けた。弟たちは狂うこともできず擦り切れた。どこが俺たちのどこが幸福だったというのか。」

「ユダナも似たようなもんだな。」

「まぁ、正しさ(笑)を追求した結果だからな。まぁ、神としての才能はあるんじゃない?」

「所詮独りよがりよな。そのためにどれだけ殺させた?お前は自分の手を汚さず、傲慢、強欲の独りよがり、獣にも成れん卑怯者ではないか。」

少しずつ、扉が動く。

『愚鈍と言わざるを得ぬ、どうして我を受け入れぬ。』

神様に願っても、悪魔に願っても、自分で動かないと願いは叶わない。奇跡は存在しない。動いても手からこぼれ落ちる。

「俺、皆守れない。守ってもらってばかりだ。ここにいるのは俺じゃない方がいい。知ってる。それでも、嫌だから。」

 伸ばした手はいつだって遅い。届かない。犠牲は増えるばかりだった。屍に支えられていることは誰よりも自分がよく知っている。真っ白な大地のように、他の皆みたいに、消えてしまうことができていたら、一瞬で痛みも苦しみもなく、重圧もなく消えてしまえたら、楽だったのだろう。でもそれは嫌だから。

「俺のわがままだよ。」

扉が、完全に開いた。

 

 

 

余談

ばれているかもしれませんが作者はアトラス信者でメガテンとペルソナが好きです。

神様の見た目はメガテンから拝借しています。

YHVHのラスボスも真・女神転生Ⅳファイナルから流用しています。DSソフトですけど名作なので気になる人はプレイしてみてください。

 

 

どうしてユディシュティラがバーサーカーなのか

本来はルーラークラス。

この世界のカルナさんが施し精神でユディシュティラのカルデア行きをバックアップ(鎧をスヨキャスに付与したのでカルデアに縁ができた)したのでエクストラクラスじゃない方がいいかなって気を回したところネジが外れました。

毎日ユディシュティラは楽しそうなのでいいと思います。

ヴリコーダラはカルデアのビーマ(ランサー)の魔力を浴びたためカルデアに縁ができて召喚できました。

もしスヨーダナ・キャスターがユディシュティラの武器化を受け入れていたらバーサーカーユディシュティラ並みに喋る厄介な武器になっていました(ソウルイーターのエクスカリバーのような感じです。)。そうはならなかったので大丈夫です。

 


Report Page