剣士とガイコツとぬいぐるみ

剣士とガイコツとぬいぐるみ


~♪~♪~


スリラーバークの墓場にて、ブルックは一人ヴァイオリンを奏でる

曲は自身と仲間達の大好きなあの唄で、陽気で穏やかな音色が墓場に響く

その時、何者かがブルックの傍に現れた

それは彼が新たに加入した海賊団の船員で、先日の戦いとその後の“取引”で深いダメージを負って眠り続けていた剣士だった


「ああ…びっくりした。……あなた、もうよろしいんで?」

「ああ、ちょっと寝すぎた」

ゾロは手にしていた刀を地面に突き立てながらブルックの隣に腰を下ろすと、「出てこい」と言いながら腹巻の膨らみに指で軽くつついた

「ん?」

中から現れたのは、彼の片割れともいえる小さなぬいぐるみ

「ほら、お前も挨拶しろ」

「わかった」

ぬいゾロはそう言いながら腹巻から出るとゾロの膝の上に座った


「それは……?」

「ゆばしり。てんごくにいったんだ」 

「ついでに供養させてくれ」

そう言うと二人は目を伏せ、静かに手を合わせる

その様子をブルックは眺めながら、先日の事を思い出していた


(ルフィは、海賊王になる男だ!!!)


(なにも、なかった…!ほんとうだからな!!)


あの時、船長と仲間達を守るために自身を犠牲にしようとした男の放った言葉

そして片割れと交わした約束のため、決してその事を仲間達には話さなかったぬいぐるみ

ただ見ていることしか出来ない状態で聴いたその言葉と彼らの覚悟の重みを、ブルックは骨だけの身体でひしひしと感じ取っていた


「……あの……」

「ん?」

「どうした?」

ブルックはゾロ達にあの時の事を話そうかと考えたが、いざこちらを向いた彼を見て急に迷いが生じた

「あー…いえ……そうだ。私、一味に入れて貰いました」

ない視線を泳がせながら少し考え、結局は当たり障りのない加入報告になった

「そうなのか?」

「ああ。るふぃねんがんのおんがくかだ」

すると、ゾロはいつの間にか仲間になっていたこのガイコツに「そりゃ運が悪かったな」と笑った

「この一味は手ェやくぞ?」

「ヨホホ!!そのようで!!死ぬ気で頑張ります!!あ!!私もう死んでましたけど!!」

そう言って笑うブルックにゾロがフッと笑い返した

そんな2人をみながら、ぬいゾロも「あらためて、よろしくな」と笑った








「なかまになったからあらためていうけど、なみはおこらせるな。かわいいあっぷりけつけられるからな」

「おや、そうなのですか?」

「そりゃお前だけだ」

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