前夜
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繋がったまま何度も激しいキスをする。
足を巻きつけ胸も腰もすき間がないほどに擦りつける。
腕を回して力の限り抱きしめる。
それでも足りないから突かれ押し出された言葉で求める。
「抱いて……もっと!…抱きしめて!」
唇が離れた時に泣きそうな顔が見つかるのが嫌で、急いで黒い髪をかき抱いて逞しい首に顔を埋める。
そして回した腕に一層力を込める。
いくら抱きしめても、骨が軋むほど抱きしめられても、抱いた腕の中の空洞も抱かれた自分の中の空洞も埋まらない。
埋める方法はただひとつ。
明日ちゃんと生きて帰ってきて。帰ってきて抱いてくれたとき……。
だから今は逝かせて。何度でも、なにもわからなくなるまで。目からこぼれるのが快感の涙に変わるまで。
「ねぇ」
「ん?」
「帰ってきたらまた抱いてくれる?」
「ああ、当たり前だ」