前スレ一部に肉付けしてみた
復讐は完遂した、妹も守れた。そんな思考が、徐々に失われていく血液と共に流れていく。朦朧とする意識の中、聞き覚えがある誰かの声が、悲鳴が、叫びが耳に付いて離れない。
「どうし、たんだよ、ルビー…」
「お兄ちゃん?!…よかった、救急車よんだから…死なないで…」
「何をわめいて…家族でも、ない赤の他人、が…死に、かけてるだけ…だ、ろ」
「何言ってるの……?嫌だよ、一人にしないでよ!?」
「アイドルでも…女優でも…好きな、ほう選ぶことも、できる…から」
「そんなのもうどうだっていい!だから、一緒に帰ろ…私たちの家に帰ろうよ!」
刺された患部に、痛みなどとうに無く手遅れな事など、自分が一番わかっている。たとえ病院に運ばれても、俺に…僕にはもう未練が、先がない、から。
「あぁ…でも、漸くゆるせ、そうだ……向こうで、さりなちゃんにあえると、いいんだけど…」
「…なん…で、アクアが…お兄ちゃんがその名前…のこと…」
「ル、ビー…どこだ…」
「ここだよ!ここに居るよ!!だから逝かないで、私を独りにしないでっ…」
「もう、少しだけ…見て、傍にいた…かったけど…、ごめんな、こんな頼りのな、い兄貴で…」
「そんな事ないよ!ずっと、ずっと自慢のお兄ちゃんだったから、だからっ!」
「…るび、ぃ…あいし…て…………」
お兄ちゃんの腕から力が抜けていく、あったはずの温もりも、輝いていた青い瞳からも光が消えて行って。手が震える、そんなわけないって頭を振って、冷たくなっていくその体を揺すって、名前を呼んで、また揺すって…。
「…おにいちゃん?やめてよ、まだ謝れてないんだよ…?仲直りも、できてない。伝えたいことも言いたいことも謝りたいことも知りたい事だって一杯ある。だから、ねぇ…起きてよ、起きてってば……おにいちゃん…いかないでよ…やだよぉ…」
涙で世界がゆがんで、胸が張り裂けそうなほど痛みを上げて、たった一人の半身が死に行くことに恐怖を覚えている。
ねぇ、神さま…どうして私の大切な人たちは居なくなっちゃうの?どうしてママとせんせが死ななきゃいけなかったの?どうしてお兄ちゃんはあんなに酷いことを言った私を庇ったの?どうして、どうして…私は独りなの?
お兄ちゃんはどうして、もう、うごかないの?どうしてこんなに冷たいの?どうして私を見てくれないの?どうして笑ってくれないの?どうして名前を呼んでくれないの?どうして一緒に生きてくれないの?
「お兄ちゃん、一緒に家に帰ろ?ミヤコさん絶対怒ってるしメムも先輩もあかねちゃんも心配してるよ?だから…一緒に帰って、一緒に怒られて…一緒にご飯食べて、久しぶりに二人一緒に寝てさ、お兄ちゃんが先に起きて私を起こしてくれて‥‥…おはようって…だから、めをあけてよ…」
この日に私たちの復讐は終わり。
凶星は消え紅い星だけが残り、大好きな蒼い星は堕ちて消えたのだ。