初恋は実のならいものである。……其れが例え半神であれど

初恋は実のならいものである。……其れが例え半神であれど


「ドゥリーヨダナ『これ』を受け取って欲しい」

差し出された小箱を空けると9つの宝石があしらわれた、とても美しいリングが入っていた。

「ほぅ、ナヴァラトナではないか」

「嗚呼……」

「よいのか?」

「お前のだ」

その言葉にクスッと笑を浮かべながら受け取ったリングを指にはめる。

「似合うか?」

「愚問だな」

 「そうか。

まぁ、当然と言えば当然であるな!何せわし様だからな似合うのも当然の結果よ!!

うむ、然し見れば見る程良い献上物だ。

わし様は大変気分が良い。

褒美をやろうカルナ何が欲しい?」

満足そうに指に付けたナヴァラトのリングを見つめ問い掛ける

「必要ない。俺は、お前程欲張りでは無いからな」

「はぁ〜相変わらず無欲な男よ……詰まらん。」

「そうか……」

「仕方が無い。このわし様自ら、お前に合ったものを見繕ってやろう」

付いてこいとスタスタと侍女らを連れわざわざ自ら宝物庫へと歩みだす。

そのやり取りをビーマが見ていた事も、聞いていた事も気にも止めずに去って行く。

「(なんだ……“その顔”は――)」

出会ってから一度もビーマには見せたことが無い、見た事もない表情――

眼を細め、

なんだその眼は。

穏やかに、

そんな声が出せるのか。

愛おしいそうに、

アイツの弟や妹に向けるものと違う。

幸せそうに、笑って―――


グチャリ…


手にしていたマンゴーが潰れ中身が飛び出し手や腕の周りを汚す。

「勿体ねぇな……」

ぽたり、ぽたりと垂れてくるマンゴーを器用に啜り喰べる。

「足りねぇ――」

潰したマンゴーを喰べ終え、ビーマはまた手を伸ばし食事を続けた。



―――――――



ぴちゃり、



ぴちゃり、



■が滴る音がする。

■に染まった己と“■■■”が倒れている。


グキッ…


■が折れる音がする。


バキッ…メキッ…グチャリ……


■が砕け、潰れ、壊れてゆく―――


「ふっは…ははは……はははは」


コイツが悪い。

■を見なかったコイツが悪い。

“あの日”見向きもせずに■■■を選んだコイツが悪い。


“誰か”が『止まれ!』と…『やり過ぎだ!』っと叫ぶ声が聞こえた気がしたが知った事じゃない。


――――コイツが悪いのだ。

全部、全部、何もかもコイツが悪いのだ。

あの毒も、あの火事も、あの賭博も、あの放浪も……人が大勢死んだのも―――

何もかも全てコイツが悪いのだ!!!



バキン…



■■■が完全に壊れた音がした―――




■に染り壊した■■■が此方を笑って皮肉ってくる。

そして■■■へ“天からの花”が降り注いだ……






――――――


王国が、宮殿が手に入った。

兄弟それぞれ部屋が宛がわれた。

絢爛豪華な品々が全てパーンダヴァらのモノになった。



ドゥリーヨダナの所有物は総てビーマのモノになった。


然し、“あの日”見た《ナヴァラトナのリング》だけは、

宮殿のどこを探しても。

王国中を探しても。

あらゆる手を使っても。

ビーマは、“最後まで”見つけだす事は無かった――――

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