初夜

初夜

赤髪立ち入り禁止スレの三人の はじめての夜…だと思われます。


カライ・バリ島の夜は今日も遅い。

船上であるなら見張りのローテーションも多くあろうが、地上な上にバギーズデリバリーは大所帯ときている。今日の役柄がないやつはジョッキ片手に朝まで乾杯!次の日に転がってアルビダに「邪魔だねぇ」と転がされるか寝ぼけたリッチーに噛まれるのが常だ。


そんなこんななので座長のいるテントが明るいのも常の話であった。

まあそこで大概はギャルディーノと盛り上がった座長の下品な笑い声が響いている……のであったが、今日は少しばかり様子が違う。


「これからよぉ、大事な話があるからお前ら、ぜってー近づくんじゃねェ、そして近づけさせんじゃねェぞ……」


流石四皇になられたお方だ、と部下が胸の前で手を組みたくなるほど据わった目つきが物資を運んでいた男に注意を促す。

そのバギーの両脇を支えるように立つミホークの何を考えているのだかわからない輝く目と煙越しの砂漠の王の目が後追いするものだから、一介の下っ端においてはもちろんです!と元気よく首を縦にふることしか許されてはいなかった。


「なァ~本当にやるのかよぉ」

「なんでもやると言ったのはお前だろう、道化」

「そりゃそうなんだけど!」

「自分の部屋だろうが。何を遠慮している?」

「してないですぅ……あっやめて穴があいちゃう」


もちろん支えるように、なんてことはなく実際には逃げ出さないように、の方が正しい。

部屋の奥まで行けばもう戻れない、と感じたバギーの足がためらうように数歩あとずさりすればすかさずクロコダイルのフックがマントをひっかける。抵抗してもただ布地が修復不可能になるだけだ。バギーはため息をついてベッドの方に足を進めた。


「おれもさぁ、もう良い歳じゃん?そりゃあんたらよりは年下だし、あんたらは色男さ。でもさァ」

「見苦しいぞ」

「見苦しくもならァな!オッサンとオッサンだぞォ!?」


しかし叫ぶバギーがすべての元凶である。クロスギルドも四皇になったことも――こうしてベッドの上に三人のるはめになったことも。元をただせばバギーの空回りからである。


機嫌をとろうと女を呼ぼうかなどといったバギーに「そんな余裕はあるのか?」とクロコダイルが一蹴したのが一つ。

酔っぱらっていた座長が「じゃあおれさまがヌいてやろうか」などと軽口をたたいたのが一つ。

「それが出来れば金回りの問題が解決するかもしれんな?」というミホークの嘲笑に反射で「やってやらァ!」などと口にしたのが一つ。

一部始終を見ていた幹部は口をそろえて「自業自得」と言うだろう。


結局それって人身売買させるぞってことじゃない?

これがうまくできてもできなくてもイヤな予感しかしないぜ。酔いがほんのり遠くなったバギーの頭の隅では理性が冷や汗をガンガンに流していたが、時はすでに遅いのである。


ベッドにたどり着いて裸にさせられたのはバギー一人だ。

腰掛けた二人は流石に完全なフォーマルのままではなかったものの、誰かがアイロンをかけているのだろうシャツとズボンの前では恥ずかしさがかつ。

「ええ~っとじゃあ……その……」

これから致すどころかカジノですべて剥かれた男と経営者の図だ。力関係と実体的にはあまり間違っていないのが悲しいところ。

「キス……とか、そういうのした方が良い?」

「いらん」

なんとかピンクな方向に空気を持っていこうと小首をかしげたバギーの提案をあっさりしりぞけ、先にズボンをくつろげたのはクロコダイルの方だった。


「どれくらい”使えるのか”の試しだ。分かるだろ?」

「ぅ……ぉ、これマジ?」


クロコダイルが取り出したモノに目を見張る。体躯が立派なのだからそれ相応とは思ってはいたが、実際に目にするとまた違う。ツレションで目に映った程度ではなく本当に顔の前に出されると尚更の圧だ。

「やるっていったのは社長だろうが?」

「くそぉ……男に二言はねぇぜ……」


左手でずしりと重たいソレを弄ぶ。手から零れ落ちてなお余りある。

くわえるにしろ突っ込まれるにしろ無理じゃない?

どうにかなるものだろうかとシミュレートしながら足の間に座り込もうとした。しかし顔を近づけた段階でとめられる。


「その間もう一人がヒマだな……こういう時にバラバラの実の能力ってのは便利だよなァ?」

「あ~……はいはい……」


言いたいことを察して下半身をパージ。興味なさげなミホークの元へと祭壇に捧げられる哀れな生贄のように自ら向かう。

さて、と弄んだままの左手ですくいあげ、未だ柔らかい肉に舌を這わせる。一気におわらせたいなら口に含むべきだが、かぶりつこうと試みるだけであごがはずれてしまうのではないかと言う気にもさせられた。

これを奥までは無理だろ、と先をちろちろとなめていたバギーだったが下半身から伝わってくる違和感に慌てて舌を離す。


「お、お前なにしようとしてんだよ」

「やることはひとつだろう」

その手がぬれているのでおそらくは自分でしごいたのではあろうが、時間的にも雑に立たせただけ立たせた、といったようなミホークのソレがバギーの下半身に押し付けられている。ぐい、と先が穴におしつけられ、無理矢理入り込もうとする。

まるでそういう“玩具”であるかのような対応に思わず蹴りが飛ぶ。見事に受け止められたが。

もし今、その男がかかえているのが“そういうもの”だとしてももうちょっと自分のイチモツに時間はかけるだろうし、その先の事に配慮をするだろう。

ここで元からこの男は“そういうことに興味がない”のだろうということがバギーの頭によぎった。色欲はこの男の中では重要視するような欲ではないのだと。

だからと言ってここで無視するワケにはいかないのだが。


「おれァ男だぞ!何もなしでぬれるワケねぇだろうが!裂けるわ!いや、おれは裂けても能力で大丈夫ではあるだろうけどよ!何か使え何か!」

「……面倒だな」

「あァ!?じゃあやめればい……ウソです最後までちゃんとごほーしさせていただきますね♡」


暗闇でも光りそうな一睨みで手のひらを返したバギーは改めて口にクロコダイルのそれをくわえ奉仕を再開する。左手はその大きなモノを支え右手は何処にかと思えば化粧台に飛んでいる。探るように小さなケースをとり、そのまま手持ち無沙汰に男の下半身を抱えたままのミホークへと放り投げた。

保湿用、などとかかれたそれがクリーム状であることを確認したミホークはすぐに意図を理解してその剣ダコのある指でひとすくいして未だ閉じたままの穴へと突き入れた。

「ん゛」

いきなりの衝撃に喉がしまる。まるでそのまま飲み込まれるかのような喉の動きに口の中のものが勢いを増した。更に大きくなったソレに息苦しくなって喉が更にしまる。負の永久ループだ。

「待ッい゛イッ!?」

なんとか口から出せたと思えば再び襲う痛みに思わず背をそらして原因の方をみやる。

「待てっつってんだろ鷹の目ェ!下手クソかテメェ!?」

思わずブチ切れるバギー。

確かにぬめりはでるだろう。クリームをつけている段階でなくなっては困る。だからと言ってその乱暴さはどうにかならないものだろうか?

気持ちいい場所を探るとかではなく、とりあえず挿れられればいいや、くらいが透けて見える。まあこいつだから適当にやればいいだろうの感じがめちゃくちゃに感じ取れるのだ。

「なんだァ!?女だって前戯ひつようだろうが!ヤったことねェのか!?その面と歳で童貞かァ!?」

あまりに雑なものなのでブチ切れるバギーに周りは見えていなかった。

顔を見合わせるクロコダイルとミホークのその不穏さを感じ取ることは出来なかったともいう。


「じゃあ本人に見本みせてもらえばいいじゃねぇか」

「え゛っ」

思わぬ追撃に上から覗き込んでいる黒い目を見上げる。葉巻をくわえていない口では口角があがっているのは丸わかりで、すなわち面白がっていることも丸わかりだ。


「そうだな、自分の体の事は自分が一番よく分かっていることだろう」

「や、やだなー、ほら、今日はね、もう、ほら、終わりにしない?聞いた話によるとさァ、尻でヤるのになれるの時間かかるらしいし♡今日は口でヌいてやるから♡……ね?」


下手クソと言われたことにキレているのか。童貞煽りが気に食わなかったのか。それとも単純にクロコダイルの言葉に興が乗ったのか。

どれだとしても自身の対応がこれを招いたことに違いはない。


(いや、でも痛いのはイヤだしおれさま悪くなくねェ?)


――そんな不服を口に出すことなど出来るはずがなく。今まさにバギーにとっては悪夢の第二ラウンドがはじまろうとしていた。








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