初代ちゃんの苦悩
私リリィはこの前のサバトの時からとある悩みを抱えていた。
「あの師匠」
「なんだバカ弟子。そんな暗い顔をして」
「その、魔道具を使ったりするのはいけないことなのでしょうか」
「....はぁ。この前のサバトで頭が古臭くて固い魔女に何か言われたか?気にすることなどないぞバカ弟子」
「しかし、彼女たちが言っていたことも事実です」
そう言いながら私はこの前のサバトの時を思い出しながらその時のことを話した。
(回想)
「あなたは確かぁ。あのモルガンさんの弟子だっけぇ」
「え、えぇ」
「確か『魔道具使いのリリィ』で、合ってるわよねぇ」
「っそ、そうですけど」
「ふぅん。魔道具を多用する出来損ないの魔女の弟子って言われてるあのリリィがあんたねぇ」
「その言い方はっ」
「でも、純粋な魔女の弟子なら道具に頼るのは...ねぇ。道具に頼るってそれ自分の技術に自信がないことの証明じゃないかしら?『あの』モルガンさんの弟子だっていうのにね。まぁ精々自分の身の振り方でも学んでおきなさいな」
(回想終了)
......と言われたことを思い出すだけで気分が落ち込む。そして師匠は私が淹れた紅茶を飲みながら私の話を聞き終わると私に話しかけた
「はぁ。いいかバカ弟子。道具は所詮道具だ。そんなもので魔女としての力量が測れるか。そんなことを言う魔女なんざ古い考えを捨てきれぬ愚か者だ」
「それに、今や、魔力を持たない者も錬金術に手を出している。魔道具が作れなくても今まで魔術でしかできなかったことを再現できるようになるかもしれん」
「例えば、水や食べ物を長期保存する方法。例えば、爆発させる方法。例えば、避妊の方法等々とかな。それが実現した時はそれを魔道具に応用して使い、その分の魔力のリソースを魔術に回したり、新しい解釈の糸口になったりするかもしれん」
「なぁバカ弟子よ。そんな一つの声を気にするな。もっと広くこの世界を見ろ。魔力を持たなくても人は成長し、時に魔女の予想を超えたりする。だからこそ、私はよく街に降りたりするんだよバカ弟子」
「いいか。魔女とは本来、魔力を持たない人が困っていたらそれを守るのが魔女の生き方だ。分かったかバカ弟子」
「は、はい師匠」
「それにお前は魔道具を作る才能がある。戦闘の時は大量に作ってその時その時に使い分けながら魔術を使う戦い方があっているな。魔剣や魔槍のような武器を作ってその武器の種類の使い方が分からなかったら教えてやろう。武器として使える物は一通り扱えるからな」
「あ、あはは。師匠ったらまた戦闘ですか」
「なんだ。悪いか?バカ弟子よ。戦えるといざという時に役に立つぞ?彼の円卓の騎士然り、魔女狩りの連中然り、襲われても返り討ちにできるからな」
「円卓の騎士って...お伽話じゃないですか。そういえば師匠って何歳なんですか?」
「くっくっく。乙女の秘密を暴くのは無粋だぞ?バカ弟子」
そう誤魔化しながら師匠は私の頭をくしゃりと撫でてから玄関に向かいました。
「お散歩に行かれるのですか?」
「あぁ。ちょっと近くの町で新しい物がないか物色してくる。お前は私が帰るまでに何か魔道具でも作っておいてくれ。帰ったら採点してやる」
「分かりました。行ってらっしゃいませ。師匠」
「あぁ。行ってくる。『愛(小声)』弟子(お土産の一つでも買ってくるか)」
そう言って師匠は外に出かけられました。弟子の部分がちょっと小声で聞き取れませんでしたが、きっとバカ弟子でしょう。さて、師匠に褒められる魔道具でも作りましょうか。そうだっ
そうして私は頭に閃いたものを作るべく錬金術を始めたのでした。