初めまして

「しっかし会わせたい奴がいるって言ってたけど誰だろ」

「多分驚くとも言ってたね」

「仲よくなれるでしょうか…」

三者三様の反応を見せる家入、夏油、黒川。

そこに響くテンションの高い聞き慣れた声に、３人は顔を上げる。

「よっ、連れてきた！」

「え、どこ？」

「いなくない？」

「連れてきたってどこに…」

暫く待っていると現れた五条に問えば、不思議そうに首を傾げられた。

「どこってここにいるじゃん」

「「「え？」」」

五条の視線を追った先———五条の足元に存在する小さな影。

「ほら、自己紹介」

「五条類です、初めまして」

促されて頭を下げて挨拶するその子供の顔は、五条にそっくりだった。

「え、五条お前…」

「まさか悟に隠し子がいるなんて…」

「流石に幻滅しますよ…」

「いやなんか誤解してるけど類は従弟だから！この年で隠し子なんかいるわけないだろ！ってか真っ先にそれ出てくるの何なんだよ！」

急に同級生３人から冷たい目で見られるのが不服だったのか、猛抗議する五条だったが今度は白い視線を向けられる。

「いや従弟でもこんな小さな子を無理矢理連れてくるなよ」

「でも従弟とはいえそっくりだね。白い髪とか顔立ちも…目の色が黒いところくらいしか明確な違いはないし」

「っていうかごじょさん従弟いたんですね」

「普段は京都の分家に住んでるけど、ちょうど今こっち来てたから折角だしと思って連れてきた。俺と類はお互いの母親が姉妹なんだよ」

黒い制服を着た見知らぬ高校生に囲まれて不安なのか、類は五条の側から離れる様子はない。

「人見知りなのかな」

「そういえばこっち自己紹介してないじゃん」

「そりゃ怖がられるわ。えーっと、最初はじゃあ夏油で」

「私かい？まあいいけど…夏油傑だよ。悟とは親友なんだ。宜しくね」

「んじゃ次、家入硝子。宜しく」

「黒川蘇我、です…えっと宜しく」

「よろしくおねがいします、えっと傑さんに硝子さんに蘇我さん？」

「ちゃんと挨拶できるいい子じゃん。五条とは大違いだな」

「硝子、この子も五条だよ」

「あ、そっか。五条と比べるのは類が可哀想だな」

「さっきから硝子特に酷くね？」

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それから暫く一緒に遊んでいると、慣れたのか五条の側から離れるようになっていた。特に、この中ではまだ雰囲気の柔らかい蘇我と仲よくなっているようだ。

「よかったじゃん、懐かれて」

「それは嬉しいですけど、私なんかでいいんですかね…

というかこの子この年とは思えないくらい賢いんですが」

「類は昔から要領いいからな」

何故か不機嫌そうな表情を浮かべる五条の胸中に渦巻くのは、おもしろくないという感情だった。

「どうした五条、類を取られて拗ねてるのか」

「確かにこれは拗ねてるね」

ムスッとした様子を隠そうともしない五条に思わず呆れる。

「俺は類が生まれたばっかの頃から面倒見てやってたのに」

「え、ごじょさんが？」

「マジ？あの五条が？」

「そんなに疑うなら証拠見せてやるよ」

ごそごそとどこからか取り出した写真。そこには五条が類をあやす様子がバッチリ写っていた。

「へえ〜あの悟がね…」

「結構楽しそうですね」

「（五条が）めっちゃいい笑顔だな」

各々感想を述べると五条はふふんと得意げな顔をする。

「要するに俺が一番なんだよ！」

「別にそこ誰も張り合ってないけどね」

「類は誰が一番親しみやすい？」

小さく首を傾げて考え込む類。

そして悩んだ末に出した答えは————

「蘇我さん」

「は⁉︎」

「私ですか？」

「残念だったね悟」

「五条負けてやんの〜」

「うるせえ傑、硝子！」