出来ることを
D-B(321〜2話の間あたり)
海軍大将"青キジ"とのルフィの【一騎打ち】の翌日、しばし静養と決めた一味は思い思いの時間をメリー号の上で過ごす。
よく晴れ、雲ひとつない穏やかな船の上であるものは釣り、あるものは武具の手入れ、あるものは自分の『庭』の整備、あるものは空島からかっぱらったお宝の勘定、あるものは昨日の症例に後遺症がないかの確認、あるものは読書……
少なくともここが出航から僅か数ヶ月程度で1億ベリーの賞金首となった稀代の海賊の船とは、知らぬものが見ても気が付かない程の穏やかな光景だった。
そんな中、よく晴れた日の下に見当たらない船員が1人。
おそらくは船室にこもって作業しているのか、時折ハンマーでモノを叩く音やモノを切る音が聞こえてくる。
昼食も終わり、少し経った頃。
「できた!!!」
そう叫びながら船室から出てくる長い鼻の青年……ウソップ。
「おぉウソップ、何ができたんだ?」
釣りをしていたルフィを筆頭に、船員たちも皆ウソップの方に来る。
「いやさ、最近思ったけど、ウタも何かしら会話できたら楽かなって思ったんだ!
だからそれに使えそうなもんをな……」
そう言ってウソップが差し出したのは、小さな手持ち看板のようなものだった。
「ウタ、使い方説明するからこっちに来てくれるか?」
『キィ!』
定位置、ルフィの肩から飛び降りてウタがウソップの元に移動する。
後ろを向いて、ゴニョゴニョと額を合わせながら話し合う2人。
やがて離れると、ウタはパッと看板を掲げる。
“ウタだよ!”
一度下げて、もう一度あげる。
"おかえり!“
『キィ〜〜!』
大喜びで色々と文章を出していくウタ。
「凄いわね、長鼻くん。
お人形さんの喋ってることを解析してるのかしら?」
ロビンがそう問うと、ウソップは首を横に振った。
「いンや、違うんだ。
これはあくまで定型文の呼び出しだからさ、ウタが選んで出しているだけなんだ。
でも、実はァ……ウタ!例のやつ見せてやってくれ!」
「キィッ!」
了解!とばかりに敬礼して、看板を甲板に置くと手に何かを握りしめ、看板部分に書いていく。
「キキィ!」
そうして書き上げたものを意気揚々と掲げたが……
「なんて書いてあるんだ?」
「ギィ………」
おそらく文字なのだろうが、なかなかに形が崩れていて読めないものだった。
「あ〜〜……
一応手書き機能もつけたんだが、こりゃあんま使えなさそうだな。
定型文を増やせる様にしてみるよ。」
「キィ!キィ!」
ウソップの周りを飛び跳ねて感謝を伝えているウタを見てニヤッと笑うと、ウソップはまた船室に戻っていった。
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ドレスローザでの戦勝を祝う宴の最中、ウタが看板を手に取った。
「ウタ!もし良ければ何か歌って……どうしたんだ?」
ルフィが声をかけにいくと、
「えっと……もうつかわなくなるの、さみしいなって……」
まだ喋るのに慣れていない様で、辿々しく話す。
「ずっとあなたの【声】だったものね。」
近くにいたロビンも気がついて、そう声をかける。
「うん。うそっぷにもまた、おれいしなきゃ」
そう言って笑顔を浮かべる。
「ウタ先輩の歌がまた聞けるんだべ?!」
「おぉ、あの素晴らしい歌が!」
「是非とも……」
ルフィの誘いの声しか聞こえていなかった、勝手に子分になった集団も寄ってきていよいよ歌う雰囲気ができていく。
「うそっぷ!こんどは、わたしのらいぶせっとつくってね!」
「………!
おう!最高のやつ作ってやる!」
「スゥ〜〜〜パァ〜〜〜〜な細工も俺が入れてやろう!!」
「それはいや。」
「なんでだァ!ウタ!」
新旧の麦わらの一味発明家たちが騒ぐのを尻目に、ウタは看板をルフィに預け、開いた場所に進み出ると歌い始めた。
/ウタが看板を預けた回の作者コメント欄
『例の看板はエリザベスのオマージュです。当時許可してくれた空知先生ありがとう!!/尾田』
『許可したのでウタちゃんの扱いについては許してください、いやほんとまじで/空知』
もしくは
掲載コミックスSBS
D:ウタちゃんネタやった結果若干炎上しました。
鎮火に協力してください。
P.N.空知英明
O:
反省してください。
それはそれとしてウタ看板の許可を出してくれたからウタの看板が実現したので燃やすのはやめてあげてください。