出会い その1
高校に入って一人暮らしを始めたはいいものの、誰もいない家に帰るのはまだ慣れなかった。だから、観葉植物でも飼って話し相手にでもしようと思ったのだ。
まさか、美青年の観葉植物なんて想像もしていなかったけど。
俺は、話し相手を探しに近くの花屋に行ってみることにした。もし気に入るものがなければ別に手ぶらで帰ったっていいと思って、それくらいのつもりだった。
まぁ価格帯はそこまで高くなければなんでもいい、友人もいないし使い道のない仕送りは貯まっていく一方なので。
店前に並んだ花を一通り眺めていく。どれも色とりどりで可愛らしい見た目と麗しさがあるが、俺に毎日水をあげて肥料をあげてと甲斐甲斐しく世話をするだけの気力はない。
「うーん…」
そもそも花なんて詳しくもなんともないから、手のかからない種類がどれかなんて見てもわからない。ただ眺めるだけだった俺に声をかけてきたのは店頭の水を換えていた店員の方だった。
「何かお探しですか?」
「あー…話し相手が欲しくて…うーんと、一番手のかからないヤツがいいです」
口に出してみて、なかなかワガママな注文だなと思った。花を買いに来て手のかからないヤツ、とは。
しかし、俺の考えとは裏腹に店員は「それなら」と大きな心当たりがある顔をして店の中へと入っていく。ついていくべきだろうと踏み、俺もそれに続いた。
「手がかからない子でしたら、こちらはどうですか?」
「え、」
ガラスの向こうには、虚気な目をした美青年がいたのだった。