『出会い』
ウタはその日、ゆっくりとシャワーを浴びていた。久しぶり・・・それこそ12年以上久しぶりに家に帰ってきたのもあって歌手としてではなくシャンクスの娘として今日はのんびりとしようと決めた。
プリンスとしての立場も今だけは止める。自分に嘘は全く微塵の欠片もついていないが父親やその仲間たちにそんな事をやっても昔と同じ対応をされるのがオチだから止める。
そんな風にゆっくりと風呂場で考えてるとふいに玄関の方から物音が聞こえてきた。
(シャンクスが帰ってきたのかな?)
「ん?シャンクス〜!風呂に入ってんのか〜??」
のんきにそう考えていたウタだったが聴こえてきたのは知らない男の声だった。
(だ、誰だ!?ど、泥棒!??)
ウタはそう考えると咄嗟に口を抑えた。一瞬で心も顔も真っ青になり、下手に息を漏らさないように必死に自分の口を抑えた。
「ん?返事がねぇな・・・着替えもねぇし、シャンクスの奴シャワーを止め忘れたのか?」
(よ、良かった。ボクの服は見られてない!!)
先程脱いだ時に無精せずに服を全て洗濯機に入れて置いて良かったとウタは少しホッとした。見ず知らずの男に見られたかも知れないと思うと気持ち悪かった。
「シャンクスもうっかりだなぁ・・・止めるか」
その言葉を聞いてウタの頭に幾つかの考えが浮かんだ。
1つ、大声を出して止まるように言う。相手は泥棒と判断したウタはこの考えをすぐに捨てた。
2つ、ドアを開けられないようにこっちから抵抗する。ウタは別に力が強いわけじゃない。持久戦になるといつかは破られると思い考えを捨てた。
3つ、開けた瞬間に顔面に拳を入れてぶっ飛ばす・・・急な事には対応出来ないとウタは判断してこの考えで行くことにした。
(よし、出来る!開けたと同時にぶっ飛ばす!ボクはプリンスだ!!絶対に負けない!!)
意気込んで拳を引くウタ。
やがてゆっくりとドアが開いていき、男の顔が見えそうになった瞬間、思いっきりぶん殴った。
「泥棒!!」
「えっ!?」
ウタの拳は男の顔面に諸に入ってふっ飛ばした。脱衣場のドアも破って打たれどころが悪かったのか男は目を回して気絶した。
「よし!・・・起きる前に着替えて縄で縛って・・・」
ウタは急いで着替え始めた。
◯◯◯
「やべっ遅れた、ウタのやつにルフィを会わせようと予定を合わせたのに遅刻しちまった!!」
ウタの父親であるシャンクスは急いで家に向かって帰ってきてドアを開けた。ウタが海外に行ってから出来た友達のルフィと会わせようとルフィに頼んだのに自分が遅刻するとは思ってなかったからだ。
「ウタ!ただい・・・」
「変態泥棒野郎!!ボクとシャンクスの家に何のようだ!!お金か!?それともこの世界で人気がある歌のプリンスであるボクを・・・」
「お前なんか知らねぇぞ、泥棒女!!」
「泥棒じゃない!ボクはシャンクスの娘だ!!変態野郎!!」
「嘘つけ!!」
「嘘じゃない!!」
「嘘だ!!」
「本当だ!!」
騒がしい声がリビングから聞こえてきてシャンクスはドアを開けると包丁を持ったウタが自分の友達であるルフィを椅子に拘束して尋問をしていた。
「何やってんだウタ、ルフィ?」
「「シャンクス!こいつが・・・マネすんな!!」」
父親、友達であるシャンクスが来たことにウタもルフィも相手を黙らせようと本人の口から言ってもらおうとしたが見事にハモってしまい2人は何でこんな奴とハモってと不快感を顕にしながら噛みつきあった。
ウタとルフィの『出会い』は最悪の出会いであった。