出会い その2
ガラスの向こうの虚ろな目と合った。
容姿端麗で憂いを帯びた表情からは、本当に花のような儚さが感じられて、俺は思わず目が離せなくなる。
どこからどう見ても、人間の形をしているが、花屋が花と言うので花なんだろう。
「お水は自分で飲みますし、ひとことくらいの簡単な意思疎通ならできますよ」
「ほへー…」
確かにそれは話し相手として迎え入れたい俺にとってなかなかの好条件である。水も自分で飲んでくれるなら、うっかり忘れて萎れてしまうこともないだろう。
他に目ぼしいものがあるわけでもないし、もう決めちゃってもいいか。
「じゃあ買います、おいくらですか」
「ありがとうございます、二千円になります」
花って思ったよりも高いな、まぁ、花というか人の形をしているからきっとそういった価格なんだろう。
そうして俺が逡巡していると、店員は少し困ったように首を傾げた。
「もしお値段でお困りでしたら、今だけ五百円でいかがですか…?」
流石にギョッとして、首を一生懸命横に振った。別に高くて買えないから黙っていたわけではないし、こんなに綺麗で手のかからない話し相手なら二千円程度惜しいとも思わない。
俺は店員がこれ以上値切らないように財布をさっさと取り出して、それからふと訊いてみた。
「名前はなんて…」
「雪宮剣優っていうんですよ」
なんだか本当に人の名前みたいだ、というか人の名前なのかもしれないが。まぁ名付ける手間が省けてラッキーだと思った。
「ユッキーね、よろしく」
そう呟いた時、初めてユッキーは顔を上げてこちらを見たのだった。