冷たい夢

冷たい夢



多分こういう事もあっただろうな程度のちょっとした話

IFミンゴはいつもの如く割と気持ち悪い


乱雑に投げ捨てられる様に、もう既にそこで寝る事に慣れた鳥籠の中に放り込まれる

躾と称した唯の暴力の痕だらけの身体が格子にぶつかると全身に激痛が走り、出す気の無かった呻き声が漏れる

髪を掴まれて無理矢理顔を上げさせられれば、視界にはドフラミンゴの顔が映る

 

「フッフッフ、良い顔になったな」

 

血で汚れた顔を舐める様な視線に総毛立つのを感じた

その内にドフラミンゴの指が俺の目の下をなぞった

 

「相変わらずの隈だな、きちんと寝ねェからだ」

 

俺の睡眠の1番の妨害者が何か言っている

こんこんと俺の寝不足を諫める言葉を連ねて来るが、出血のせいで回らない頭には半分も入って来なかった

 

「俺も今日は寝るとするか」

 

どこか態とらしい態度でそう言ってくるドフラミンゴの意図を一瞬で理解してしまう事に嫌気がさす

痛む体を無理矢理動かし、細く、一本だけになった腕でドフラミンゴの首元に抱きつく

 

「おやすみ、ドフィ…」

 

一瞬だけ、この一瞬だけ完全に無心になってドフラミンゴの頬にキスをした

そうして媚びればドフラミンゴは満足そうに笑った

 

「フッフッフ、あァおやすみ、ロー」

 

ドフラミンゴは俺の首にキスをして鳥籠を閉じて部屋を出て行った

籠の床に体を投げ出して、兎に角気持ちの悪さを何とかしようと左腕で必死に体のいろんな箇所を摩った

ぼうっと格子の隙間から壁を見詰めた

 

帰りたい

 

海に

 

ポーラータングに

 

俺達の家に

 

あいつ等の所に

 

体を丸めて瞳を閉じる

ふと声が聞こえた気がして目を開けば目の前にクルー達が立っていた

 

「あっ…」

 

会いたかったあいつ等が目の前にいる

体を無理矢理動かして起き上がって、そうして手を伸ばした腕は一番前に立っていたペンギンに叩かれた

 

「ペン、ギ……」

 

『あんたのせいだ』

 

『あんたのせいで俺達は死んだんだ』

『何で助けてくれなかったんだ』

『全部あんたのせいだ』

 

「ッ!!!」

 

飛び起きて辺りを見回せば相変わらずの鳥籠の格子が目に入った


夢だった

そうだ、あいつ等は死んだ

俺が死なせた、殺したようなものだ

あいつ等の最後の言葉を俺は何度も聞かされたが、誰も恨み言を言わなかった

 

だが、言わなかっただけかもしれない

本当は俺の事を恨んでいたかもしれない

あれは夢じゃなかったのかもしれない

 

こんな事を考える事すらあいつ等の事を信用出来ていないだけなのかもしれない

 

(……ごめんなさい)

 

駄目な船長でごめんなさい

俺のせいで死なせてごめんなさい

それでも、どうしようもないくらいに落ちぶれたのに死ねなくてごめんなさい

 

ごめんなさい





俺の帰る場所はもうどこにも無い

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