冴にとっての光と闇

冴にとっての光と闇

五スレ目 18氏より


 真の暗闇を知っている。


 半宵、灯りの無い部屋で目隠しをされて、自らに覆い被さる男の影の下で余す所なく嬲られる一夜を知っている。

 太陽が月に空を明け渡した後、その微かな光さえ届かぬ地下室で天井から吊るされ鞭を振るわれる一夜を知っている。

 カーテンを閉め切った部屋の中、ベッドの中で布団にくるまり自らを抱きしめながら明日に怯えた一夜を知っている。


 綺麗な光も知っている。


 目に入れても痛くないかわいい弟。きっといつか目覚めてくれる両親。目標と夢をくれるサッカー。


 汚れた自分の中に残された美しいものたちを、損なわないように、穢さないように、傷つけないように。

 そういう風に冴は生きている。

 そのためなら生きていられる。


 「あっ、や、っあ」


 自分の喘ぎ声。肉と肉のぶつかる音。嗅ぎ慣れた臭い。感じる痛み。反吐の出る快楽。すり潰されていく何か。

 どれもこれも、自分の『光』には近付けさせない。暗闇に溺れるのはこの心と体だけでいい。大事にできる物が限られているなら、もうコレは大事じゃなくていい。でないと本当に失いたくない物が守れないから。


 穢れを纏ってなお守り通さんとする純潔を。

 この泥の中で咲く無垢なる蓮を。

 どうか神よ、ただ見ているだけの傍観者よ。

 貴方に心があるならば、己の安寧と引き換えに慈しみ護ってやってほしい。


 そして暗闇よ。

 夜が明けるまで貴方は己に淫せ。余所見なんてするな。──その汚い目に光を映すな。

 弟を見るな。

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