冒頭 推敲例
『ペンは剣よりも強し』
それが私の好きな言葉だった。言葉は力に勝てるって、子供の頃からそんな事ばかり考えていた。
けれども現実は非常なもので、私の握る小さなペンは無数の剣に削られて、ある日ぽっきりと折れてしまった。
だから高校で文芸部へ入ったのは、必然だったと言えるだろう。
元々本が好きだったということもあるけれど、何より幽霊部員ばかりという点が気に入ったのだ。
かくして私は孤独になった。
人との接点が無くなった代わりに、本を読む時間が増えた。本を読んでいる間だけ、私のペンは何に傷付けられることもない。
そしてその日も、私は家に帰れずに部室で本を読んでいた。