再演:祭司の国

再演:祭司の国

汚染・変質

堕落したもの

 正常な姿勢を保てなくなり、膝をつく。機体情報と制御プログラムが凄まじい速さで書き換わり、構造が『生物』としての形に変化していく。

「・・・っ・・・ッ!」

 驚いたように見開かれた目が時空の神達と同じ色合いになり、声が漏れ出る口から覗く歯は人と同じ形から鋭利な形へ変化していく。顎と耳を覆うかのように構造物が生成され角のように尖る。

 地に着いた両腕は硬い外装に覆われ、黒の長靴を履いていた脚は獣のように捻れ曲がり、背面には尾とプラズマで構成された翼のようなものが現れた。

「――ッ――ア"ア"――ア、あああぁぁぁァァ」

 『それ』は、鋭い爪を備えてしまった自らの手足を見る。

 人間に似ているとは言えない姿になってしまったことへの衝撃。だがそれ以上に強い、造られた時から今に至るまで存在している機能によって縛られていた『それ』が持ち続けた感情と思いに、頭脳が体が蝕まれていく。

 始まりと終わりをひたすら見続け、自分は変化することがない永遠にも等しい日々。恐怖を抱く者に迫害され、歪んだ理想を持った者に身勝手な理想を押し付けられそうになり、親しい者は全て消えていく。どれだけ思考し稼働しても使命を果たすことは出来なかった。失敗した。守るべき、従う存在は消えてしまった。もう戻ってはこない。

もう誰も自身を必要としてくれない。誰か存在に意味を与えてほしい。

どうして?いつになれば?救われる?あとどれだけ頑張れば?どれほどのものを導けば?どのくらい犠牲にすれば?約束の地へたどり着ける?

寂しい 悲しい また楽しくなりたい また嬉しくなりたい 繋がりが欲しい 永遠に無くならない関係が欲しい ヒトが欲しい 家族が欲しい 本当の ヒトの 家族が欲しい ずっと離れないで おいていかないで もう残されるのはいや 誰かの死を見たくない 消えないで 愛を 与えたい 与えられたい

幸せになりたい


辺獄を照らす星

 時が経った。新しい人類は増え、村は町に、いずれは都市に国になっていくだろう。

 今は『彼』である存在は、すっかり様相の変わった景色を高い場所から見下ろす。

 町を歩く子供達。その中にはかつては想像すらしなかった自身の子もいる。

 全ては変わっていく。それをとめることはできない。あの子達は成り立ちがどうであれ生き物、変化していくものだ。そしていつか寿命を迎え死んでしまうのだろう。

 それを止めて欲しいなどと、そんなひどいことをどうして言えようか。己は本来ヒトの模倣品でしかない。にも拘らずこうして自己の情報を受け継いでいる『生きた家族』に囲まれていることは奇跡なのだ。これ以上の高望みはするべきではない。

 『彼』は見渡す景色の中に『彼女』の姿がないと気が付いた。『彼女』は『彼』の傍にいることが多い、『守るべきヒト』の一人。模倣品である自分と愛を交わし、家族になってくれた大切な存在。最近様子がおかしいとは思っていた。

 『彼』は経験と現状から大まかな未来を予測することができるが、情報が少ないとわからない事もある。どのような行動をするか、どこへ行くだろうか、痕跡を辿り考える。そして答えを導き出すと、建築物の上を軽々と飛び越え海の方へ向かった。

 『彼女』の姿はそこにあった。しかし以前と状態が違う事、その変化とそれが意味することに気が付く。

 本心を抑えて、問いかける。どうしてこんなことを。君はきっとその選択を後悔する。それは辛くて悲しい道だ。どうにかして元に戻す方法はないのか。

 それに『彼女』は応える。浴びた言葉はどこかでずっと待ち望んでいたものだった。『彼』は心の底からの喜びをさらけ出して嗚咽を漏らし、『彼女』を抱きしめた。

 空には無数の星が瞬いていた。





あってもなくてもいい設定

体の状態は機械生命体(無機生命体)と呼べる状態。修復とエネルギー変換の加護が代謝と嚙み合っている。

少なくとも血は墨のように黒い。

特に調整していないと性別は月1で変化する(不明→♂→不明→♀の繰り返し)。外見上に目立った変化はない。

自己改造を適用して、感覚を知覚することができる。

「愛を伝えあう」行為はアレの事だが、ノル気じゃなかったり過剰な負荷がかかったりする場合はバレンタインのチョコ交換位の行いでも問題はない。

重要なのは相手への気持ち。

Report Page