再会
ゾロを味方に加えコビーと別れた3人は、小舟に揺られていた。
その船の上で、3人は相互理解のため軽い雑談をしていた。
「そういえばお前ら能力者なんだよな。そっちの兄さんの方は、ゴム人間なのはわかるがあんたは何の能力なんだ?」
ゾロがふと先の戦闘を思い出し疑問を口にする。
「ふふん!よくぞ聞いてくれました!私は、ウタウタの実の能力者!歌を聞かせた相手を眠らせて、操れます!!」
「へぇ~要するに催眠能力か」
初めての仲間が加わったことにテンションの上がっているウタが船の上で自慢気に自身の能力について語る。
その様子を微笑ましく見守っていたルフィだったが、でも、と言葉を発する。
「だいたい30秒くらい聞き入らせないと駄目だけどな」
「…戦闘じゃダメじゃねーか」
「もう!ルフィは、なんでそういう水を差すようなこと言うの!!」
「しっかりと弱点も教えておかないと駄目だろ」
「それは…そうだけど……」
ルフィに諭されたウタの上を向いていた髪の毛がテンションに合わせ下がる。
自分の指摘で露骨に不貞腐れた妹分にルフィは苦笑し、補足を加えることにする。
「眠らせた相手は、ウタの作り出した別の世界へと運ばれる。この世界に捕まるともうそちら側にいるウタに勝てることは絶対にないし、現実のウタが眠らない限り出ることも出来ない。それと…」
ほら、とルフィに続きを促す。
それにうんと首肯したウタは、目を瞑り息を吸う。そして
「♪~」
ウタの口がメロディー紡ぐと手のひらサイズの音符が「ぽん」と可愛らしい音を立てて飛び出した。
「その異世界からこうやって音符を持ってこれる。」
「ほ~う」
ゾロが興味津々といった様子で音符を指でつつく。
「これを相手にぶつけまくるのが私の基本戦術!」
「ずいぶん物騒だなオイ……」
「それだけじゃないよ!!♪~!!!!」
ウタが先ほどよりも大きな声で歌うと、大きな連符が飛び出す。
そしてウタはおもむろに立ち上がり、とう、と勢いよくそれに飛び乗った。
「乗れます!!」
「おお!!」
「移動もできます!!!!」
「おお!!!!」
ゾロの素直な反応にウタはどんどんと気をよくしていく。
「ウタ。危ねェからそろそろ降りろ。」
海の上ではしゃぎだしたウタに、ルフィが注意をする。
子供扱いされたことに少しムッとしたウタだったが本当に怒られるのは本意ではないので小舟の上に戻ろうとする。
バサバサ
「ん?」
空に大きな羽音が響いた。
「お!鳥だ」
「でけェなわりと…」
「腹減ったな…兄さんあれ捕まえられないか?」
「鳥は漁師には無理だなー」
男二人のそんな会話を音符の上で聞いていたウタに妙案が浮かぶ。
成功すれば子ども扱いしたルフィが認識を改め更に褒めてもらえる。
ウタの脳内に完璧な計画が出来上がっていく。
「あの鳥、私が捕まえてきてあげるよ!」
「…やめとけウタ。危ないから降りてきなさい。」
「ルフィが止めても私は、やるよ!」
少し力を溜めて音符は勢いよく鳥…ではない方向に飛んで行った。
「キャーーーーーー!!」
「ウタァァァーーーっ!!」
「あほーーーっ!!」
――――――
「待て貴様ァ~~っ!」
「ハッハッ…やっと手に入れた偉大なる航路の海図!誰が待つもんですか」
オレンジ色の髪の少女が3人の海賊に追われて逃げている。
中々逃げ切れずに焦りだす少女の背後から「ポワン♪」という間抜けな音と同時に大きな破壊音が響く。
「何……?」
謎の事態に思わず足を止めて後ろを確認する。
そこには自分を追いかけていた海賊たちといつの間にかいる少女が倒れてる光景が広がっていた。
「あっ、危なかった…音符で減速してなかったら死んでたかも……」
そう言いながら倒れていた少女が、埃を叩きながら立ち上がった。
他に気絶してる3人には一切目を向けないでガタガタと震えている。
その特徴的な赤と白の髪色を確認したオレンジ髪の少女は、状況を忘れその人物に目を向ける。
「え?あれ?ウタ!?あんたウタでしょ!!」
「へ?」
ウタと呼ばれた少女は目を凝らし自身を呼んだ人物を見る。
しかしすぐにそれが誰なのかがわかる。
「もしかして?ナミ!?」
「久しぶりー!!」
「ナミィ~!!」
勢いよく抱き合う二人。
「ウタ、元気だった?」
「元気元気!!ナミは?ベルメールさんやノジコはどうしてるの?」
「…ノジコは…うん、元気だと思うよ……」
「???」
少し様子のおかしいナミにウタは首を傾げる。
俯いたナミに何かあったのかとウタが聞こうとした時、ねぇ、とナミが顔を上げ大きい声を出す
「ウタは、こんなところで何してるのよ?」
「私?私は今、海賊してるよ!ルフィも一緒だよ!後で会いに行こう!!」
「…海賊……あんた、今海賊なんだ。それにお兄ちゃんも…」
「そうだよ!最近、やっと海に出たんだ!ルフィも一緒に付いてきてくれたんだ!もう過保護なんだから♡」
「……幸せそうだねウタ。」
「うん!……?ナミ?」
再び様子のおかしくなったナミに、どうかしたの?とウタが聞く。
「何もないよ!…ねェウタ?お願いがあるんだけど?」
「なになに?お姉ちゃんが聞いてあげよう!!」
何故か突如、姉風をふかしだすウタの背後にナミが回り込む。
「え?なにこれ?縄?あれ?」
「ちょ~っと付いてきてね♡」
「う、うん」
何故か、縄で縛られてウタはナミに連れていかれる。
しばらくして目的の場所にたどり着いたのか立ち止まると、ウタは背中を思いっきり蹴飛ばしされ、ぐえ、と女の子らしからぬ声を出して床に倒れる。
顔を上げるとピエロのような男がウタの目に入った。
「親分とけんかしました!もううんざりです私をバギー一味に入れて下さい!!」
「ナミィィィ~~~~~~!!??」
絶叫が響いた。