再会
「バカマリモのやつ、また迷子になりやがった!!!」
「ヨホホホ…仕方ありませんね。私とサンジさんで探索しましょうか」
サンジとブルックはスターチスの街をうろついていた。本来はゾロもそこに加わっていたのだが、彼がどこかではぐれてしまったのだ。
上空には常に暗雲が立ち込めている。さらに街から溢れる煙によってスモッグ状態となっているため、陰鬱な空気が流れていた。
「とにかくボサっとしている暇はねェ!早くロビンちゃんを救わなければ!!うおおおお~~~!!!」
「サンジさーーん!待ってくださーい!」
囚われの姫を救うべく、街中を走り回るサンジとブルック。
「それにしても随分暗いですね~昼間だというのに」
「ああ…」
その時であった。
「…や、野郎、麦わらの一味か!?」
後ろで男の動揺した声がした。
驚いて振り向くとそこには
「…ベッジ!?」
サンジの乾いた声が響いた。
「にわかには信じ難い話だが、そんなことが…」
事情を聞いたベッジは驚きつつも冷静であった。
カポネ・ベッジ。最悪の世代の1人であり、海賊として名をあげる前も西の海でギャング稼業をしていた男である。超人系悪魔の実の1つ、シロシロの実の能力者でもあり、彼の中は「城」となっているのだ。
2人は「城内」に招かれ、今までの経緯を全て話した。彼はかなりの時が経っているのにも関わらず、見た目は余り変わっていない。唯一の変化は白髪混じりの髪になっていることぐらいである。
「なぁ、この世界で何が起こったんだ?何故お前はここにいる?」
サンジが問う。
「…20年以上前に四皇や最悪の世代、そして海軍の間で殺し合いがここで起こったのさ。おれはその戦争で部下を誰ひとり死なせずに済んだ数少ない『生き残り』だ」
「なんですって…!?それじゃあ他の海賊は!?」
ブルックが驚く
「赤髪海賊団は全滅、ビック・マム海賊団は次男のカタクリが跡を継いだが随分と落ちぶれたな。黒ひげの奴は半分ほど仲間を失ったが相変わらず航海の旅をしている。カイドウは…未だにワノ国で暴れているな」
「嘘だろカイドウが!!?なぜ生きているんだ!!」
「その様子だとそっちの世界では死んだのか…?まぁ、お前たちのいる世界とは微妙に歴史が違っているのかもな」
「……」
「だがこれだけじゃねぇ、この戦争によって海軍も四皇も壊滅。それは世界の壊滅と同じだ」
「は…!?」
サンジの口元からタバコが落ちる。
「魚人島はこの戦争の影響で一部の魚人が地上奪還という目的で暴動を起こしてな、王族側が古代兵器を発動した結果滅亡した」
「なんだと…」
「ドレスローザはクロスギルドの連中が大暴れして滅んだ。当時の新聞で麦わら大船団のキャベンディッシュとかいう男が主犯だと言われているが実際は違う」
「……!!!」
「なんということに…!」
ブルックは頭を抱え、サンジはこれ以上声を出すことが出来なくなっていた。
「……他の皆さんはどうなったのですか」
ブルックが沈んだ声で尋ねる。
「詳しい情報は分からねぇが…最悪の世代はおれを抜いて殆どが全滅だ。当時の海軍大将や元帥はこの戦争で大怪我を負って辞退、世界政府は見て見ぬふりだ」
「そうですか…」
「…さっきニコ・ロビンを探していると言っていたな。恐らくだが戦艦フランジィにそいつはいるだろう」
「「フランジィ?」」
「確か一味のなかにフランキーとか言う野郎がいたはずだ。戦争で今際の際に自分の意識を情報媒体にダウンロードし、自らの肉体を巨大戦艦に改造したと聞いた」
「…ウソだろ。もう何が何だか分からねぇよ」
余りにも悲惨な状況を告げられたサンジ達はうなだれてしまった。
「…俺も生き残ってギャングを続けているとはいえ、もう海には出ないだろう。それにここを支配しているのは実質的にはルフィだ」
「ルフィさんが…?」
「このどんよりとした天候もルフィの能力の影響だな、雲を晴らすにはぶちのめすしかねぇ」
「…そうか」
サンジは何も驚かなくなっていた。この世界はゆっくりと、確実に滅亡に向かっているのが嫌というくらい伝わった。そして既に手遅れだということも。