再会-1
「ルフィ、だいぶいい顔するようになってきたね」
「そんなにおれの顔変だったか?」
「うん、すごい顔してたよ。見てるこっちが不安になるくらい」
ルフィの手が硬く握り締められる。
その心情はわからないが深い後悔をしているようにも見える。
「ほら、またそんな顔しないの。あんたにはそんな顔似合わないよ」
「・・・・・・そうか?」
「そうだよ!それにまたそんな顔してたらミライが悲しむよ。・・・・・・勿論私もね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうだな!」
ようやくぎこちない笑みではなく心の底からそう思ってくれてるような笑みを浮かべてくれた。
今はまだ私とミライ、あとはごく稀にガープさんぐらいにしか見せない笑顔だがいずれは他のみんなにも見せれるぐらい心が落ち着いてくれるのを祈る。
「そろそろミライも戻ってくるしごはんでも・・・・・・・・・・・・」
「ウタ?」
空気が張り詰める。
卓越した見聞色が一瞬だがナニカの気配を掴む。
だが察知した瞬間、まるで掻き消えるかのようにその気配が途絶える。
「ルフィ、センゴクさんに報告してきて。ルフィのほうが足は速いから」
「・・・・・・ナニカ来たんだな。行ってくる」
すぐさまルフィに指示を出す。それを受け急いでセンゴクさんの元へルフィは走る。
一瞬しか捉えられなかったが最低でも大将がいないと話にならないほどの強大な存在だ。
最大限の警戒を払わなければと思うと同時に何故か少しだけ懐かしく──────
考えを巡らせているとマリンフォード全域に電伝虫による警報が鳴り響いた。
ーーーーー
時を少し遡り、元帥室に顔を引き攣らせたルフィが飛び込んだ。
その報告に部屋にいたセンゴク、青キジ、ガープが怪訝な表情を見せる。
「おっさ・・・・・・元帥!!ヤベェのが来る!!警戒を!!!」
話を聞く前にそれが事実だという報告を持った海兵が飛び込んでくる。
その報告にこの部屋にいる全ての者が目を見開く。
「伝令!!伝令!!!マリンフォード港内に・・・・・・四皇“赤髪”が現れました!!!」
全ての監視をすり抜け、四皇の一角が海軍の総本山に現れた。
それを聞いて一番の動揺を見せたのはルフィだった。
ーーーーー
「そこを退いてもらおうか」
戦意のみを奪う覇王色の覇気が辺り一帯に放たれる。
敵対する者は立つことを許されず、まるで王に傅くかのように膝をつく。
「おい、麦わらと歌姫はどこにいる。答えろ」
膝をつく一人の海兵の胸ぐらを掴み、ベックマンが質問を行う。
他の面子も思い思いの方法で二人の位置を聞く。
「こちらとしてもあまり手荒な真似をしたくない。だが、もしも話さないというのであれば・・・・・・それ相応の覚悟はしてもらおうか」
武器に手をかけ、交渉・・・・・・脅迫を行う。
口を割らなければそれまで。完全に気絶させたのちに進軍を行い彼らを探す。
「あらら・・・・・・随分と手酷くやってくれたじゃない」
「・・・・・・青キジか」
誰も口を割ろうとしない中、海軍の最高戦力の一人 “大将青キジ” が港に現れた。
緩い空気を纏ってはいるがその目は油断なく赤髪海賊団を睨みつけていた。
「お前一人でおれたちの相手をするつもりか?」
「そんなわけないでしょうが。お前らを一人で殺し切れるほどおれァ強くねェ」
「・・・・・・では何故ここに来た」
「あんたらの要件を聞きにだな。四皇の一人ではあるがあんたらはだいぶ穏健派で通っている。そんなあんたらがわざわざコーティングまで張ってここまでくるのはよっぽどの要件だろ」
とは言ったものの内心では何故ここに来たのかは中将以上の人間ならば殆どがわかるだろう。
後輩であるルフィとウタがよく話してくれた赤髪たちの人物像を考えると今ここに来た理由ははっきりとわかる。
「おれの娘と息子・・・そして孫を迎えに来た」
予想通りだが、会いに来たのではなく迎えに来たという言葉は予想外だった。
「・・・・・・海兵であるあの子たちをか・・・・・・何故今になってきたんだ?お前ならガープさん相手でも逃げ果せる力はあっただろ」
「そうだな・・・・・・被害はとんでもないことにはなるが逃げるだけならできただろう」
「もう一度聞くが何故今頃なんだ?」
何かを思うかのように一度目を伏せる。
それも数瞬、すぐさまこちらを・・・・・・海軍を睨みつける
「元々口を挟むつもりはなかった。あの子たちが海兵になろうが海賊になろうがな・・・・・・結果あの子たちは海兵になった。そして僅か数年で海兵として父親たちの悪名すらかき消すほどの活躍を果たした。ここまではいい、むしろおれたちにとっても非常に喜ばしいことだった。・・・・・・だが」
圧倒的なまでの覇王色が再び周囲を包み込む。
そこに立っていられた海兵は“大将青キジ”のみだった。
「あの事件は話は別だ。誤報として流されはしたがひとつ何かを間違えればあの子たちは世界の全てから追われる身となっていた。そしてまたそんな事件が起こらないとは限らない」
剣が抜かれる。後ろで待機していた面々もそれぞれ構える。
明らかに暴走しているのが目にとれる。海軍への怒り、天竜人への怒り・・・・・・そして不甲斐ない自分達への怒り。
「・・・・・・ふー・・・・・・流石にまずいな」
いくら大将といえどたった一人で四皇とその最高幹部を相手取るのはただでは済まない。下手をこいたら命がない。
「援軍が来るまで会話で持ち堪えようと思ったんだが・・・・・・こりゃあダメだな」
現在海軍本部にいる海兵でまともに四皇と戦えるのは青キジ、ガープ、センゴク・・・・・・そしてルフィ。
赤犬と黄猿は運悪く新世界の三つ巴の激戦を抑えに向かった。
そこを狙い打つかのように赤髪は現れた。
「はぁ・・・・・・まさかとは思うが新世界のあの戦いもお前が先導したんじゃないだろうな」
「先導はしていないさ・・・・・・だが白ひげの二番隊隊長の力を借りはしたがな」
「・・・・・・“火拳”か・・・・・・そういやあいつはルフィの兄貴だったか」
「話は終わりだ。そこを退いてもらおうか」
「・・・・・・退けねェな。こんなこと言うのは柄じゃねェが・・・・・・ここは正義の総本山だ。そこを海賊に好き勝手にやられちゃあ、正義もクソもないだろうが・・・・・・」
圧倒的な冷気をその身に纏う。
それに呼応するかのように剣に覇気を纏わせる。
そして、戦いの火蓋が────
「シャンクスーーーーー!!!!!」
切って落とされることはなく飛んできた少年たちによって双方、矛を収めることとなった。