六眼、継承
『私は五条家の術師13』の>>147さんに脳を焼かれた、今まで一度もSSを書いたことのない初心者です。
このSSには…悟の死亡確定?のif、独自解釈、初心者ゆえの文才の無さ、至らぬ点、無知…が含まれます。
それでも読みたいと思える心の広い人だけ読んでください。
「クソッ! 頼むから死ぬな…!」
五条類は焦っていた。五条悟が両面宿儺との闘いに負け、上半身と下半身を分割されてしまったからである。
宿儺との闘いには鹿紫雲が向かい、その隙に回収した悟の皮膚を、肉を、骨を、全力で繋げ直していく。
その正確な呪力操作は、黒閃を体験した直後の呪術師にすら匹敵するほどだ。
(ダメだ、これじゃ傷が塞がっても血が足りない…! ああもう…ぶっつけ本番だけど、成功してくれ!)
一か八か、類は術式反転の効果により、悟の身体と自身の手を同化させる。
ズブズブと沈み込む手は、手首が沈み切らない辺りで止まった。
六眼無しでの分子レベルでの他者との同化。言うなればそれは、『術式』という最低限のメスと針と縫合糸しかない状態のまま、単独で行う手術のようなもの。
そんな偉業をぶっつけ本番で成功させた類は、自身の血液を流し込み、悟の失血を解消する。
悟と同じ血液型かつ、拒絶呪術を十全に扱える類だからこそできる、世界一繊細な荒療治である。
(よし…同化したおかげか、さっきより鮮明に傷の場所が分かる…これなら!)
目を瞑り集中力を高めた類は、今までの経験も知識も総動員して、悟の身体をより繊細に、正確に治していく。
そんな極限まで高まった類の集中力を、何の躊躇いもなくぶった斬る男がいた。
『…い、おーい』
「ああもう! こんな、とき、に……」
『お、マジで届いちゃった。ウケる』
類に治療されながら死の淵を彷徨っているはずの、五条悟その人である。
しかし半透明なうえ、何故か服装も写真で見たかつて悟が高専の生徒だった頃の服装に変わっている。
「…いや、意識戻ってるならさっさと自分で治してくださいよ!
オレの『拒絶』での回復と違って、アンタなら反転数回で完治できるでしょ!」
類はキレた。彼の治療よりも悟の反転で治した方が速く正確なので、この反応も仕方のないことだろう。
『あー。ごめん、無理』
「…は?」
しかし悟は、それを拒否した。
『…なんて言うかさ、初めて自分が本気で殺り合える相手と真正面からぶつかり合って負けた。僕はたぶん、そこで満足したんだ。
他の皆と同じようには、世界に執着できなかった』
今まで誰にも語らなかった、悟の本心。それは到底、常人には理解できないものだった。
「ふ……っざけんな! アンタそれでも教師かよ!?
皆がどんな思いで背中を押したと思ってんだ! 日本だけじゃない、それこそ世界がどうなるかを決める戦いに!!」
『…類も何となく分かってたんだろ? 僕が他人を『人として』じゃなく、『生き物として』の線引きをしてたこと。
それこそ、花や草として見てて、人間として見れなかったことも』
「…っ」
そうだ、薄々気が付いてはいた。
接し方は大切なもののそれであっても、どこか違う枠組みで生きていると思われていたことも。
『本当にごめん。最後まで類や皆と同じ視点を持てなかった。だから…』
「………やめろ…」
『だから、『コレ』を類にあげる。
僕が唯一、人間として見ることができた類にだからこそ渡したい。
それに…きっとこれから、必要になると思うから。
僕の代わりに皆のこと、頼んだよ』
そう言い残すと悟は満足したように微笑み、空に溶けて消えていく。
同時に目に違和感を覚えるが、その正体が分からないほど類は鈍感でない。
「おい待て! オレは別に『こんなの』が欲しかったワケじゃない! ただ…っ! まだアンタに生きててほしいんだよ!!」
数秒前の自分を優に超える呪力操作。呪力ロスが極限まで減る感覚。
「たとえ最強じゃなくても! それこそ呪術師じゃなくても! オレの唯一の義兄(あに)で、超えるべき目標で、家族であってほしい!」
その力で、より正確に傷を治していく。
「同じ目線が持ちたいなら…オレが十年でも二十年でもかけて教えるから! そしたら笑い話にでもしてさ、いつもみたいに皆から怒られたりしろよ!」
悪足掻きだ。分かっている、『コレ』の所有者が自分に移っていることも、それが意味することも。
「だから頼むよ…! オレを残して…」
悟はその言葉に応えることはなく───
「逝くなぁああぁっ!!!」
───類の叫びは、虚しく宙に消えた。
見渡す限りの瓦礫の山の中、二人の影がある。
一人は、百年ぶりの六眼と無下限呪術の抱き合わせだった、血まみれにも関わらず傷一つない『元最強』の術師、五条悟の亡骸。
一人は──────
「………そろそろ行かなきゃ」
──────数百年失われていた拒絶呪術を扱い、初めて六眼を継承した前代未聞の呪術師にして『最強』、五条類。
『最強』という願(のろ)いを引き継いだ類は、元最強の遺体を抱えながら、彼に託された者達の方へと歩き出す。
その蒼い瞳は、新たな最強の誕生を祝福するように輝いていた。
類が♀の世界線で、お互い『好き』だけじゃ括れない激重感情を抱き合ってる差分執筆中です。
人によっては蛇足だったりすると思うので、閲覧注意です。