八華様撃破ルート:エピローグ

 八華様撃破ルート:エピローグ


 ──あの村での悪夢のような出来事が終わり俺は平穏無事な日常へと帰ってきていた。

 そこで八華様と呼ばれていたモノ。俺が今まで常識と信じていたもの、その範疇の遥か外に座す存在に目を付けられ命を狙われた数日間。

 奇跡としか言いようが無い様々な要素が重なり命からがら八華様を倒し、俺は無事村からの脱出することが出来たのだ。

 (正直あの命懸けの戦いに高揚感があった事は否定できないが…いやこれ以上考えるのは止めておこう)

 …そうとも。今後の人生においてあんな事に巻き込まれることなんて有り得ない。

 現代人としては逸脱した思考に苦笑しながらも、今日のスケジュールを思い起こし玄関から外に出て──


 「────は?」


 ──真っ白な霧に、視界が覆われた。


 「──っ!?」


 何が起こっているかを考えるより先に後ろ手にあるドアノブを捻り家に戻ろうとするが…結論から言えば遅すぎたらしい。

 空を切る掌。混乱し振り返ってみれば一瞬前まで確かにあった筈の家の玄関が消え去っている。

 …常識では有り得ない事態。だが俺はこれによく似た事態を既に嫌と言うほど味わっている。…けどそんなの認められる筈が無い!!

 (有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない!だってアイツは確実に仕留めた筈だ!!感触だってしっかり手に残ってる…!例えアイツがどんな化物だったとしても生きていられる筈が…!!)

 ……ここまで考えてようやく思い至る。完全に人の理から外れた存在。カミサマとも呼ぶべき存在。八華様。

 ……そんなヤツが、たかが一回殺された程度で、素直に死んでくれるなんて、何で俺は思い込んでいた──?


 ──あはは。

 ──あはハ。

 ──アハハ。


 …聞こえる。もう二度と聞きたくないと願っていた声が。俺にとっての終わりの声が。


 ──私と互角に戦えるとハ、やっぱり貴方は晴信だったんでスね!!

 ──先の戦ではひょっとシたら別人かもしれないなんて考えて少し油断していましタが…

 ──もう油断はしまセん!全力デ死合いまショう!


 ……もう何も見たくないと願っても、無情にも霧が薄れていく。その向こうに広がる光景はおそらくは「死」そのものであろう。


 ──さァ構えて下さイ晴信

 ──そして死合ましょウいツものヨウに!

 ──今度は病死なんテ許シマセンヨ!!

 ──ずっと、ずっト、ズット!!戦イ続ケマショウ!

 ──永遠ニ!私と貴方デ!!!

 「「「「「「「「コノ川中島デ!!!」」」」」」」」


 「……」

 ……最早何を言う気力も湧かない。こちらに狂気の笑顔を向けてくる八華様達を無気力に眺める事しか出来ない。

 ……全てを諦め、思い出すのはヤツに刃を突き立てた瞬間の事。

 怒るでも、悲しむでも、憎むでもなく──喜色に澱んだあの瞳を見た時から。

 俺は、この結末が訪れる事を心の何処かでわかっていたのかもしれない──。


 ── BAD END ──

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