先生はアイツに似てる
学園都市キヴォトスにきて数日、シャーレで働くことになって一週間たつが未だに俺は先生というこの人に慣れない。
「どうした桜井景和。まるで車に潰されたカエルみたいな顔してるぜ?」
原因は分かってる。きさくに話しかけてくる男が俺のかつてのサポーターであり俺から大切なものを奪い、俺に歪んだ欲望で彩られた仮面を付け影で嘲笑い続けたあの男に酷似していた以外他にない。
一週間、彼の仕事姿を見てきた今もなお心を許せない自分がいる。どんなに生徒達に慕われ、信頼し会う姿を見せてもどうしてもアイツが出てくる。どんなに善人のように振る舞っててもどうせ自身の欲望に忠実に従ってるだけなんだろうという考えが邪魔をする。そして全てが終わったわけじゃないんだとつくづく思う。今もなお俺は仮面ライダーである限り、どこかで誰かに見られ嗤われてるような錯覚に囚われている。
「おーい、飯にしようぜ?」
「えぇ…まだ終わってないとこあるんで」と全力で申し訳なさそうな顔を見せる。しかし、ものの数秒で根野菜を引き抜くように俺を抱えて外へ連れ出した。
「なにいってんだ。んなこといってまた飯抜いて働くきだろ!いいか、大人ってのはな?うまい飯食わねえとやってらんねえんだ。特にお前みたいな見込みある戦士はな。」
「いや、俺戦士じゃないですし」
「誤魔化しても無駄だぜ桜井景和。お前のその面構えは修羅場を潜り抜け成長した奴の顔だ。俺には分かる」
誰のお陰だと思ってるんだ、と言ってやりたい。今だけ先生がアイツじゃないことに苛立っている。違うと分かっててもまだ整理が付かない。
「…とにかくやることは沢山あるぜ?…子供を守護し未来を創る戦士、先生ライダーになるための道がな!」
「なにそれ!?聞いたことないんだけど!?」
「そりゃそうだ。お前と初めて会ったときに思い付いたんだからな!とにかくお前は立派な先生になれる。お前のそのお人好しっぷりは恥じるものじゃねえ。これからいい方向に転がる。でもっていつかこれまでバカにしてきた奴や捨てろって言った奴に胸張って言ってやれ!お人好しは損ばかりじゃねえってな!」
「勢いで言ってない!?」
「でも本気だぜ?お前は立派な先生になれるってのはな!てなわけで飯食うぞ。お前たぬきそば好きだろ?奢るぜ?」
俺はこの人が苦手だ。
でも、今は騙されてもいい気がする。