兄弟
ドゥリーヨダナが泣いていた。
あんな泣き方をする兄弟を俺は初めて見た。
泣き叫ぶ人間たちに剣を振り下ろす。
手についた血が不快だ。
泣いてほしくないと思った。
アシュヴァッターマンとカルナもそうだった。
沢山の人間を殺した。
大地を救うにはまだ足りないらしい。
ドゥリーヨダナたちが俺たちにこんな事をしてほしくないと思っていることは知っていた。
それでも止まれなかった。
何もしなければドゥリーヨダナたちは怪物になるらしい。
ドゥフシャラー以外の兄弟が全て死ぬらしい。
きっとこれは正しくないことだろう。
それでも嫌だったのだ。
強者も弱者も、老若男女関係なく。
立場などに囚われず、何者にも平等に。
この村の最後の一人に向かって剣を振り上げた。
槍に剣を弾かれた。
「何をしているユユツ!」
正しい英雄のような従兄弟が目の前にいた。
生まれて初めて、ビーマに仄暗い敵意を抱いた。
「……邪魔だ、ビーマ」
きっと俺は今、兄弟(百王子)と同じ目でビーマを見ているのだろう。