兄カルナルート ドローナ師匠懐柔編
「あらゆる誓を成就したバラモンか、最も過酷な苦行を行ったクシャトリヤ以外にはその神器は授けられない」
分離することの出来ない黄金の鎧、恵まれた容姿を持ち、武術への適正もあった。クシャトリヤの子でもバラモンの子でもなく、ただの御者の子であったために、その要求に答えることはしなかった。
「そうか。」
「待て、ドローナ師よ。」
直ぐに立ち去ろうとする少年の後ろから、彼の弟が不満な態度を隠そうともせず彼をその場に留めていた。
「我が兄のどこが不満であるか?」
「資格がない、それ以上はない。」
「黄金の鎧、神々をも彷彿とさせる美しき顔、それに見合う武の才もある。」
どこぞの長兄よりもよっぽど見込みがあるが?
と尊大な態度で仮面の少年は言った。
「法の問題である。そもそも御者の息子が指導を受けられるのも王の慈悲である。身をわきまえろ。」
少年にも、少年の弟にも、武術の才はあった。王族であれば、歴史に名を残す戦士になったかもしれない。それは赦されぬことであった。
「ドローナ師よ。貴方の友情が、法の元に踏みにじられたことを忘れたのか。」
それは許せないことであった。
「王は王しか友として認めない。」
友と、信じていた王がいた。
「法に定められたことだろう。兄にブラフマーストラを伝授出来ないのであれば、師はそれを良しとするべきである。」
愛すべき息子が飢えている。小麦粉の汁を啜って何とか生き延びていた。国を分けると言ったのに、約束を反故にしたことは良しとは出来ない。
「それを正しいとしないのであれば、法を侵していることになるが?」
この子供は、どうしてそれを知っているのか。軍事教育が終われば王子に払わせる対価を。
「高潔なる師匠よ、貴方の不遇はよく分かる。分からせるためには武力しかない。ただ貴方が一騎当千の力をもってして王に報復することは法に触れる。だから王子を利用する。それは別によい。正当な手段である。」
無意識のまま、復讐を遂げるのであれば、よかった。
今ここで指摘されてしまったら、それを悪だと認識してしまったら。
「断られてしまったら、どうしようもない。我らは庶民、何処へでも行こう。極意を授かるための旅路にはパンチャーラ国も通るかもしれんな。」
「・・・」
「見つけたぞ!」
赤銅色の髪を揺らして、
「アーユス!!」
愛しい息子が飛び付いたのは仮面の少年であった。勢いで倒れそうなところを少年の兄が支えた。
「勢いが、強くなったな。」
「アーユスが食べ物くれるからな。身長も伸びてるから直ぐ追い越すぞ!カルナも越えるからな!」
「そうか~大きくなるがよい!」
「時期尚早だ(自分も育ち盛りであり、弟からの一番の愛情を受けているのは自身である。せめて弟の身長を越えてから言ってください)。」
「いつの間に・・・」
「師よ、俺が言うののあれだが、目の前の才能に現を抜かしすぎだ。」
パーンダヴァの半神、特にアルジュナには素晴らしい才能があった。教えれば教えるほど吸収することが、教育者として面白くつい力がはいってしまい、息子との時間をとれていないのは確かであった。
息子を弟に陥落させるとは、見事なものである。
「・・・いいだろう。授けよう。」
「いいのか。」
「但し、お前の弟、アーユスもだ、カルナ。」
「俺もか!?」
「アーユスがやるなら俺もするぞ!」
「いいのか。」
「一つ破れば二つ破るも同じだ。」
それよりも、父として思うことの方が多い。
息子よお前少しアーユスに懐きすぎじゃないか。父は泣くぞ。
「アーユス、その変な仮面はなんだ?」
「諸事情で外せん。が、アシュヴァッターマンは見ておるしな。よいぞ、外そう。」
あまり面白いものでもないぞ、と見えたかんばせは、
「・・・仮面を着ける理由はわかった。」
「もういいのか。」
「よい。」
事情があるのはわかった。カルナは身分さえ良ければアルジュナを越えるクシャトリヤとなる可能性がある。ただカルナの本質を理解できない人が多すぎる。サポートするには、側にいるしかあるまい。
「師よ、アーユスは弟だぞ。」
「言わんでもいい。ここまで乗ったからな、それにしてもアシュヴァッターマンはアーユスに懐きすぎではないかな?兄として止めてこい。」
「(弟は兄の品遇を持ってしなくても大変魅力的なのでアシュヴァッターマンが懐くのも無理はありません。アーユス分が減るのは歯痒いですが誉められるのは兄として)誇らしいな。」
「お前さては言葉が足りんな?弟を見習え。」
「そうか。(弟が誉められて嬉しいです)」
兄様カルナ:弟がえらーいすごーいしてくれるので自己肯定感ましまし。素カルナより栄養状態がいいので顔が綺麗な着痩せする以外とがっしり系に育つ。
弟ヨダナ:好き勝手やっているが結果的に懐柔している。食育に忙しいのでサイズ感は小さめ。気がつく頃にはもう遅い。
可愛いアシュヴァッターマン:兄上にえらーい、もっと食べよ~されているのでいい感じに食育されてる。これからたくさん育つ。
ドローナ師匠:被害者。私の息子チョロすぎでは?
百王子:本当の長兄に兄がいることは知っている。BSO(僕の方が先に弟だったのに)にはまだ気がつかない。
余談
※弟ヨダナの外見は人それぞれでいいと思うのですが、ここでは百王子によく似た美少女faceにしておいてください。百王子は少年faceなのでちょっと違うけと良くにてる。ユユツはここでは髪色同じ、顔は兄弟と言われれば兄弟かな程度の類似度としておいてください。
※弟ヨダナはドローナ師匠が顔をみて百王子の長兄であると信頼のため秘密を共有したと思っていますが、ドローナ師匠が雇われた時にはすでに百王子は仮面を着けていたので百王子の顔を知りません。つまりカルナのためには性別を隠していると勘違いしています。ちゃんと弟なので勘違いにカルナは気がついていて指摘していますが、カルナ語なのでドローナ師匠には通じません。
※どうして弟ヨダナがドローナ師匠の事情知っているのですか?
→夢でアナンタが教えてくれたよ。臨死体験したから神様と繋がっちゃったね。
何でアナンタ?
→ヨダナ品遇の師匠がアナンタの化身なので採用。
解説がないとわからないのは小説として致命的では?
→それはそう。実力不足なので温かく見ていてください。