兄を名乗る不審者と、家族を名乗る(ry
「…ッ、虎ゴリ!無事だったか!」
呪術高専のとある隠し部屋の一室へ足を踏み入れた虎杖悠仁は、駆け寄って来た車椅子の少女を見て目を見開いた。
「御仏…」
「怪我とかしてねぇか!?てか傷痕!すぐ治してやるからな…」
「いや、いいよ」
「なんで!」
「これは…いいんだ。このままにしといてくれ」
「虎ゴリ…」
錫音はまだ何か言いたそうにしていたが、虎杖の表情が揺らがないのを見て「…わかった」と叱られた子供のように肩を落として呟いた。項垂れる錫音に、虎杖は硬い表情を和らげ、その場に屈み込む。
「でも、心配してくれてありがとな。御仏」
「───っ」
覗き込んだ錫音の顔が、くしゃ、と歪んだ。
「……死刑執行の報せを聞いた時……何もできない自分が…何も悪くねぇてめえを助けてやれない自分が、悔しくて…どうしたらいいんだって……」
「…うん」
「ッ…本当に、良かった…」
嗚咽交じりの声で語りかけながら、縋るように首元へ手を伸ばす。ぎゅ、としがみついてきた錫音に、虎杖は硬直し両手を宙に彷徨わせた。ホールドアップの体勢で、周囲───居合わせた伏黒、乙骨、張相に目線だけで助けを求める。が、伏黒と張相からは視線を外され、乙骨は困ったような苦笑いを浮かべるだけ。迷いまくった末に薄い背中に手を回す。幼子をあやすように背を軽く叩きながら、困惑気味に訊ねる。
「御仏は…何でそんな俺に良くしてくれんの?」
「家族なんだから心配すんのは当たり前だろ」
(・・・?)
錫音を除く全員の脳内に疑問符が浮かんだ。
「………えっと…そうなの?」
「いや…俺に聞かれても…」
「家族じゃねーって!!似てるだけって前言ってたじゃん!!伏黒も否定して?!」
「虎ゴリはもう僕の弟みたいなもんだ!一緒に任務もこなしたし!!」
「待て、悠仁は俺の弟だ」
「ちょ、黙っててくんねーかな話がややこしく「えっ、そうなのか?!じゃあ、てめえも僕の身内みたいなもんだな!よろしくな、お兄ちゃん!」
「お兄ちゃん…イイ…悠仁も一回呼んでみてくれないか?」
「伏黒ー!!助けてぇぇぇ!!」
いつぞやの如く収集がつかなくなってきた状況に頭を抱えた伏黒へ、乙骨は頑張れ…と心の中でエールを送った。