優しい温もり

優しい温もり


ドレスローザにて繰り広げられた

ドフラミンゴファミリーとの戦いの勝利と

麦わら大船団の子分盃を祝した宴は盛大に 行われていた


「宴だ~~~~!!楽しい~~~~!!」


その中で一層喜ぶのは麦わらの一味の一人

ドレスローザにて人形から人間に戻り   12年間出来なかった食事や歌を思う存分 楽しんでいる少女『ウタ』であった


「ちょっといいか?」


 「うん?貴方は確か・・・」


そんな彼女に話し掛けてきた男にウタは   見覚えがあった

確か子分盃というものにも参加していた・・・


「八宝菜の人!」


「纏めんな!?俺は八宝水軍の       首領・サイだ!?」


「あはは!ごめんね!それで私に何か用?」


「たくっ・・・実は俺の妻がお前に言いたい事があるようでな・・・」


「貴方の奥さんが?」


「ああ・・・俺は離れているから気にせず話してくれ」


そんなサイに促され現れたのはメイドの格好をした女性だった


「その・・・久し振り・・・         でいいのかしら?」


「貴方は・・・何処かで・・・思い出した!パンクハザードでフランキーと戦ってた  武器の人だ!」


「えっ?ええ・・・あの時振りね」


それはかつてフランキーとパンクハザード で戦ったドフラミンゴファミリーの一人  『ブキブキの実』の能力者ベビー5だった


「戦っていた時にまさかとは思ったけど本当に人間だったなんてね・・・        あの時の貴方はかなり厄介だったわ    まさか覇気が使えるなんてね」


「あはは・・・あの時は皆とはぐれちゃって島中走り回っていたら偶然フランキーを見つけたんだっけ・・・」

(走り回っていた時は周りが紫色のガスばかりだったし至るところに白い人間の像が立ってるしで無我夢中だったしなぁ・・・    その時シーザーをぶっ飛ばしてたんだっけ?あの後シーザーに

『てめぇのせいでスモーカーの心臓が何処かに飛んでっちまったんだぞ!?』

って言われたけど後ろにいたナミとロビンの無言の圧に大人しくなったっけ)

「そうそう!私に何か用があるんだっけ?」


「・・・・・・ごめんなさい!!」


ウタに聞かれたベビー5は顔を俯かせたと 思うと突然謝罪をした


「知らなかったとはいえ私がいたファミリーが貴方の12年間を奪ってしまった・・・ 謝って済むものじゃないと思うけど    元ドンキホーテ・ファミリーだった私が  何か償いたいの・・・           何でも言って!私の出来る事なら何でも  してあげるわ!!」


「まってまって!?別にそんな事してくれなくてもいいって!?ほら!私は人間に戻れて今すっごく幸せだから!フランキー風に言うとス~~~パ~~~!!幸せだから!!」


「いいえ!!それじゃ私が申し訳無いわ!!何が欲しい?お金?武器?服?      何でも言って!私貴方の役に立ちたいの!!」


物凄い勢いで迫ってくるベビー5にウタがたじたじになり思わず体に触れてしまう

その瞬間ウタに何かが流れ込んできた


「!?」


それは人形時代に習得し人間に戻った事で 成長した見聞色の覇気によって読み取れた ベビー5の幼き頃の記憶だった


それをウタは見た


見てしまった


『親に捨てられた女の子』の記憶を











『何故子を産んだ?』


『役に立ちもしない上にいっぱしのメシを食らう』


『口減らしだ・・・・・・・          その子を山に捨ててこい』




『ママ・・・?どこいくの?ねぇママ?』


『・・・・・・・・・・』


『ママ・・・?うぁ!?』


『・・・・・・・・・・』


『ママ!?マ゛マ゛ま゛っで!?    お゛ね゛がぁぁい゛!?』


『・・・・・・・ついて来るんじゃないよ』


『や゛だ!?お゛ね゛がい゛!?     ママといっしょにい゛ぐ!!?』


『お前は役に立たない・・・・・・     役に立たないお前は必要のない人間なんだ から!』


『えぅ・・・ママにも・・・・・?    ママにもひつようなぁい・・・・・?    うぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』











何だこれは


これが人の親の姿か


ちがう


こんなものを親とは認めない


シャンクスは私を愛してくれていた


私を実の子のように育ててくれた


あれ?だけど・・・


しゃんくすはたしか・・・わたしを・・・


ステタンジャナカッタッケ?




「ムー!!ムー!!」


「あれ?私・・・」


気が付いた時には周りは元の風景に戻って おり

目の前ではいつの間にかそこにいた動く人形の『ムジカ』がウタの顔を覗き込み     それをベビー5が不思議そうな顔をして見ていた


「大丈夫?貴方急に真顔になって      俯いちゃったのよ?

そしたらその子が貴方の前に現れて呼び掛けていたみたいで・・・」


「へ?あ!大丈夫!大丈夫!        ちょっとボーとしちゃって!       ムジカが起こしてくれたんだ!       ありがとうムジカ!」


「ムー」


(さっき何か怖い夢を見てたような?)


 「おい?こいつ急に倒れたぞ?」


「酒の飲み過ぎじゃないか?医務室にでも 運んどけ」


そんなやり取りの横でサイに八宝水軍を  譲ったチンジャオが冷や汗を垂らしていた


(今のはまさか・・・覇王色の覇気!?   だがどういうことだ?)


チンジャオが周りを見渡すが相も変わらず 宴のばか騒ぎが続いていた


(覇王色の覇気ならば小娘の周り一帯の人間の意識が消える筈・・・しかし倒れたのは数人だけ・・・覇気が弱いのか?いやむしろこれは蓋をして押さえ付けている?)


そこまで考えたチンジャオは気付く


「ムー」


ムジカと呼ばれた人形がこちらを見ている事を


(・・・どうやら要らぬ世話のようじゃな  これはあの小娘自身が乗り越えるべき事  一線を退いた老いぼれは静観するとするか)


チンジャオはそう考えると宴に混ざるのだった


「だから!私は今幸せで満足してるから   大丈夫!」


「だけど・・・」


ウタは何とか諦めて貰おうと説得するが  ベビー5も引かない

ベビー5がこれ程頑固なのはやはり先程見た彼女の過去が原因だろう

実の親に必要のない人間だなどと言われたら誰だって必要と思われたいと考える

人形の時のウタもどうやって役に立とうか 必要と思われたいと考えた事など何回もある

そうでなければシャンクスの時のように  捨てられそうで


(って違う違う!)


シャンクスは私を捨ててない

航海は危険だからルフィに預けただけだ

だから立派になったルフィと一緒に会いに 行くのだから


「その・・・ごめんね?」


「えっ?」


「見ちゃった・・・貴方な過去」


「!・・・見聞色ね?ひどいものでしょ? だけど私は今もその言葉に縛られてる・・・誰かに必要とされなくなるのが怖い・・・!」


「わかるよ・・・私も怖かったから・・・ だけどね!私達にはその時に一緒にいてくれる人がいる!それって凄い事じゃない!?」


「!・・・そうね私にはあの人がいるわ! そう思うと全然怖くない!」


「だよね!」


ベビー5と意気投合したウタはあることを 思いつきそれをベビー5に提案する


「うん!思いついたよ!貴方のお願い!」


「えっ?何々?」




「じゃあここに頭を置いて!」


「え~と?」


ウタの提案

それはベビー5に膝枕をしてあげる事だった


「ほら!早く!何でもいいんでしょ!?」


「そうだけど・・・あ~もう!」


ベビー5は観念しウタの膝枕に寝転がるの だった


「リラックスしてね~いくよ~・・・・・ お~やすみ~赤ちゃんし~ずかにね~♪」


「!」


ウタが歌ったのは眠れなかった時に     シャンクスに歌って貰った子守り歌だった

ウタはベビー5の頭を撫でながら      寝かしつけるようにそれを歌う


(・・・・・暖かい)


まるで母親に優しく抱き締められている  ようなとても暖かい温もりがベビー5を  包んでいた


(ママ・・・・・)






騒がしい宴の中でその子を空間だけが    静かで穏やかな雰囲気となっていたのだった

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